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鬼になった同志  作者: マーたん


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黒天の鬼王

紅の柱の戦いが終わり、世界には一時の静寂が訪れたかに見えた。

しかしその裏で、封じられていた最凶の存在が目覚める。

漆黒の雲を纏い、空を覆い尽くす「鬼王」の降臨――。

その圧倒的な力は、仲間たちの絆と覚悟を試す。

蓮は鬼王の中に囚われ、救いを求める声を発しながらも、

絶望的な闘いの幕が切って落とされる。


運命は、最も重い選択を椿と鋼次に迫る。

人であることを捨てるのか、鬼となり抗うのか。

黒天の下、命運は交錯する。


紅の柱が砕け散ったその瞬間、世界は暗転した。

赤い月が黒く塗りつぶされ、天空を覆う雲が渦を巻く。

その中から現れたのは――巨大な影。


「……あれが……鬼王……?」

椿は呆然と立ち尽くした。

影は雲を裂き、空を覆い尽くすほどの巨躯を持つ。

その顔には無数の鬼の面が貼り付いたように歪み、

深紅の瞳が鋭く光った。


『我が血よ――よくぞ呼び覚ました。』


その声は、空と大地を同時に揺らす重低音だった。

鋼次が刀を構え、椿を庇うように前へ出た。


「……蓮はどこだ。あいつを返せ!」

鋼次の怒声に、鬼王はゆっくりと視線を落とした。


『血は、還るべきところへ還った。

お前たちの仲間は、我が体の一部となった。

――我が子、蓮よ。』


「……嘘だ」

椿の膝が震える。

蓮が、鬼王に呑まれた……?

その言葉が頭を支配した瞬間、

黒い稲光が地面を貫いた。


「避けろ!」

鋼次が椿の腕を引く。

次の瞬間、地面が抉れ、赤黒い炎が吹き上がった。


鬼王は空から降り注ぐ闇の爪を放ち、

その一撃一撃が大地を砕いていく。

鋼次が歯を食いしばった。


「……強すぎる。こんな化け物、まともにやり合ったら――」


『我を倒せると思うか、人の子よ。

お前の血も、鬼の力も、

すべて我が裡で溶ける運命だ。』


「黙れ……!」

椿が叫んだ。

「蓮を……返して!!」


その瞬間、鬼王の胸部――

深い闇の中心から、微かに声が響いた。


――椿、鋼次……。


「蓮!? おい、いるのか!」

鋼次が声を上げる。


――俺は……まだ、ここにいる。

でも……このままじゃ、俺も、鬼王の一部に……。


声が途切れがちに響く。

椿の目に涙が滲んだ。


「蓮! 諦めないで……! 必ず、助ける!」


鬼王が鼻で笑う。

『愚かだ。

お前たちの想いなど、血の宿命の前では塵に等しい。

――試してみろ、力なき者よ。』


再び空が震え、無数の黒い鎖が椿たちを襲う。

鋼次が必死にそれを斬り払うが、切っても切っても再生する。

地面からは闇の腕が伸び、足を掴もうと蠢く。


「このままじゃ……持たねぇ……!」

鋼次が歯を食いしばった。

だが椿は、目の奥に炎を宿し、立ち上がる。


「鋼次……私、やる。

鬼でも人でもなく、今の私のすべてで――」


椿の胸の奥に、白の柱で見た“夢”がよみがえる。

陽菜の声。

仲間たちの笑顔。

その全てが、背中を押す。


「絶対に、ここで……終わらせない!」


椿の叫びに呼応するように、

鋼次の刀が黒炎を纏い、赤い雷が迸った。

二人は同時に、鬼王へと駆け出す。




―黒天崩落―


椿と鋼次は、闇の嵐を切り裂くように鬼王へと駆けた。

だが、その巨躯はあまりにも遠く、巨大な壁のように立ちはだかる。

空を覆う腕が無数に伸び、二人を叩き潰そうと襲いかかる。


「くっ……!」

鋼次の刀が黒炎をまとい、鬼王の腕を一本、二本と切り落とす。

だが、切断面からは即座に新たな肉が蠢き、再生していく。


『無駄だ、人の子。

我が血は不滅。

お前たちの刃など、風にすぎん。』


「うるせえ……!」

鋼次が怒鳴る。

「黙ってろ、この化け物!!」


椿は、鋼次が盾となる間に、鬼王の胸に浮かぶ“黒い渦”を見た。

そこから微かに――蓮の声が聞こえる。


――椿……聞こえるか?


「蓮! 今、助ける!」

椿が叫ぶと、鬼王の胸が嘲るように震えた。


『我が子は既に我が中。

助けたいなら、己を鬼へと堕とせ。

――それ以外の道はない。』


椿の脳裏をよぎる、これまでの戦い。

陽菜を失い、蓮を失いかけ、仲間の血を浴び続けた。

「……それでも、鬼にはならない。

私は、鬼と人の間で……蓮を取り戻す!」


鬼王が黒い咆哮をあげ、雷鳴が空を裂く。


その瞬間、鋼次が椿を振り返った。

「椿、やれ……!

お前なら、俺が全力で守る!

鬼になんざ、負けんな!!」


その言葉に、椿の胸が熱くなる。

椿は両手を合わせ、心の奥底の力を解き放った。


――白と紅の力が、融合する。


夢胎の白い光と、紅の柱の血の力。

二つの力が混ざり合い、椿の体を覆う。

彼女の瞳が赤と白に光り、髪が風に舞い上がる。


「鬼王……お前なんかに、蓮は渡さない!!」


椿の叫びと同時に、光の矢が放たれ、鬼王の胸を貫いた。


『――ッッ……!?』


鬼王が初めて、苦しげな呻きを漏らした。


その裂け目の奥で、蓮の影が見えた。


「椿……!」

その声は、弱々しくも確かなものだった。


「今だ、行け!!」

鋼次が叫ぶ。

「お前の手で、あいつを引き戻せ!!」


椿は全力で駆け、鬼王の胸の裂け目に飛び込んだ。


闇の中、無数の腕が絡みつき、引きずり込もうとする。

椿はその中を必死に進み、

最後に、蓮の冷たい手を掴んだ。


「――離さない!」

椿の叫びに、光が炸裂する。


鬼王が咆哮した。

黒天が割れ、空から闇が崩れ落ちていく。

その巨体が後退し、姿を溶かして消え始めた。


『我が子よ……いずれ、血は血へと還る……』

その声だけが、遠くに残った。


椿は、蓮を抱きしめたまま地面に倒れ込んだ。

蓮は苦しげに目を開け、微笑む。


「……お前、無茶しすぎだ」

その声に、椿の頬を涙が伝う。


鋼次が歩み寄り、ため息をついた。

「……まったく、お前ら……。

でも、よくやったな」


夜空には、もはや黒雲はなかった。

だが、最後の柱――

**“蒼の柱”**が、遠くに光り輝いていた。



黒天の鬼王との対決は、物語の転換点であり、最も過酷な試練であった。

圧倒的な敵の前に、仲間の絆は幾度も試され、

蓮の行方が大きな謎と希望を残した。


椿と鋼次は、己の限界を超えた力で抗うが、

それはまだ終わりではない。

鬼王の影は、まだ深く、黒く、物語の終焉へと続く道は険しい。


次章「蒼の柱 ― 永遠の檻」では、

新たな戦いと決断、そして運命の糸が一層絡み合う。

引き続き、物語の行く末をお楽しみください。


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