第三十七章 月麗の過干渉──増す愛情と揺れる心
その夜、風の楼の薄明かりの中、あやのが書き物をしていると、
静かに部屋の扉が開き、月麗が入ってきた。
「遅くまで勉強しているね。無理は禁物だよ」
彼はあやのの机に向かい、そっと書きかけの書類を閉じた。
「今日は、君のために特別な薬を調合してきた。疲れを取る薬だ」
手のひらに、淡い青い光を放つ小瓶を差し出す。
「飲んでみて」
あやのは戸惑いながらも、その薬を受け取った。
月麗は優しく微笑み、腕を伸ばして、あやのの肩に手を置く。
「君がここで無事に成長してほしいから、つい過保護になってしまう」
「でも……」
あやのは静かにその手を振りほどこうとするが、月麗の手は柔らかく、離れない。
「君は自由でいてほしい。でも、何かあったらすぐに助けたい。
それが私の……君への想いなんだ」
言葉の重みと、温もりにあやのの胸は締めつけられた。
「……ありがとう。でも、私も自分の力で歩きたいの」
「わかっているよ。君は強いから」
月麗はそう言いながらも、離れた手をまた優しく握り直した。
「それでも、私は君の側にいる。君が私の前からいなくなるなんて、考えられないから」
あやのは小さく息を吸い、顔をそむけた。
その瞳には、迷いと甘さが入り混じっていた。




