恋のラビリンス
メグとサイラスは放課後、ロイとローズがそれぞれ帰るのを見送りながら話していた。
「今日は私たちがいたから何とかなったわね」
「それな。ちょっと目を離した隙にロイがローズに天気の話しだして焦ったぜ」
「また昨日の二の舞になる所だったわ」
ローズがマジバ頼りでロイと会話をしていたと聞いた時は、ビックリしたと同時に納得もした。
自分たちと話している時は自然体のローズが、ロイと2人の時は言葉を覚えたロボットの様にたどたどしかった理由に納得がいったからだ。
「ローズもだけどさ…ロイももしかしてさ…」
「うん。俺もなんとなーく思ってたけど…」
「「ロイもマジバ頼りで話してたんじゃ?」」
そもそも、ロイがローズを意識している事はメグもサイラスも知っていた。
だから、仲良くなるキッカケになればと共にランチをしたし、二人きりになれるようにサポートしたのだ。
あのポンコツ具合を見るに、ロイもマジバの指導のもとローズと会話をしていた可能性はある。
「リサーチ隊!行きなさい!今ならロイに追いつくはずよ!」
「うぇ、俺かよ!まぁ俺が適任だわな!」
「はよ行け!」
「はいよ〜」
メグに背中を押されて、サイラスは学園の門を出ようとしているロイの後を追った。
ロイは昨日から考えていた。
父との会話。
“自分で考えて選んだものには心がある”
そんな風に考えたことがなかった。
選ぶなら、よりベストなものを選びたかった。
間違えたくなかったから。
大切なことなら尚更。
(だからマジバに聞いてたんだ。間違えないように…ローズさんに…嫌われないように)
そんな事を夜遅くまで考え込んでしまい、今朝は寝坊してしまったが。
(遅刻して先生に怒られるなんて…ローズさんに格好悪いところ見せちゃったな…)
けれどローズはその後もロイに対して普通に接してくれていた。
今日も天気の話もしたし…(何故かサイラスが途中で会話を遮ってきたが)。
そんな事を考えながら学園の門を出ようとしていた所で、遠くから自分の名前を呼ぶ声がした。
振り返るとサイラスが手を振りながらロイを呼び止めている。
その場に立ち止まりサイラスを待つと、彼は息を切らせながら駆け寄って来た。
「よう、ロイ!一緒に帰ろうぜ!」
「いいけど。それなら教室出る前に言ってくれれば待ってたのに」
「なぜかさっき急にお前と帰りたくなったから!」
「気持ち悪い事言うな」
そう話しながら再び2人で歩き出す。
「今日マジバなくて俺めっちゃ困ったわ〜。ロイもだろ?遅刻したもんなー」
「まぁ、そうだね」
「マジバ目覚ましにしてたんだろ?他にはどんな使い方してんの?」
「他には…」
他には、ローズさんと話す時の相談として。
そう思っても、口にはしなかった。
「他には、特にないかな。サイラスは何に困ったの?」
「俺?あー…俺はなー…実はローズさんと話す時にマジバに頼ってた!だから困ったわ、今日は」
「えっ!?」
サイラスも?と口にしかけてしまった。
「へぇ~どんな風に?」
人と話す時に使うんだ〜というニュアンスを含ませて聞いてみた。
「えっと…普通に…ローズさんとどんな話したらいいかな〜…とか…?」
「そうだったんだ。でも、なんでローズさん?メグには使わないの?」
「メグ?メグにも使ってたかな〜そんな気がするな〜うん」
「なんでハッキリわかんないんだよ」
「メグはこっちから話さなくても勝手にずっと話してるから」
「確かに」
メグのマシンガントークを思い出して笑う。
4人でいる時、彼女はいつも会話の中心にいるのだ。
「僕も、メグと話す時はマジバ要らないな。ローズさんとの時だけだ」
だから、ついうっかり口にしてしまった。
ハッとしてサイラスを見る。
サイラスはニヤリとわらって
「マジバに頼って会話してたのは、お前だけじゃないってことだ。気にすんな」
と言った。
後ろを振り返り、教室の窓から見守るメグにサイラスがサムズアップでサインを送る。
ロイはそれに気づいていなかった。
策士サイラス、息をするように嘘をつく。




