帝国からの問い合わせ
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頑張りま~す。
「ケイ! この後はどうするの? あっ! 今はリンさまだった!」
ジュリアは慌てて周りを見回して、誰かに聞かれなかったか確認をする。
「いや、姿を元に戻したからケイでいいよ! この後だけど……今日はもう解散かな。明日の朝、みんながご飯を食べ終わるくらいの時間に、ニャンニャンに教えに行ってもらうからそのつもりでいてね」
「解散?」
「うん、オレは商業ギルドとか行きたい所があるし、みんなも好きに過ごしていいよ! でも危ない目に合わないように考えて行動はしてね」
「は~い! じゃあ、宿に戻ってみんなでお話でもしようか?」
「「しよう! しよう!」」
四人だけの時に絡まれるのが一番の心配なので、ジュリアの提案にみんなが賛成してすんなり宿に戻ると聞いて少しほっとする。
「じゃあ、オレたちは行くね」
みんなに別れを告げ、オレとニャンニャンは商業ギルドへと向かった。
♦ ♦ ♦ ♦
商業ギルドに着くと何故か周りの視線を感じる。仮面をとり、ローブに着替えたのに何故? ニャンニャンを連れてるせいかな?
「ほ、本日はお越しいただき誠にありがとうございます。どのようなご用件か伺ってもよろしいででしょうか?」
受付に続く長い列に並んでいると、女性のギルド職員に急に話しかけられる。
「えっ? あっ! え~と、買取と色々な登録をして貰おうかと思いまして……」
「なるほど……では個室の方にご案内いたします」
「えっ? 私より前に並んでいる人がいますが……」
そうオレが言うと前に並んでいた人たちも『どうぞ、どうぞ』と笑顔で順番を譲ってくれた。よくわからないが登録の人間は優先されるルールがあるのかもと、みんなにお礼を言って先に行かせてもらう事にする。部屋に入ると『それではギルド長をお呼びいたしますね』といってその職員は出て行った。
『なんでギルド長? それに順番も先にして貰えたし……』
『人族の中にもケイさまの凄さが分かる者がいるのです』
『いや、絶対に違うでしょ』
そんな事をニャンニャンと念話で話していると、先程の職員が男女の二名を連れて部屋に戻って来た。
「大変お待たせいたしました。ギルド長をお呼びいたしました」
慌てて立ち上がり挨拶をする。
「はじめまして、ケイ・フェネックと申します。こちらは私の従魔でとても利口なのでご安心ください」
「お初にお目にかかります。私はギルド長のタイラスと申します。ほ~そちらが噂の従魔ですな。ケイさまについては、既に領主さまよりうかがっております。私どもも全面的にお手伝いをさせていただく所存でございます」
なるほど、それでさっきの待遇というわけか。ギルド長に続き、残りの二人にも自己紹介をされる。もう一人の女性の方は副ギルド長でアイーダさんで、女性職員の方はクララさんというらしい。
「自己紹介も終わりましたので、早速、本題に移させていただきます。登録と買い取りを希望という事でしたが、お間違いないでしょうか?」
「はい、この街での商売の許可と使用権の契約、後はブタネズミの肉を出来れば買い取っていただきたいです」
「ブタネズミ?」
「え~と、毒があって噛まれると麻痺するこのぐらいのネズミなんですが……」
「ああ! 毒ネズミですね。場所によっては呼称がかわるのですが、ギルドでの正式な呼称は毒ネズミとなります。そうですね、毒ネズミの肉は一応は買い取ってはいますが、薬師ギルドが毒の研究に使うので、私どもより高価で買い取ってくれますが、いかがいたしましょう?」
一瞬、良心的とも思ったけどオレは領主からの紹介だから、後で知られたらまずいし割と普通か……。
「あの~毒の処理はしてあるんですが、その場合は……」
「ど、毒の処理ですか……?」
ピンと来ていないようなので、毒が入った瓶を出して説明する。流石に詳しくは話さなかったが、スキルで処理したとだけ伝えた。
「なるほど、ケイさまのスキルで毒を抜き取ったと……なんと! この毒は素晴らしい保存状態です。一体どうやって……」
ギルド長に毒の瓶を渡すと他の二人も目を輝かせてのぞきこんでいる。しかし、三人とも深くは追及してくる事はなかった。
「そんな感じで処理した肉が十匹分ぐらいあるんですが……」
