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罠と仮面舞踏会

エドワード大公子とルナ皇女殿下の結婚話が進む中、それを阻もうとする悪だくみが!


ガルシア・ディア・ロティシー男爵は狩りの開始前取り巻き達と歓談していた。

そこへラウル・ディア・リーガン準男爵がやってきた。


「ロティシー男爵。ご機嫌いかがでしょうか?

 男爵に御耳に入れないといけない事がございました」


リーガン準男爵は取り巻きの中でも特に金魚の糞度の酷さが目立つ一人だ。


ロティシー男爵は辺境伯の義弟で、生母は準男爵の息女だった。

辺境伯に兄弟がいない前辺境伯が右腕として認知した唯一の息子だったが、産まれの低さからひねた性悪な男だった。生まれの短所からお互い通じるのか悪さをする仲の一人だった。


今日は自分の侍従がたまたまランディルフ男爵と辺境伯、大公子の話を聞き主人のリーガン準男爵の恋の話を耳にしたのを主人に入れたのだった。


「実はさきほど私の侍従がランディルフ男爵と辺境伯、大公子の話を偶然聞きました。

 どうやらエドワード・ディア・ダルディアン大公子殿下がルナ皇女殿下に恋をして、結婚したいお気持

 ちがあり近じか告白し結婚したいとお考えでした。

 男爵のお話だと皇后陛下もその意向であるようなのです。

 このまま大公子と皇女殿下の結婚を手をこまねいてみているだけでよいのでしょうか?」

こそこそと準男爵が耳打ちする。


「そうだな。

 大公子はオルファン帝国の傍流の唯一の直系だ。

 その点フェレ皇国も十分に理解している。

 いまだにオルファン帝国を属国にしたいという野望は費えていない。

 だからこそ皇室の中心が盤石だと、後々面倒だ。

 最終的にはフェレ皇国に付き我らが帝国の中心に座る宮廷を再構築しないといけないからな。

 俺を非嫡出子だと馬鹿にしたきた奴らを一斉に奈落の底に突き落としてやる。

 義兄も最近は俺を気にかけてくれるようになったが、かといってこのまま従順な犬の様に義兄の家来に

 なるもの俺らしくなくて窮屈だ。

 俺は苛まれてこそ能力を発揮出来るし俺らしいと言える。」


男爵は嫌らしい目つきで邪悪な心で不満を隠したりせず、底知れない国に売るという悪意を実行しようと時を待っていた。

中央集権の権威を現在の宮廷に不満がある貴族を集めては集会を内密に開いていた。

しかも近頃フェレ皇国へ内通した行動をとっていて国内の危険分子の一人だ。


「おっしゃる通りです。

 今のオルファン帝国の改革は到底これからの帝国の役には立ちません。

 最終的に我らの力で再復興させましょう。

 義兄殿以上の力が男爵様にはおありでございます。

 安心くださいませ。

 このラウル・ディア・リーガンが男爵様の苦悩と気欝を晴らして見せましょう」


準男爵はロティシー男爵の野心に油を流し火をつけた。

彼らは自分達の置かれた地位が決して満足いくものではなかったのでさらに上の地位を望んだのだ。


「ではどうしたらいいのか?」


「まずはこの縁談を壊しましょう。

 大公子が皇室に取り込まれますと、さらに我らの立場は厄介なものになります。

 早急に我々がクーデターを起こすのは次期早々です。

 まだまだ人材が不足しています。

 かといって早急に人を集めますといつ皇室に発覚するかわかりません。

 ここはお任せくださいませ」


ニヤリと笑う準男爵はまるで悪魔のそれと同じ陰湿で狂気に満ちた瞳を宿し男爵に耳打ちした。


「それは面白い。

 大公家にも皇室にも痛手だな。」


男爵は上機嫌だった。


「今夜は仮面舞踏会を楽しみ。

 明日の仮装舞踏会で決行だな。」


夏至祭の恒例仮面・仮装舞踏会は夜も深け暗がりの中蝋燭の灯りだけで催される。

つまり少し薄明かりの中で相手の顔がわかるか?わからないか?レベルの灯り。

大体誰であるかは察しがつくが今夜は言及しない。

この日だけはある程度の犯罪以外ははめを外す事は許されていた。

