第四十七章 パリ、再びの主戦場
パリの街は、朝の光に包まれて目覚めていた。
石畳の道を行き交う人々のざわめき。カフェの香ばしいコーヒーの香り。
あやのの心は、かつてないほど鮮やかに鼓動していた。
「司郎さん、案件の資料はこれで全部です」
事務所に並ぶ新しいプロジェクトの資料の山。パリの中心部、老朽化した劇場の大規模改修計画。
司郎が資料を見つめながら呟く。
「難題だ。だが、これをやり遂げられれば…俺たちの名はさらに世界に轟くだろう」
そこへ、軽やかな笑い声が響いた。
「あら、久しぶりね、みんな」
ヘイリー・マカフィーが颯爽と姿を現した。
ラテンの情熱を纏ったその存在は、パリの曇り空に一瞬の陽光を差し込ませた。
「音楽のこと、ずっと考えてたの。あやのの歌がもっと自由に空間を飛び回るように」
あやのは微笑み、彼女のエネルギーに背中を押されるように感じた。
その瞬間、銀縁眼鏡をかけた美青年、吉田透がドアを開けて入ってきた。
「お待たせ。パリでの設計競争に、俺も参戦することにした」
梶原が少し身を乗り出して言う。
「相変わらず、静かに火花を散らす男だな」
吉田は苦笑しながらも、あやのを一瞬見つめた。
「君のレクイエム、聞いたよ。あやのの声は確かに、建築に新たな命を吹き込んでいる」
司郎が二人の間に立ち、腕を組んだ。
「これでまた、俺たちのチームは面白くなる。建築と音楽、そして魂のぶつかり合いだ」
あやのは胸の奥で新たな決意が芽生えるのを感じていた。
「パリの舞台で、私たちの音を、形にしよう」
街のざわめきとともに、あやのの新たな戦いが始まった。




