ミーコ、ローグとテント越しでお話しする
何とか猫の国の王 ネロウを狙うテロリスト ローグがイリスと和平交渉をするように説得出来てミーコは満足だった。
チーズパンも食べ終えるとローグは「ミーコ。テントを使って」と言った。
「え? なんで?」
「なんでって、女の子に野宿させるのはいけないよ。俺は一人で野宿する」
「でも悪いよ」
「いいよ。俺は野宿でも大丈夫さ」
頼もしいローグの言葉にミーコは「じゃあ、お言葉に甘えて」と言ってテントの中に入った。
テント内は結構、暖かった。おそらくテントの布が絨毯並みに厚いからだろう。触るとフワフワしているが、押すと重たかった。
「このテント、暖かいね。それに布も重たいけど」
「ああ、その布、ネフェリムの民が育てているヤギの毛で作っているんだ。魔法の布で柔らかかくなったり、硬くなったり、重たくなったり、軽くなるんだ」
「へえ」
「ネフェリムの民はそれを旗にして使ったり、戦ったりするんだ」
ローグの言葉にちょっと疑問に思った。この布で、どうやって戦うんだろう。そう思ったのだが聞かずに、別の事をミーコは野宿しているローグに聞いた。
「そういえば、ニアンから小説買っているんだ」
「うん。冒険小説を買っているんだ」
「ネフェリムの民って学校の先生っているの?」
「イリスの家の伯爵家から派遣された先生が来ているんだ」
「すごいね。猫の国の識字率って結構、低いんだ。野生の本能が強い者は全然読めないんだよ。特にネロウとか」
字が読めないから上から目線でネロウたちに「読め!」と言われる。自分で読めばいいのにって思っているけど、自分の本能が許さないで結局言いなりになってしまう。それが時々、ミーコはうんざりしてしまう。
するとローグは「それ以前に……」と話し出した。
「ネロウって目が悪くない?」
「え? そんなことないよ。だって私とか他の人の区別はつくもん」
「多分、それは臭いで判断しているんだよ。【運命の番】の臭いで判断しているから、嗅覚に優れているはずだ。それで他人などを判断しているんだと思う。だけど文字にはインクの臭いしか無いから、読めないんだ」
ローグの言葉に納得してしまった。確かにネロウは嗅覚に優れているし、目が悪いのも確かにって思う。ネロウは綺麗で美しい絵とかも見せても「下手!」と暴言吐いていたし。
それにしてもローグの観察力はすごいなってミーコは思った。
「ローグって色々と見ているね。私は何にも見ていないって思えてきちゃった」
「見慣れている物は、そういう物って判断しちゃうから先入観があるんだと思う。俺は魔物とか竜とかを討伐しないといけないから、観察して弱点を見つけないといけない」
「なるほどね」
ミーコが納得しているとローグは「ねえ、ミーコ」と興味津々な感じで話し出した。
「ミーコもニアンから小説を買っているんだろ? 何を買っているんだ?」
「え?」
「どんなものを買っているんだ? 冒険もの?」
「……内緒」
何となくミーコは恋愛小説と答えたくなかった。なんか、ちょっと恥ずかしかったのだ。
そうしてローグとミーコはテントの布を挟んでいろんな話をして、眠った。