かつこの夜の正装は出来るだけシンプルな物を選び装身具も限定するようにするのが慣例だった。


しかも宮殿内部の立ち入りは禁止だが。

庭園までは一般市民が参加する事を許されている。

庭園を出て皇族や朝廷に関わる貴族達は市民との交流や暮らしぶりを知る事が出来た。

この環境はロティシー男爵にとって好機だった。

見知らぬ人がいても市民だと認識されるので誰もが許され、不審者だと思われない


**********************************************


夏至祭の仮面舞踏会は皆思い思いの仮面をつけシンプルな正装で参加している。

シンプルと言っても煌びやかな宝石やプラチナやゴールド、シルバーといったけばけばしい装飾品が駄目であって刺繍やレースは許されていた。


私は淡い昼間の空の色と同じドレスにレースをあしらったドレスに真珠のイヤリング、指輪、二重のネックレスをつけて白の猫をイメージした仮面をつけて参加した。


「これはこれは一段と魅惑的な令嬢ですこと」


白いドレスに草花の刺繍をあしらったドレスに金色のシルクの仮面をつけているのは明らかにお母様。

この装いはあらかじめ決められた慣例のドレスコードです。

流石にわかるでしょうが。中にはこの夜会が初めてという貴族もいます。その方が無作法な真似できない様に皇帝皇后の正装はあらかじめ参加者に無礼のないようにと伝令されます。


でもここでは知らないふりが常識です。


「お褒めの言葉。どこのどなたかは存じませんが。

 ありがとうございます」


「これほどの魅惑的なご令嬢ならば貴公子がほっておく事はないでしょう。

 意中の方はいらっしゃいますか?」


「まあ!

 男など長い筋肉質な足と使っても使っても減らないお金と金銀宝石を持っていれば女はよりどりみど

 り。まあ女の方にその気があればですが」


「まあ!お口が悪い事。

 ご両親が聞けば失神しそうですわ」


「両親は私の悪態にはなれておりますし。大丈夫ですわ。

 とにかく結婚どころか。

 恋愛もまっぴら御免でございます」


「………」

中々手ごわい我が娘……。


「本当にそんな事はわかりませんわよ。

 そんな貴方も焦がれる様な殿方にお会いできるかもしれませんわ。

 大事なのは出会いを見逃さない事でしょう」


「だからいたしません。

 この方だと思っても結婚して、生活が想像と違ってもおいそれと離婚出来ません。

 子供が出来ていればなおさら。

 私には向きませんの。

 自分が自分である事が今の私の一番望む姿ですわ。

 だから毎晩女神ディア様にお祈りしておりますの。

 夫になる男が現れませんようにと。

 それが私の今一番の幸せです」


「あぁ~。

 そんな事をおっしゃらず。

 貴方の夫を見てみたいものです」


「だからそんなことは絶対にありません。

 あっ!

 でも土や石で出来た夫なら構いませんわ。

 何も言わず、何も見ず、何も聞かない。

 最高の夫となり私は貞淑な妻となりましょう」


「…………」


まったくこの子は私のお腹から出てきたのかしら?

もしかして口からだったかもしれないわ。

本当に不安です。

この口は何とかならないのでしょうか?



「あぁ~もう舞踏が始まりますね。

 では貴婦人失礼いたします」


私はそう言ってお母様から離れていった。


最後に見たお母様の顔には黒い縦線がいっぱい走っていた。

お母様の隣には白い正装した男性が立った。

確実にお父様だ。


「あれは治らないね」


「本当に心配です。

 もし私達が何かあって。ハインリッヒに何かあれば皇女といえど何が起こるかわかりませんもの」


ため息交じりの愚痴が始まったようだった。


「まあ。

 そうなればそれなりの財産を残してやればいいではないか。

 結婚だけが全てではないさ。

 君だって私の評判を聞いていただろうから。

 嫁ぎたくなかったはずだよ。

 なのに今も不幸かい?

