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無言の圧力

ブックマーク・コメント・評価・いいねありがとうございます。

頑張りま~す。


あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


 まさか本当にお約束の展開で冒険者に絡まれるとは……。一見、冷静な感じを装っていたが、胸の鼓動が早鐘を打つように早くなり、その声は震えていた。しかし、仮面をつけていたおかげでほとんどの人間には気付かれていなかった……と思う。


「怖かったね! わたし、どうしたらいいか全然わからなかった……」


「わたしも……怖くて動けなかった」


「でもケイに掴みかかった相手が勝手に地面に倒れて……あれも魔法?」


「そうそう! あれは凄かったね!」


 ギルドから出てしばらくすると、全員が急にスイッチが入ったかのように喋りはじめる。


「あれは魔法じゃなくて、合気道っていう武道…………何て言えばいいかな? 素手で戦う技術かな」


「へ~っ! 凄いね! ケイは何でもできるんだね」


「ん~っ……オレのじいちゃんが道場をやってたから、たまたまだよ! その内、みんなにも教えてあげるよ!」


「「やった~!」」


 戦う技術とか野蛮だからと誰かしら嫌がるかと思ったのだが、驚いたことに演技ではなく全員が本当に嬉しそうにしているように感じた。


 宿に着き女将さんにもう二人分の部屋があるか尋ねたものの、オレ達の姿を見た女将さんが固まってしまったので、狐の面を外してもう一度、尋ねなおす。


「なんだ! あんたかい? 驚いたじゃないか! 残念だけど他の部屋はもういっぱいだね」


「最初の二人と同じ部屋に一緒に泊まるのは無理ですか?」


「う~ん! それだとベッドの数が足りないだろう? それにそういうのはうちではやってないんだけどね……」


「ベッドも二つのままでいいですし、料金も最初の二人と一緒でいいですよ」


「――それならいいよ。食事付だったね」


「はい、お願いします」


 清々しい程の変わり身の早さで了解をもらえたので、料金を支払い全員で部屋に向かう。


「ベッドは二人で一つだけど平気だよね?」


 四人はベッドで眠れるだけマシだと言って問題にもしなかった。


「え~と! この後、お貴族さまの所に荷物を運んでもらうんだけど、その前に依頼の分け前ね! ネズミの肉は引き取ってくれなかったから、太陽草の分だけだけど……」


 そう言って全員に分け前を渡していく。


「ありがとうございます! えっ! こんなにいいんですか?」


「うん! 六人で均等に分けたから、それで一人分だよ! はい! ニャンニャンも!」


「あたちも貰えるのです?」


「一緒のパーティーなんだから当たり前じゃん! それに人族のお金もお友達と遊ぶ時に必要になるかもしれないよ」


「にゃっ! なら頂くのです。ありがとうなのです」


「あの~返済分はどうしたらいいでしょうか……?」


 マヤの質問に他の三人も借金を思い出し、分け前を貰って嬉しそうにしていた顔が真顔にかわる。


「そうだね! ギルドの登録料を優先して返して、オレの方はもう少しお金に余裕が出来てきてからでいいよ。それとも、ギルドの登録料もオレが貸そうか? 支払いはまとめた方が楽だよね?」 


 結局、全員のギルドの登録料も、オレが貸すという事で話がまとまった。


「じゃあ、そうと決まれば今からみんな払ってきちゃいなよ! オレは運ぶ荷物を用意しとくから! ニャンニャンもついて行ってあげて」


「了解なのです!」


 オレはみんなを見送ると『秘密の部屋』に入り、荷物の用意を始める。まずリアカーを作り、パトリシア様用のドレスやメイド服の見本などを種類別に箱に入れて積んでいき、後は何かを作った時に不審に思われないように、様々な材料ものせていく。


