第八十八章 音と光のセッション
翌日、「出る事務所」には朝から活気が溢れていた。
司郎が設計図を広げ、ヘイリーとあやの、梶原が真剣な面持ちで集まっている。
「今回のセッションは、音楽と建築の境界を超えるものになる。音の波形を光の反射と共鳴させて、訪れた人の感覚を一体化させるんだ」
ヘイリーはサックスを吹きながら、響きの変化を実験する。
「うん、音が空間に溶け込む感じがする。ここにもう少し風の音を混ぜると自然さが増すね」
あやのは電子機器の操作パネルを弄りつつ、
「この装置で人の動きを感知して、音や光を変化させる。来場者が参加している感覚になるように調整しているの」
梶原は現場の安全性チェックを続けながら、
「どんなに高度な仕掛けでも、使いやすく安全でなければ意味がない。ここは俺が責任を持つ」
夜の湾岸現場で、あやのとヘイリーが共同でハミングと演奏を披露する場面もあった。
風が静かに音を運び、二人の音楽が街に溶け込んでいく。
「これが、私のハミング。初めて外の世界で奏でる音…」とあやのが微笑む。
ヘイリーが優しく答えた。
「この音が、世界のどこかに響く。君の音は特別だ」
その頃、司郎は澤井教授と共に設計の最終調整を行っていた。
「今回のプロジェクトは、建築の新たな地平を切り開くものだ。君たちの挑戦を全力で支援しよう」
こうしてSoundGarden計画は、音楽と建築が完全に融合した新しい空間を創り出し始めていた。




