恋のスクールライフ
(おはよう、マジバ)
朝になってマジバに話しかける。
返事はないけれど、ローズはすっかり日課になったそれを繰り返している。
昨日はロイと2人で話す機会は少なかったけれど…
(少し天気の話は出来たし…今日はもっと違う話もしたいな。自分でちゃんと考えたことを…)
マザーの復旧には1週間はかかると魔術具機関からの発表があった。
人々は混乱しながらもマジバのない日々を送り始めている。
そしてローズも…
「おはよー!」
今日も元気なメグの声でローズの学園生活は始まる。
「おはよ!サイラス君も」
「おはー。メグ、ローズさん」
そしてー
「おはよう、ロイ君」
「おはよう、ローズさん」
今日もロイ君はカッコイイ。
笑うと弓形になる優しい瞳が素敵だな、とローズは思った。
「「あの!」」
ローズとロイは同時に言った。
お先にどうぞどうぞ、と譲り合い、ローズから話すことになる。
ロイの後ろで、メグとサイラスが親指をグッと立てて応援してくれるのが見えた。
昨日2人に言われたのだ。
今日は、天気・課題・ランチ以外の話をしてね!って。
「あのね、ロイ君!」
大丈夫!昨日からずっと考えてた。
今日ロイ君とどんな話しようかなって。
「あのね!今日一緒に図書室に行きませんか!?」
((えっ?図書室?))
メグとサイラスは顔を見合わせた。
おそらく同じ事を考えているのがお互いの表情で分かった。
なんで図書室?
基本的に無言で過ごすことを強要されるあの空間に…2人で?
何のために…?
「図書室…?」
さすがにロイも予想外だったのか困惑の声を上げた。
しかし、不安げに揺れるローズの瞳を見たら答えは1つしかない。
「あっ、そうだね!うん!図書室、一緒に行こう!昼休みに!」
気づけばそう答えていた。
そして気づく。
始めてランチを一緒に食べた日。
ご趣味はなんですか?なんてロイの間抜けな質問に、彼女が本を読むのが好きと言っていたことに。
そして、ロイも本を読むのが趣味だと答えていたことに。
覚えててくれたんだ…とロイの胸は熱くなった。
それと同時に、話を盛り上げようと趣味は読書だと言った事を後悔した。
『人間関係を構築する際の虚言は、発覚した場合の信頼関係に影響します。』
あの日、マジバにそう言われてすぐに誤魔化したつもりだったけれど。
彼女は信じていたんだ。
そして、一緒に楽しめると提案してくれた。
“自分で考えたて選んだプレゼントには心がある”
父の言うことが、わかった気がした。
いつもロイの話に返事をしてくれるけれど、ローズさんから話題を振ってくれることは少なかった。
あったとしても、ロイと同じ天気やランチの話だった。
そんな彼女が自分から新しい話題を提供してくれたんだ。
それも、ロイが好きな(と、ローズが思っている)ことの話。
きっと言葉も、自分で考えて選んだ方が心があるんだ。
プレゼントみたいに。
だからロイは、今とても嬉しいんだ。
(ねぇマジバ。僕、君の言う通りにしていれば間違いないって思ってた。でも、やっぱり自分で考えて選んだ言葉の方が良いって、今は思うよ)
左手首には、相棒は不在だけれど
『いい考えですね、ロイ』
と聞こえた気がした。




