表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星眼の魔女  作者: しろ
328/508

第十五章 お前が光なら、俺は現場だ

昼下がりの迎賓館裏庭。

静かな庭に、パキン、と何かが弾ける音がした。


「やぁ、梶原くん。お昼寝中にごめんね」


にこやかに声をかけたのは、白衣に近い衣を翻したユエリーだった。

その手には小さな魔法陣が浮かび、きらめく蝶のような光が舞っていた。


梶原はあやのの膝枕で、幸と一緒に昼寝していた。

(※あやのは近くのテーブルでお茶の準備中)


「……てめぇ、さっきから何発魔法撃ってきた?」


「魔法? あれはただの“空間音波振動式起床法”だよ。起きるのにちょうどいい周波数」


「爆音だったろうが!!!」


梶原、地面から跳ね起きて怒鳴る。

幸も「ワンッ!」とユエリーに威嚇するように吠える。


「ふふ。いやぁ、羨ましかったんだよね~。

あやのの膝って、柔らかそうだし、いい匂いしそうだし、なにより愛されてるって感じが……」


その瞬間、ガシャンッと何かが砕けた音がした。


「てめぇ」


「ん?」


「何度も言わせんな。あやのに手ぇ出したら、容赦しねぇぞ」


「えっ、それってもしかして嫉妬? やだ、かわいい」


「殺すぞ」


「ひぃっ」


梶原は、なぜか手製のモンキーレンチを背中から取り出し、構えた。


「あ、あの、それは魔界持ち込み制限武器に該当するのでは!?」


「俺が法律だ」


「出たーー! 物理至上主義男!」


ユエリーは魔法陣を展開。

庭の草木がふわりと浮き、風のように光をまとう。


「いいよ。ちょっとだけ遊ぼうか。私、強いんだよ?」


「知ってる。でもな、どんなに強くても、現場は──素手でなんとかしてなんぼだ!」


「名言風にすればいいってもんじゃないよッ!?」


次の瞬間、

蝶のように舞うユエリーの魔法と、

現場で培ったガテン系の勘と肉体と“たぶん理不尽”で殴ってくる梶原の戦いが始まった。


バチンッ! ズンッ! ヒュンヒュン! ドゴォォン!


──その攻防を、あやのは冷めかけた急須を手に見守っていた。


「あのふたり、またやってる……」


幸が、ぺたんとあやのの足元に座る。

どうせ止めても意味がない、と言わんばかりに。


「ま、いいか。倒れた方から順番に、冷やし団子ね」


お茶の香りの向こうで、ふたりの男たちの妙に楽しげなバトルはしばらく続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