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エピローグ:司郎デザイン、東京へ帰還
その翌日。
幽霊たちが棲まう、東京・出るビルの灯りがまたともる。
踊り場の田中さんがブツブツ言いながらうろつき、
トイレの太郎くんが新しい芳香剤に嬉しそうに笑い、
エレベーターの山形さんがまた「脅かし係」に復職した。
「ただいま、東京」
ヘイリーがそう呟いたとき、
司郎は設計図の前でペンを走らせながら、静かにこう言った。
「さあ、次の“生きる建築”を始めましょうか。
沈黙も、音も、全部ひっくるめて、
うちらの日常に溶け込ませていくのよ」
──日常は戻る。そして、物語はつづく。




