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07.帰還クエスト

「さて! 腹も膨れた睡魔も飛んだ! で、早速何をしようかってとこなんですけど!!」


「……おまえ、結構アホなのかしら?」


 宿のおかみから「賢神様がそのまま出歩くのは危険だよ!」と言い渡された真っ白なフード付きのローブ。それを頭からすっぽりと被ったハクアは、疲れたようにため息を吐くとこれからのことについて悩んでいる高瀬を一瞥。提案するように「まずは職探しに行くのよ」と口にした。


「職探し?」


 高瀬は疑問を抱くように繰り返す。

 ハクアはそんな彼の様子にこくりと一度頷いた。


「そう。おまえは今、強いとはいえ金なしの一文無し。この世は金がないと立ち回らないことも多々あるから、それを解消するために職を探すのよ。ちなみに、ココで言う職は異世界人(プレイヤー)専用の『クエスト』のことなんだけれど……」


「あー」と頷く高瀬。そういえばあの時見たクエスト画面?、にもクエスト達成報酬がどうたら書いてた気がする。つまり、この世界では異世界人(プレイヤー)はクエストを受け、それを達成した報酬に金を貰う、と……。


「……ん? 待てよ?」


「はい?」


「あ、いや、なんかハクアさんと会う前? 直前? にクエスト出てたような……『ステータス・オン』」


 ぽん、と現れたステータス画面。触れたそれをスクロールし、クエスト達成率を確認。確かに存在する、達成済みの文字をみてこくりと頷く。


「やっぱそうだ。クエスト達成してる。しかも報酬金貨二千マイルのやつ」


「……なるほど。じゃあ必要なのはサイフね」


「サイフ?」


 ステータス画面を直しながらハクアを見れば、彼女はこくりと頷き説明してくれる。


 サイフ。それは金を貯蓄する金庫のようなもの……。

 なんでも、サイフがあればマイル……この世界のお金を取り出すことも直すことも可能になるらしい。逆に、サイフがないとそれらは手にすることは愚か見ることも出来ないのだとか。


 サイフには多種多様な形があり、物によっては家ひとつ買える値段のものもあるらしく、この世界での貴重性がとてもよくわかる気がした。


 そんなサイフも、クエストで入手できるらしかった。つまりそれは、やはり職を探すのが先決のようだ、ということ。


「なるほどな」


 高瀬は頷く。


「で? 職はどこで手に入るんだ?」


 訊ねる高瀬に、ハクアは言った。


「市役所」


「……一気に現実感押し寄せてきたな」


 告げる高瀬は、気を取り直すように頭を振り、「よし行くか」と一言。自然と手を繋いでくるハクアを隣、大きな一歩と共に市役所に向かい歩き出した。




 ◇◇◇




 市役所までの道のりは、そう遠くないものだった。道中『市役所はこっち』の立て看板があったこともでかいだろう。

 すごく主張する看板たちのおかげで、高瀬はなんとか市役所たる場所に辿りつけていた。本当に、現実世界で見るような普通の市役所の風景にどこか物悲しさを覚えながら、高瀬は渡された整理券を手に椅子に座る。ハクアがすぐさま膝の上に乗って来たことに多少驚きながらも好きにさせていれば、暫くして整理券に記載されている番号が呼ばれた。ウトウトするハクアを抱えながら呼ばれた場所に行けば、そこにはエルフ耳の女性が一人。にこやかな笑顔と共に彼らを迎えてくれる。


「いらっしゃいませ。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「あ、はい。高瀬ヒサシで……」


「高瀬様ですね。今データを確認致しますので少々お待ちください」


 言うが早、タタタタタッと素早い速度でパソコンのキーボードらしきものを叩く女性。彼女は暫く光るパソコン画面と睨めっこすると、すぐに笑みを浮かべてソワソワと待つ高瀬のことを振り返る。


「お待たせいたしました。高瀬様のデータが確認できましたのでこのまま要件をお聞きいたします。本日はどのような御用でココを訪れたのか教えてください」


「えっと……クエスト……」


「クエストの受諾、ということでよろしいですか?」


「ア、ハイ……」


 頷く高瀬。コミュ障を発動しながらもなんとか返事を返す彼に、彼女は頷く。


「かしこまりました。ではどのような報酬を希望されるかお訊ねしてもよろしいでしょうか?」


「え、えっと、お金と……サイフを……」


「なるほど。でしたら初期クエストから選んだ方がよろしいと思います。今、高瀬様が受けられるクエストを記載したリストを発行しますね」


 言ってにこりと微笑んだ女性。はわわ、と震える高瀬は、そわそわと落ち着きなく周囲を見回しながらリストが発行されるのを待つ。


 暫くして出てきた羊皮紙のような紙には、ずらりとクエスト名が記されていた。その中から気になるクエスト名を選ぶと、目前に透明な画面が現れクエストの内容などを教えてくれる。

 高瀬は少し吟味した後、二つほどのクエストを選択。選んだそれを女性が手続し、クエストの受諾は完了となる。


「以上で用件はお済みでしょうか?」


「あ、もうひとつ……報酬がいいクエストも見てみたいです……後々の参考のために……」


「かしこまりました。ではレベル三~レベル五のクエストもリストアップさせていただきますね」


 そうして新たに渡された羊皮紙には、クエスト名とクエストレベルが記載されていた。高難易度と言われるレベル五のクエストに関してはなんだか難しそうなタイトルがたくさん並んでいる気がする。中には漢字だらけで読めないものもあったが、果たしてアレはなんなのか……。


 そんな中でも一切目を惹くタイトルがあった。

 レベルの記載がないそれは、『帰還クエスト』と記載されいている。


「……あの、コレは?」


「はい。異世界人(プレイヤー)向けの特例クエストになります」


「あ、はい……えっと、内容をみても?」


「もちろんです」


 女性が言った瞬間、ポコン、と音。同じくして出てきた透明な、小さな画面にはクエストの詳細が記載されている。高瀬は無言で詳細を確認。しっかりと読んでから、思わず口元を引きつらせた。


『クエスト名:現世への帰還

 クエスト内容:現世へ帰還するかを選択する

 クエスト発生条件:異世界人(プレイヤー)の死』


 つまり、正常な状態では、この世界から抜け出すことはできない……?


 腕の中で眠るハクアを眼下、高瀬は言いようのない恐怖に身を震わせた。まさかこんなゲームで一生を棒に振ることになるのかと、考えれば考えるほど泥沼に嵌っていくようだ。


 青ざめた高瀬に、女性が「大丈夫ですか?」と声をかける。それに慌てて返事を返した彼は、そのまま逃げるように席を立ち、市役所の外へ。まるでこの世の終わりとでも言いたげな顔で、宿へと続く道を戻って行った。

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