2話 異質な同居人
「これの捜査をしてほしい。」と言ってカズは面白みのない無地のファイルから書類を取り出し机の上に置く。
「ふーん、なるほどな、分かった。」俺は書類を少し眺め答える。本当は一般人が捜査の協力をしてはいけないがそれを指摘しても大丈夫と返され今はもう諦めている。しかし、警察としてどうなのかと時々思う。俺は副業としてこいつの捜査の協力をしている。報酬は公務員の給料からなのでかなり貰える。
「ん、じゃ早速調べてくるな。」と言って食べ終わった皿とコップを残し自分の部屋へと向かった。
情報収集は自分の得意分野だった。元々裏社会位に居たもんだから、情報が嫌でも入ってくる。内容は強盗事件に暴力団がかかわっていたみたいなのだが、そこの足取りが掴めないという事らしい。
まずはツイッ――いやXで情報収集だ。だいたいこういうのは不特定多数の人間が動画を上げる。だから関連しそうな動画を片っ端から見続けた。
調べている間にとある削除された動画が目に付いた。推測するに強盗事件直後の投稿だ。もしかしたら一部始終が写っているかもしれない、そして、何故消されているのか、それが気になってしまいいても立っては居られなかった。
自分が特定されないために裏で使っているアドレスに切り替え、特殊な方法で半ば無理矢理に動画を復元した。目に映った映像は正しく犯行の一部始終だった。あとは簡単だ。動画に出てくる顔を特定するだけだ。一旦目を画面から離し背伸びをした。
「よしっ」と言ってまた顔を画面に向けた。
「あいよ、これ」そう言って夕食で情報収集の成果を見せた。カズは書類の顔写真を穴が開くぐらい睨んでいる。こういう時の顔は怖いのだ。
「恐らくこいつらが実行犯だと思っている。」
「なるほどな、じゃあお前は計画犯がいると……」とさっきより低い声で話し始めた。
「まあ、そんなところだな。実際こいつら暴力団だし、こういうのはもっとやべぇ奴らが裏で糸を引いていると思うぜ。」社会の裏を見てきた俺だから言える言葉であろう。
「……そうか……」なんだか歯切れの悪い返事だった。しばらく気まずい時間が流れる俺はそんな時間が大っ嫌いだ。
「はーあー、せっかくの休日が丸っきり潰れたんだから、新発売のハンバーガー奢れよな。」沈黙した空気を打ち破るように俺は提案した。もちろん報酬金も。
「はぁ!それはないだろ」と怒鳴る。
そして二人で睨みっこして笑ったなんだか馬鹿らしく思ったからだ。
「とりあえず、ありがとな。」と笑った。
「ああ、またいつでも頼めよ。」と言って部屋へ戻った。
「ふう……」と隣の部屋まで聞こえるような溜息を洩らしベットへ倒れ込む。
半日ぶりのベットはなんとも気持ちがよかった。体重に押されマットレスが沈む。
疲れと共に瞼を閉じた。
次の日――目覚めると朝8時結構な時間だった。ダイニングへ向かうとラップがかかっている朝食があった、作ってやらなくてもいいのにと思いながら、食べないのも勿体ないのでレンジで温めまた冷めて不味くならないうちにかぶせていたラップを取り食べる。作ってくれたのは卵焼きとウインナーあと焼き魚だった。一般家庭でよく作られる献立だなと思いつつさっさと食べ終える。洗い物を簡的に済ませ自分の部屋へ向かう。昨日情報収集のため出来なかった本業の仕事があるためだ。納期が近いので早めにやっておきたい。
しばらく画面に集中していると右下の時計が12時を過ぎていた。昼ご飯何にしようかなと思いながらダイニングへ向かう。めんどくさい時は簡単に麵類で済ませるが、今日はなんとなくいいものが食べたくなった。
奥にあった賞味期限ぎりぎりの小麦後を取り出しささっとピザ生地を作る。買いに行くのがめんどくさいので冷蔵庫のあまりものをトッピングとして使っていく、あとはレンジ兼オーブンの中に入れ焼きあがるまで少し待つ。
「よし!」我ながら上手にできた。6等分に切って1つ取るとチーズが良く伸びている。
「んー美味しい!」味をかみしめながら1つ1つ食べる。全部は食べきれないので、カズに朝食のお礼としてあげるかと思った。そうしてあまりはラップに包みメモの書留を横に置いといた。
午後の仕事に入ろうとしたらある一件のメールが来ていた。それも届いているところは仕事用のメルアドでなくプライベート用のメルアドでもなく裏で使う用のメルアドへ来ていた。
恐る恐る開いてみると目を疑った。
依頼メールだったのだ。