8話 取り調べと真相
ブルーの暗殺から1か月が経った。
参加者の取り調べが行われることになった。前回の取り調べよりも人数を絞った。理由はブルーの犯罪組織関係者のリストが出たことだ。
出所は……まあいいや、捜一では恐らくこの中の人物が事件に関係があるのではないかという話になった。
リストに書かれている人物は驚いたことに参加者だけでなく給仕の中にもいた。
今取調室に居るのは、給仕係をやっていた女だ。
「私は何も関係ありません。」と素っ気なく言う。
「本当か?」と問い詰める。
「私は事件も組織とも関係がありません!」意地でも言わない気かと思った。俺はため息をつき女の正面を向く、そして口を開く。
「チェリー」その発言を聞いた女は目を見開く。かかったなと思い更に問い詰める。
「お前は組織でそう呼ばれていたようだな。」
「何を……」明らかに動揺している。
「調べればもっと出てくる。これでも言い逃れする気か?」
「何なの……」と俺を睨んでくる。声は震えているようだった。
「殺したのは、レッド!あいつよ、早く捕まえなさい!」と死に物狂いな声で叫ぶ。
「レッド?」リストにはそいつの名前は載っていなかった。もちろんどんな奴かも。
「それは調べてないの?レッドは組織を抜けた殺し屋、組織の中で優秀なスナイパーでもあったのよ。」と面倒くさそうに言う。
「あいつはパーティーに来ていたか?」
「いいえ、名簿にも無かったし、わざわざそんな人ブルーが呼ぶかしら。」
一応この女は組織の関係者と言う事もあり逮捕された。
他の人からも事情聴取をしているが候補として挙がるのはレッドという者だった。人物像は全く浮かばず全て噂で聞いた話だと言った。
今日の取り調べ相手はブルーの応急措置をしてくれたヒデという医者だった。
「すいません。俺がそばで処置をしていたのにも関わらずブルーを死なせることになってしまい。」と頭を下げた。
「いえ、あなたのせいではありません。悪いのはブルーを殺した者なので。」と俺は言う。
「ありがとうございます。それで今回呼ばれた理由は?何かありました?」
「調べたところあなたはブルーの犯罪組織と関わりがあるようで?」
「――ええそうですが、それが?」他の人達とは違い堂々と答えたことに驚いた。
「反論とかはないんだな。」
「ああ、だが」ヒデは顔を向きなおした。
「一体誰がそれを流した?」その目は冷酷で睨んでいるようにも見える。
「それは機密情報ですので。」そう言った瞬間ガタンと立ち上がった。
「勿体ぶらずに言え。」これは――彼の目は人殺しをしているような目だった。
「内部告発とだけ言っておこう。」
ヒデは勢いよく椅子に座りなおす。
「そうか――」と目を伏せた。
そして声を上げ笑った、まるで狂ったかの様に、部屋にいる彼以外は皆驚いた。
「あいつか、はは、面白れぇ、」そう言いながら笑い終えると――
「俺が犯人だ。」と告げた。
取調室は沈黙に陥った。
後日ブルーが暗殺された事件の犯人としてヒデが逮捕されたと大々的に報道された。動機はやはり組織関係の事だったらしい。
だが俺は腑に落ちなかった。ヒデは取り調べで聞いていたレッドではなかった、しかもヒデはリストの話を聞いて笑っていた。それにヒデは会場に居たが撃ったのは外からだ。恐らく協力者と言う事で間違いないが、殺した犯人ではないことは確かだ。じゃあ、殺した犯人はだれか?その疑問が残る。ヒデに問い詰めてみても口を開く様子はなかった。
俺は一つの仮説を立てた。ヒデは恐らくリストを作った人物を知っている。リストの中身はとても信憑性が高い、そして作った本人コウは内部告発と言った。
ならあいつがいつも調べている情報源にも納得がいく、バラバラだったパズルのピースが少しずづ埋まっていく、この仮説が正しければ……そう思うと寒気がした。
俺はもしかすると殺し屋と住んでいたのか……と。
コウはレッドだと考えれば考えるほど当てはまる証拠が出てくる。
今どこにいるだろうかスマホから電話をかけてみたがつながる様子ではなかった。まさか高飛びしたかと考えたが本当に別の会社に行ったのかもしれない、分からない。本人に聞かなければ、と思ったがもう遅い、今頃どこにいるだろうかと何も知らない真っ青な空を見上げた。
この青い空をあいつが見ていることを信じて――
その後、この事件は迷宮入りとなった。