「リアカーは城の近くで出すとして、みんなが帰ってくるまで宿の部屋で何か作って待つか」


 『秘密の部屋』を出てしばらくすると、大きな足音と共にドアが勢いよく開けられる。そして肩にニャンニャンをのせたジュリアを先頭に、全員が駆け込んできた。


「支払ってきたよ! なんかギルドの中が酔っ払いばっかりだったから、絡まれないうちに走って帰って来たよ!」


「えっ? もう酔っぱらってたの?」


「うん! 凄かった! ところでケイは何を作ってるの?」


「バッグチャーム……え~と……今作っているのはバッグとかにつける人形かな」


「わ~っ! それってニャンニャンでしょ? かわいい~!」


「それより大きい人形もあるのです」


「きゃ~かわいい! いいな~私も欲しい!」


 ニャンニャンが影からだした二体のぬいぐるみに女の子たちが群がる。 


「駄目なのです! 一つはあたちので、もう一つはロージーにあげるのです」


「ロージー?」


「あたちのお友達なのです」


「へ~! そうなんだ……ニャンニャンのお友達も貰えるんだね……」


 みんなの視線がこちらに向き、無言の圧力をかけられる。


「わかったわかった! 一人一体ね……」


 圧に負け結局、ぬいぐるみとチャームを全員にあげる事となった。まあ、みんなが喜んでいたからいいか……。 


「じゃあ、そろそろ荷物を届けに行こう! そのうち、みんなだけでも行けるようになって欲しいから、どんな感じかだけはおぼえてね」


 元気な返事を聞き、四人を連れて城へと向かった。





 ♦ ♦ ♦ ♦





 執事兼城内管理を担当している家令でもあるリオス・マルドラの下に、メイドが報告に現れる。


「リオス様、門番から連絡がありまして、フェネック商会を名乗る人物が荷物を届けに来たそうなので、対応をお願いしたいとの事です」 


「分った! 今すぐ行くと伝えてくれ」


 ケイさまの情報を仕入れる絶好の機会と門に向かうと、その期待に反して話が出来るかも怪しい奇妙な面をつけた者たちが、荷車を囲むように立っていた。

 

「初めまして、フェネック商会のリンと申します。この度はケイさまへの荷物をお届けに参りました」


 代表の者が面を外し挨拶をされる。その美しさを目の当たりした門番たちが思わず感嘆の声を上げる。なるほど、あの美しさを隠すための仮面という事か……美しいというのは良い事ばかりではないという事なのだろう。そうなると他の四人の容姿も気になる所だが、残念ながらその四人が仮面を外す様子はなかった。


「あの~」


 挨拶をしたが反応をしない私に不安をおぼえたのだろう。慌てて謝罪と挨拶をすませる。


「こ、これは失礼しました。わたしくしは家令のリオス・マルドラと申します。こちら全てが、ケイさま宛の荷物という事でよろしいのですかな?」


「はい、こちらが積んである荷物の一覧になりまして、箱は全部で十二箱ございます。荷物がある事を確認の上で、こちらの用紙にサインをお願いいたします」


「荷物の一覧ですか? これは便利ですな」


 用紙の質もさることながら、荷物に一覧をつけるというのは実に素晴らしい考えだ。横領や紛失のごまかしが確実に減らせるだろう! はっ! だからこの高品質の紙をつかっているのか! こんな高級な紙なら簡単には偽造は出来ないだろう。なんと抜け目のない……。


「し、失礼しました。は、箱は開けてみても?」


 また、不安そうにみている事に気付き慌てて話を進める。

 

「構いません! 箱にも中身がかかれた紙が貼ってありますので、それをみると確認も楽かと思います。それからこの仮面と同じ絵柄の紙が箱の蓋の部分に貼られていますが、封印札と言いまして開封済みか未開封かを判断する為に貼られておりますので、今後の為に是非おぼえておいて下さい」


「……なるほど! 輸送中の盗難以外にも毒物の混入も防げるというわけですな……これはこの国では浸透していない方法です。まだ登録してないのであれば、輸送ギルドに権利を奪われる前に早めに登録した方がよろしいですぞ」


「…………ケイさまにそう伝えておきます。有益な情報をありがとうございます」


「いえいえ! では確認できたものから荷物を積み替えさせていただきます。おい!」


 何人かの兵士に荷物の積み替えを手伝わさせ、自分は中身の確認を済ませていく。やはりこの一覧表と箱の中身が分かる仕組みは、作業時間の短縮が出来てかなり便利だった。この商会は商品だけにとどまらず、様々な知識も持ち合わせているようだ。どうにかしてこの商会と独占的な契約を結べれば、我が領はこれまで以上に繫栄することは間違いない。一体どうすれば……。


「…………リンさま! この後、お時間がございましたら、パトリシア様に旅の話をお聞かせ頂けないでしょうか?」


「……申し訳ございません! この後、貴族さまとのお約束がございまして……」


「(き、貴族……)そ、そうですか! それならば仕方がないですね」


「では! 私どもはこれで失礼させていただきます」


「いつでもいいので、近いうちに商品を見せに来てはいただけないでしょうか? パトリシア様はかわったものがお好きですので、きっと喜ばれるはずです」


「申し訳ございません。そのようなお話は、ケイさまに直接ご相談するのが一番だと思います。すべての商品の権利はケイさまのものですので……」


「な、なるほど……確かに……忙しい所を引き止めてしまい申し訳ございませんでした。こちらは少ないですが……。では、道中お気を付けて!」


 心付けを受け取ると、彼女たちは頭を下げて去って行った。どうやら情報集めは簡単ではなさそうだ。



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