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第13話 ある少年の後悔

日間17位、週間34位ありがとうございます!

 あれはまだ俺が7歳の頃の話だ。

 

 仕事に行ってしまった両親が帰ってくるのを待ちながら妹の綾香と仲良く遊んでいた時のこと。

 両親が何かあった時のためにと買ってくれた腕時計型携帯電話に知らない人から電話がかかってきた。

 俺も綾香も不思議に思い、取り敢えず電話に出ることにしたのだが……。


『今君達のご両親が交通事故に遭って病院に運ばれているんだ』

「「えっ……?」」


 当時の俺と綾香は、ただ呆然と声を漏らすだけだった。

 しかしそれもしょうがないことだと今になって思う。


 いきなり両親が事故にあったと聞かされれば誰だって呆然となってしまうはずだ。

 しかもどちらも子供なので、余計にそうなってしまうだろう。

 しかし当時の俺は色々な感情と情報で混乱する頭を子供ながらに必死に一つ一つ整理しながら返答する。


「えっと……ぼ、ぼ、僕達のお、お父さんとお、お母さんがびょ、病院にいるの……?」

『……ああそうだよ。しかも今とても危険な状態なんだ。君達はお父さんとお母さんに会いたいかい?』


 俺は病院の医師であろう人にそう聞かれて、考える前に気が付けば返事をしていた。


「い、行くっ!!」

「私も行くっ!!」


 俺に釣られて綾香も行くと宣言する。


『……わかったよ。なら黒の車がこの後君達のお家に来るから、それに乗ってきなさい』

「「は、はい!!」」


 医師はそれだけ言って切ってしまった。


「お、お兄ちゃん……お母さん達大丈夫だよね……?」


 綾香が泣きそうになりながら……いやもう既に泣きながら俺に聞いてくる。

 しかし当時の俺は混乱していて薄っぺらい励まししかできなかった。


「だ、大丈夫だって! きっとすぐに良くなるから! 取り敢えずお母さんとお父さんに会いに行こう!」


 その後言われた通り黒の車に乗り病院に向かうと、既に両親は亡くなっていた。

 

 両親に泣きつく綾香をみて、俺は子供ながらに妹だけは絶対に守ろうと誓った。


 

 だが、神はどうやら既に俺を見放していたらしい。

 俺が14歳の頃、その誓いも守ることが出来ず、綾香を失ってしまった。


 原因は家の近くのダンジョン崩壊だ。


 ダンジョン崩壊とは、ダンジョンと言う次元の裂け目と地球が融合してしまい、向こうの世界の物や生物が、こちらの世界に侵入してくることを言う。

 それを事前に防ぐには召喚術士が必要になってくる。


 召喚術士とは、《魔導バングル》を使用することによって、召喚魔術で召喚獣を召喚し、モンスターと戦う人達のことだ。

 彼等のお陰で今の平和な生活があると言ってもいい。


 勿論俺も憧れた。

 だから10歳の頃に、召喚術士としての才能があるか、適合率を測定しに行ったことがある。

 その時に綾香も一緒に受けた。


 適合率とは、《マナ適合率》と《召喚適合率》があり、最高が100%で、召喚術士になるには最低でも10%は必要になってくる。

そして俺のマナ適合率は、人類最高の100%だったが、召喚術士に必要な召喚適合率はギリギリの10%。


 しかし綾香は俺と違ってマナ適合率も召喚適合率も圧倒的に高かった。

 その数値は驚異のマナ適合率95%、召喚適合率87%。

 人類の中でも上位に入る適合率だった。


 綾香は俺の結果を知って、


「お兄ちゃんは私が守るからね!」


 と言って決意の目で俺を見ていた。

 その日から俺は妹に守られるしかない無能な兄へと変わってしまった。


 勿論俺も強くなるために頑張ったのだ。

 文字通り死ぬほど特訓をした。

 しかし俺では召喚獣と契約すらできない。


 一方で綾香はひたすら召喚術士の特訓とダンジョン攻略をしていた。

 そのお陰でなのか才能なのか分からないが、不死鳥と言う最上級召喚獣との契約に成功。

 晴れて立派な召喚術士になった。


 勿論綾香が召喚術士になれたことは自分のことの様に嬉しかったが、俺は綾香には危険な目にあって欲しくなかった。

 何度も『召喚術士を辞めてもいいんだぞ』と言ったが、


「私はお兄ちゃんを守るの! だから召喚術士になったのよ? 更に強くなって私がお兄ちゃんを守るから、これからも一緒に生きようね」


 と笑顔で言われると、俺は何も言えなくなる。 

 だってその笑顔を見ると自分が愛されていると感じで嬉しくなると共に、自分には綾香を守ることは出来ないと突きつけられた様で情けない気持ちになるから。


 

