表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星眼の魔女  作者: しろ
352/508

第三十八章 二人からの返事

梶原國護は、昼下がりの作業を一時止めて、手元の机に向かう。

灰色の空が垂れこめる魔界の片隅、埃まじりの書斎で、彼はあやのの手紙を何度も読み返していた。


「……あやのは、強い女だな」


拳を握り締め、静かに筆を執る。


―――――――――――――――――


真木あやのへ


無事に手紙を受け取った。

君のことを思うと、胸の奥が熱くなるが、俺はここで、魔界のインフラを守るために踏ん張る。


幸は龍界にいるが、彼女の目と耳になって、君を守り続けていることだろう。

だから、俺も俺のやるべきことを果たす。


君が龍界で学ぶことは、間違いなく魔界を変える力になる。

俺はそれを信じている。


無理はするな。体だけは気をつけろよ。


また会う日を楽しみにしている。


梶原國護


―――――――――――――――――


筆を置き、深く息を吐く。


「お前の護衛も、俺もな……待っている」





【魔界の薄暗い部屋──司郎の返事】



司郎正臣は、煙草の煙をゆらしながら、あやのの手紙を目の前に置いた。


無機質なデスクの上、設計図や資料に囲まれているが、その瞳はあやのの言葉に釘付けだ。


「ふむ……まだ涙をこらえているか」


軽口を叩きながらも、彼はゆっくりとペンをとる。


――――――――――――――



真木あやのへ


あらあら、手紙届いたわよ〜。

こっちの仕事は相変わらず忙しいけど、あんたの無事が何よりの安心材料よ。


調薬の授業なんて、まったくあんたらしいわね。

生きる芸術家が異世界の音に触れるなんて、聞いただけでワクワクしちゃうじゃないの。


失敗したっていいのよ。成功も失敗も全部あんたの“味”になるんだから。

私はいつだってあんたの味方よ。


身体は大事にしなさいよ。夜更かしなんてとんでもないわよ。

“怖がるな、信じろ”って言ったでしょ? 今でもあんたの心に響いてるはずよ。


じゃ、またね。次の手紙、楽しみにしてるから。


司郎正臣





―――――――――――――――――


煙草の火が揺れ、煙がゆっくりと天井へと昇る。


彼もまた、あやのの帰りを待ち続けている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