6話 交差する思惑
「悪ぃぎりぎりになって。」
「いいよ。仕事もあっただろう。」
「これ、頼まれていたブルーについての資料だ。」と言ってヒデに渡す。
「ありがとな。」と言って、ヒデは渡した資料を穴が開くほど眺める。
「ブルーは21で会社を起業している。」
「いやそうじゃなくて」まあ、聞きたいことはそうじゃないだろう。少し声が怒っている。
「冗談だよ。」と笑って宥める。
「ちゃんと調べたぜ、後ろの方見てみろ。」
「‼︎これは。」目を丸くする。
「ああ、ブルーは違法取引やヤクザ、暴力団関係者の関係を持つ犯罪者組織のトップだ。」
「やはりクロか……」とヒデは呟く。
「これが一般人の調べられる内容だ。本当はもう少し調べたかったけど……」
「問題ねぇこれで十分だ。あとで出典教えてくれ。」と言いながらスマホを操作する。恐らくブルーの事について同僚に報告しているのだろう。
「おうよ。」と俺は答えた。
時間は夕暮れ6時を過ぎた頃だろう。カラスが紅い空に飛んでいる。
「それじゃあ。行ってくる。」と玄関の前でカズが言う。
「おう、いってらっしゃい!」と俺は答える。
今日はブルーのパーティーだ。カズはスーツを着こなし様になっている。
カズが外へ出ていくのを見送った後、俺はダイニングに行き夕飯を作る。自分の好物のカレーだ少なめに作ったつもりが意外と多くなってしまった。一人で食べきるのは流石に無理だったので、タッパーに移し替えて明日の朝食で食べることにした。
その後はテレビをぼんやりと見ていた。ブルーの会社の問題も出ていたが今日はパーティだ。そんなことブルーは微塵も気にしてなんかいないだろう。しばらく時間がたった。時計は8時を回っていた。
「――それじゃあ、俺も行くか。」
そう言って玄関の扉を開けた。向かうはパーティ会場だ。
このパーティは大々的に行われた。企業の社長、重役、有名人、その他社会では一度は名前を聞いたことのある人達が集まっていた。華やかな事があまり好きではないカズは少しげんなりしていた。
(にしても、すげえ規模で行われているな……)と思いつつ周りを見渡した。かなりブルーの会社は稼いでいるように思える。流石、世界有数企業だ、と納得した。だが、カズはなぜ自分が呼ばれたのか分かっていなかった。自分は刑事であるが、この中で見ると一般人の類で見られる。それに今、ブルーは警察から調査を受けられている身、警察を軽々と呼ぶか?という疑問もあった。
「これはこれは初めまして、私、このパーティの主催を務めておりますブルーと申します。」
「どうも、この度ご招待いただきありがとうございます。」と形だけの敬語で話す。
「それで、話は変わりますが、どうして私を招待したのか気になりまして。」
「ええ、それは私警察の方とお知り合いで誰か優秀な方をご招待したいという話になりましてね。それで優秀だと言われている貴方にしたんです。」
「いえいえ、私はそんなに優秀ではありません。」
「そうですか?最近では強盗事件を解決したという噂をお聞きしましたが。」
「ああそれは、」実際それはほぼコウが解決したんだけどなと思いながら応える。
「あの、」とブルーの後ろからボディーガードと思われる人が肩を叩き声を掛けた。
「すみません。呼ばれましたので失礼いたします。」そう言ってブルーはボディーガードに案内され人混みの中に入っていった。
「高校以来か、ルイ」ブルーが声を掛けたのはこちらも世界的大企業の社長ルイだ。ブルーはこいつと握手したくないと思いながらこれはビジネスだと割り切る。
「お前は、相変わらずか、ブルー」
「なんだ。その言いようは、まるで何も変わっていねぇと言いてぇようだな。」
それを聞いたルイはわざとらしく鼻で笑った。
「よく分かっているじゃねぇか。」まるで煽るような発言にブルーは苛立ちを覚えた。
「何が言いてぇ」二人の間にはピリピリとした空気が数秒間流れた。
「お前のようなガキのお遊びにはいつか終わりが来る。」そして、ブルーの横を通り過ぎると同時に――
「覚悟してろ。」とルイはこの場では似合わない低い声で放った。
ルイはそのまま別の人物と話し始めた。
ルイの変わらない態度に嫌気が刺したが、ブルーはとある人物を見つけその人物の元へ向かった。
「久しぶりだな。ヒデ。いや、ホワイトと言うべきか。」ヒデは窓際に立っていた。