「ケイさま、申し訳ありませんが、どんなに完璧に処理されていても、毒ネズミの肉を好んで食べる者はおりません。それは鑑定で毒がないと証明されても、この現状は変わらないでしょう」
なるほど、食肉としての需要は絶望的という事か……。薬師ギルドに買ってもらえる分、毒を処理しない方が需要があるのかもしれない。捨てるのはさすがにもったいないし、肥料にするとか自分で食べたりするしかないようだ。それに路上で生活している人たちに調理して振舞おうかとも思ったが、毒ネズミの肉を食べさせたと後々、問題になりそうだし、それも今回は止めておこう。
「分かりました。肉の使い道は自分で考えてみます。それでは商売の許可と、商品の使用権の契約だけお願いします」
「かしこまりました。店舗の場所はお決まりですか?」
「え~と、まだ決まっていないです。とりあえず露店からのんびりやろうかと考えているので、今回はその許可だけをいただきたいと思ってきたんですが……」
何故か三人とも驚いた顔をして、何やら意味ありげに視線を交わした後、すぐにギルド長は咳ばらいをして話し出した。
「な、なるほど、それはすぐにでも可能ですが……領主様からはケイさまの店舗の確保を優先的に手助けするようにと、仰せつかっているのですが……」
「えっ?」
何か裏がありそうだけど、店舗の確保を手伝ってくれるのは正直、有難い。でも借りは出来るだけ作りたくないしな……。
「領主様のお話では、ケイさまのこの領への貢献に対しての恩賞として、店舗ならびに土地の授与をするとの事でした。ですので開店の準備にともなう料金もすべて領主様が持つとの事でした。気に入った場所がございましたら、すぐにでもそこの住民を立ち退きさせますのでお申し付けください」
「いやいや、人を追い出してまで、店を持ちたいとは思っていないです。では一応、大通りに一番近い建物か土地を探していただけますか? もちろん、住んでいる人がいない所でお願いします」
それを聞いて三人ともほっとしているように見えた。
「かしこまりました。クララ! 資料をお持ちして!」
「あの~その話を私は直接聞いていないので、確認が取れてから話を進めるというのではまずいですか?」
「それでしたら、こちらに!」
ギルド長が取り出したものは、領主さまのサインと印の押された指示書だった。それを見て、これはもう確定している事なのだと理解して受け入れる事にした。その後、クララさんが資料を取りに行っている間に、使用権の話を進めていく。いくつかの商品をテーブルの上に並べていき、説明が書かれた紙もギルド長に渡す。
「これは中々興味深い物が並んでいますな。そして、この紙も素晴らしい! 既にフェネック商会の商品に関する問い合わせが、帝国の商業ギルドからのものも含めて、何件かきているようなのですが、これだけの商品を取りそろえているなら頷けます」
「帝国ですか?」
「はい、商品の登録がないと知ると、フェネック商会の商品を自分の商会でも作りたいので、是非、連絡が取りたいという事でした」
商品? 何か売ったっけ?
「特に売った記憶がないんですが? 帝国にも行った事がないですし……」
「多分、帝国に帰る隊商がケイさまが商売をした町などで、噂を耳にしたのではないでしょうか?」
そういえばオレはモレト村で、隊商が来るのを待ってたんだった。モレト村で聞いたのかな?
「確かサンダルだけでも、作りたいといっていたそうです」
サンダル? やっぱりモレト村か……。
「ああ~! それなら身に覚えがありますね! でもその人たちも登録されていないんだから、自分たちで登録すれば良かったのでは?」
「そんな事をするのは余程の命知らずか、権力を持っているかのどちらかでしょうな……。相手が貴族だった場合にどんな報復をされるか……」
「なるほど……意外と賢明な人たちだったんですね。じゃあ、その商品も登録してあげた方がいいか……あの、モレト村で扱った商品も取ってくるので、少しお待ちいただけますか? 直ぐに戻ってきますので、その間にそちらの商品は手に取っていただいても構わないので、ご覧になっていて下さい」
「かしこまりました。それでは待っている間に拝見させていただきます」
『ニャンニャンはそこにいて何を話しているか聞いておいて』
『分かったのです』
オレは商業ギルドを出て細い路地に入ると、ひと気がないのを確認して【秘密の部屋】へと入った。