 今も悔やんでいるかい?

 皇太子妃だって最初は嫁ぎたくなかったようだったし。

 離婚計画を立てていたようだったし。

 でも皇太子夫妻は不幸そうかい?」


「まあ~何てことおっしゃるのかしら。

 意地悪な方だわ。

 憎らしい。

 私がどれほど……あな…」


そう言った後のお母様は何故か恥ずかしそうにしていた。


隣でお父様が笑っている。



御免なさいね。お母様でも私には結婚なんて無理だから。


そう言ってルナの元へと向かった。


あっ!ルナと言ってはいけないわね。

今日は誰だかわからない仮面舞踏会だから。


淡いピンクの裾は草花の赤や濃い薔薇色の花の刺繍が施された可愛らしいルナにぴったりのドレス。

可愛らしい子リスの仮面をつけて隅っこにちょこんと立っている。


私は隣にじんどり、腕を組んで肩を寄せ合った。


「可愛らしいご令嬢。

 貴方のお目に叶った殿方はおいでですか?」


クスクス笑いながら聞いてみた。


「うふっ。

 そんな方がいらっしゃるでしょうか?

 私は殿方を楽しませるすべを知りません。」


真剣にそう思っているからルナは可愛い。

私の憧れ、私の可愛い妹ルナ。


「貴方がお相手が好きで、お相手も貴方を命がけに愛する人が現れたら、全力で応援しましょう。

 ただ貴方を苦しめ、悲しませ、泣かせる相手には全力で復讐しましょう。

 それが私の使命ですもの」


そう言って両親目線を向けると。


「最後はなんとかなるものさ」


お父様はお母様の手をとって舞踏ホールの中心に立って音楽と共に二人は踊り始めた。

優雅な踊りは見事で上品であり、魅惑的で、視線が外せないでいる。


両親の近くにはランディルフ男爵がいる。

しかも辺境伯とエドワード大公子の二人と何か話している。


「皇后陛下は大公子殿下の求婚をたいそう好意的にお考えでしたよ。

 まだまだフェレ皇国の影響下を抜け出せきれないのをご心痛に。

 大公子殿下が皇女殿下を大切にしてくれるならまたとない縁だとおっしゃっておられました。

 なので障害はございません。

 後は貴殿の覚悟と熱意、そして愛情でございます」


「もったいないご厚意で嬉しい限りです。

 あの方が私と生涯を共にしていただければ、私の全てであの方を愛します。

 全身全霊であの方を愛し、全てを捧げます」


「なんと頼もしい貴公子か。

 さっそく両陛下にご報告いたします。

 さあ殿下の元へ」


二人でいる中勇敢にも私達にダンスを誘おうと殿方が二人やってきた。


確実に私の手をとろうとしているのはアンドリュー殿。

まあ今日は相手がわからない前提で、しかも慣例でダンスの断りは出来ない定めになっている。


「もしよろしければ私と踊っていただけますか?」


あくまで知らない人前提なので知らん顔しときます。


「えぇ。どこのどなたかは存じませんが。

 踊ってあげてよろしくてよ」


「これはこれは。

 光栄でございます。」


辺境伯の手をとり、踊りの輪に加わった。


ステップを踏んで、軽やかにドレスの裾を翻す。


意外に辺境伯はリードがうまい。

ほとんど宮廷行事には参加していないはず。


「意外に踊りがうまいと思っていますね。ご令嬢」


「はあ。まあぁ」


「嫌みを言えず残念でしたね」


「所であなたはどこのどなたかしら?」


「いやそれはご勘弁を。」


「あら言わないつもり?」


「どなたとお思い?」


「ええ。存じておりますわ。

 辺境伯アンドリュー殿でしょう」


「いや。今は言いません。」


「いえあの辺境伯ですわ。 

 私の事を高慢ちきで浅はかな知恵者と非難した」


「いえいえ。

 所でその方はどんな方なのですか?

