恋のサポート危機
(マジバ…明日からは学校でも一緒だね!3日いないだけで大変だったよ…)
学園から帰り、ローズはマジバに話しかけた。
テスト期間中というのもあり、ロイと長く話すことはなかったので何とかなっていた。
しかし流石に、天気・課題・ランチの話題のみで乗り切るのは骨が折れた気持ちだ。
(私…ちゃんと話せてたかな?ロイ君は毎日話しかけてくれたし…楽しいって思っててくれてたって事だよね…?)
そして、違和感に気づく。
(……マジバ?聞いてる…?)
そう話しかけても、左手首の魔道具は何も反応を返すことはなかった。
イマジナリーマジックバンドの母体である“マザー”に不具合が起きて、世界的に大混乱が起きている。
知ったのは、その日の夜だった。
いつもは夜ご飯前には帰宅する父が、その日は遅くに帰ってきて教えてくれたのだ。
「いやー参ったよ。マジバにデータを残している社員も多くてね。職場が大混乱だったよ」
「まぁ、そうなの?マメタは大丈夫だった?」
「あぁ、マメタは“マザー”を介していないならね。それでなんとか日付けを超える前に帰ってこれたんだよ」
そんな両親の会話を聞きながら、ローズは焦っていた。
(明日から、どうしよう!)
そう思っても、ローズのマジバは何も反応してくれなかった。
「えっ、マジで?」
ロイは自分のマジバが反応を返さないので故障かと思い父に話しに行って、マザーの不具合を知った。
「なんだ、ロイ。そんなにマジバ使ってなかったんじゃないのか?」
「最近よく使ってたんだよ…学園とかで」
「勉強に使ってたのかーそりゃないと困るな」
「いや、まぁ…うん。そんな感じ」
「そう気を落とすな。この際、マジバのない生活を楽しんだらどうだ?」
「マジバなしで…楽しむ?」
「そうだぞ!マジバは便利だけどな、考える力が弱ってしまうっていうデメリットもあるんだ」
そう言うと父は、少し真剣な顔でロイに向き直った。
「マジバは何でも覚えててくれるし、答えをくれる。それは便利だし時短にもなるだろう。けどな。大切な事は、自分で考えたほうがいいんだ」
「大切な事…って、例えば?」
「例えば、母さんへのプレゼントだ」
「母さんへの…?もうすぐ誕生日だから…?」
「そうだ。ロイは何をプレゼントする?」
「うーん…まだ考えてないけど…。そうだ、エプロンはどうかな?今のは、もうだいぶんくたびれてるし…」
「いいチョイスだ。だが、マジバに聞けば、違う答えが返ってくるだろうな」
ロイは想像した。
マジバに、母へのプレゼントを相談する。そうするとマジバなら『母親へのプレゼントの人気ランキングを検索します。検索1位は貴金属類でした。ネックレス等の貴金属をプレゼントすることを推奨します』と答えそうだ。
「マジバなら、ネックレスがいいって答えそう」
「そうだな。もちろん母さんは喜んでくれるだろうな。でもロイはどうだ?」
「……本当はエプロンをあげたかったな。僕がプレゼントしたいのはエプロンだから」
「きっと母さんはマジバの選んだプレゼントより、ロイが考えて選んだプレゼントの方が嬉しいはずだ。そこには心があるんだから」
「心がある…?」
「今回のマザーの不具合は、それを考えるいい機会になるかもしれないな」
そう言って、父親はロイの頭にポンと手を置いた。