 俺達は両親が残してくれた大きな家に住んでおり、家の中には家族写真やその他の思い出が沢山飾ってある。

 そんな家を2人で使うには広すぎて使っていない部屋もあるが、毎回2人で綺麗にすべての部屋を掃除していた。

 しかし綾香が召喚術士として成功していくにつれて家に帰ってくるのが遅くなったり、休みが減ったりしだした。


 そんな彼女を俺は応援していた。

 だからなるべく綾香に召喚術士の仕事に集中して欲しくて、家の事は全て俺がすることにしたのだ。

 初めてすることも多くて大変だったが、綾香との2人の生活は充実しており、とても楽しくて幸せだった。


 しかしそんな生活も4年で終わる。


 綾香は俺を守るために強力なモンスターと戦って死んでしまった。

 モンスターの見た目は人型の細長い体型で、目が身体中にある。

 そしてその姿を見るだけで恐怖に体が囚われてしまう。


 俺はそのモンスターを見たことがなかった。

 そのモンスターは、今まで現れたことのない新種だったのだ。

 しかし本来なら綾香よりもベテランで強い召喚術士が来るまでの時間稼ぎはくらいは出来るはずだったが、先輩召喚術士が来るまで持ち堪えることが出来なかった。


 俺が完全に足手纏いになってしまっていたからだ。

 

 綾香は俺を守りながら戦っていたため、敵は当たり前とばかりに弱い俺を狙って攻撃する。

 当時の俺はあまりにも怖過ぎてその場で震えているだけだった。

 そのせいで綾香は……


 俺の心を憎しみが占領する。


 綾香を殺したモンスターが憎い。

 ダンジョン崩壊を止められなかった召喚術士が憎い。


 そして何より自分が憎い。

 弱く情けない自分が。

 敵の前で震えているだけだった惨めな自分が。

 足手纏いにしかならない無能な自分が。


 俺はその日全てを失った。

 それと同時に俺はあることを知ることとなった。


 この世界は弱肉強食だ。

 弱い者は強者に理不尽に全てを奪われる。

 しかし弱い者は反撃することなどできない。

 弱者は惨めに強者に搾取されながら生きる運命。

 

 だから俺は誓った。


 誰にも理不尽な目に合わされない様に強くなってやる……。

 そして必ず綾香を殺したモンスターに復讐し、綾香を生き返らせる方法を探し出してやると。

 それが達成できないと、この憎しみは消えないような気がするから……



 これが全てを失った俺、八条降魔(はちじょうこうま)の思い出したくない最悪の過去だ。

 そして俺の唯一の生きる糧でもある。



☆☆☆





話し終えた降魔は一息ついて再び地面に寝転ぶ。

 双葉は聞いてはいけない事だったのかもと思い暗い顔をしている。

 そんな双葉を見た降魔は双葉の頭を軽く撫で、びっくりしている双葉に言う。


「そんなに暗い顔をしなくても大丈夫だ。これは過去の話なんだからな。それに俺はその過去を乗り越えるために強くなろうとしているんだ」

「気になっちゃったんだけど、そのお家はどうしたの……?」

「まだちゃんと俺のものだぞ。定期的に掃除にも行っている」

「そうなんだ……」

「ああ、あそこは家族との思い出の詰まった世界でいちばん大切なところだからな」


 そう言って少し悲しそうでいて懐かしむような笑みを浮かべる降魔を見て、双葉はまたしてはいけない質問をしてしまったと顔を強張らせてしまった。

 そんな双葉に降魔は穏やかな笑みを浮かべて言う。


「そこまで気に病む必要はない」

「でも……」

「俺はいいと言っているんだが……。うーん、なら俺に召喚魔術とか俺の知らない魔術を教えてくれ」

「へっ?」

「俺は強くなりたい。だから出来るだけ切り札は持っておきたいんだ。まだ俺にはあまり切り札と言えるものがないからな」


 双葉はこの降魔の話を聞いて、落ち込んでいたことも忘れてしまうほどにツッコみたくなった。


(いや、あれだけ戦えて切り札少ないとかどう言うことよ!? 私でも流石にあれは出来ないわよ!)

 

 双葉は何とか言葉にするのを抑える。

 しかし確かに降魔の提案は双葉にとってもいいものだと思っていた。

 双葉は降魔のことが知りたかったからあんな質問をしただけで、毎日一緒にいれば自ずと分かってくるだろうと考えていた。


「……分かったわ。と言うかこちらの方こそのお願いするわ。——どうか私に戦い方を教えてください」

「こちらこそよろしく頼む」


(これで何個かルールを決めれば俺へのダメージは少ないかな?)


 降魔が提案の裏にこんな考えをしていたとは双葉は全く知らない。


はい、もう気分の悪くなる話は終わりです。

次回からは2人の絡みが増えますね。多分


読者の皆様へ


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ではではまた次話で。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 妹ちゃん不死鳥と契約してたんなら復活出来て欲しいなあ
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