 本当に知りません。」


「たいそう傲慢で意地悪で、女の尻ばかり追いかけて、根の葉もない悪口をまるで鸚鵡の様に喋り続ける

 のです。

 あの方のおしゃべりはとても聞き手を不愉快にするのです。

 私なら辛辣な言葉を放っても笑いに替えて見せますわ。

 でもあの方の悪口はまったくはりてビンタしたくなるだけです。

 今も踊りの輪にいますわ。

 このままぶん殴る事が出来たらどんなに痛快か」


「なるほど。

 その方と出会ったら。

 そう伝言しておきましょう」


「きっとよ」


「ではその時を楽しみにしていますわ」


パートナーがお互い替わり次のカップルへと変わっていった。



一方ルナは?


「ご令嬢。

 よければ私と踊っていただけますか?」


「勿論です。

 ご令息」


二人は踊りの中心にステップを踏み始めた。

まるで蝶の様にルナのドレスのスカートがクルクル廻ってとてもエレガントだ。


本当にベストカップルとは二人の事をいうように思った。


「ご令嬢。

 踊りがお上手だ。

 素晴らしい。

 一目で心を奪われました」


ルネは恥ずかしそうに顔を背けるが決して嫌そうではなかった。

それどころかその殿方に惹かれているようにも思う。


「ご令嬢。

 どうか私に機会をお与えくださいませ。

 この夜会が開けてからもお会いできる機会を。

 麗しい方。

 私は今日の狩猟大会中にティーパーティを開催されているご令嬢に心を奪われました。

 誠心誠意あなただけを思い、あなただけを大切いたします。

 どうか。

 機会を美しい方」


「まあ。恋の囁きはどうか小声でお願い致します。

 誰かに聞かれたら恥ずかしいわ」


ルナの相手は得意そうに楽しそうに胸が弾んでいるのがわかる。

確かあれはダルディアン大公子だわ。


なるほど!!

ルナもまんざらでも感じ。

ダルディアン大公子はあの辺境伯と親友で独身貴族主義を誓っていたはず。

そこは大丈夫かしら。

ルナを見る目は完全に恋に落ちた顔をしているから離脱宣言したのかしら?

なら面白い。

大切な親友が自分とは分ち妻帯するんだもの。

きっと悔しいはずだわ。


ルナも楽しそうに大公子と踊っているわ。

あんな楽しそうな姿はなかなか見せないもの。


私は踊りの輪をパートナーを変えるタイミングで離れてランディルフ男爵と思われる殿方の前に立った。


「私の独り言とお聞きください。

 あのご令嬢は今踊っておられる方と相思相愛の様に思えます。

 貴方はどう思われますか?」


その年配の殿方は満足そうに髭を撫でながら嬉しそうに言った。


「私もそう思います。

 大変お似合いではありませんか。」


「そうですわね。

 私もそう思いますわ」


そう言った後、二人の踊りが終わった。


「では失礼」

スカートを翻して二人の元を去った。


息を切らして頬を赤めるルナと嬉しそうにまるで女神に出会ったような興奮した大公子がいた。


「さあ!大公子殿下。

 告白はなさったの?

 私は貴方の義姉になれるのかしら?」


本来この質問はこの場に適したものではなかったが、私は聞かずにいられなかった。


「誠心誠意を尽くしたつもりです。

 私の心は彼女に捧げます」


私は満足して何度も頷いた。


「ええ。

 さあ貴方彼の御返事を差し上げて。

 ええ。言わなくても貴方の答えを私はわかっているけれど。

 口にしないとお相手には伝わらないわ。

 さあ。ご返事できないなら、この恋に落ちた憐れな殿方の口を塞いであげなさいな」


ルナは真っ赤になりながらも、俯いて恥ずかしさから震えながら言った。


「私も同じでございます」


この言葉を聞いた大公子は嬉しさのあまりルナを抱きしめた。


二人とも嬉しそうだ。


そこへランディルフ男爵がやってきた!

さっきから私固有名詞だしていますね。

駄目ですね。












ルナとエドワードが遂に恋人通しに。

幸せ絶頂の二人に。次は?

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