表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/158

運の悪い新人メイド

ブックマーク・コメント・評価・いいね・感想ありがとうございます。

励みになりますニャ。


 部屋の外に控えていたメイドのアメリアさんを、部屋に招き入れメイド服について色々聞かせてもらった。アメリアさんは特に厳格なルールのようなものはないと言っていたが、話を聞いていると服装は奥様より派手にならないようにするとか、スカートの丈は長いものにしなくてはいけないなど、いくつもの暗黙のルールはあるようだ。ミニスカートの夢は潰えてしまったが、別にオレとしては全員分のメイド服を作ってあげるのは構わないと思っている。


 でも雇い主の男爵夫妻の頭越しに話を進めるのは、余りよろしくないかもしれない……。お金も沢山持ってそうだし何とか納得させて売りつけるか……。服は御使い様に貰った反物があるからいくらでも作れるけど、靴は皮がいるな……。スカートの丈が長いから靴はみえないっちゃみえないが、オレ的にはメイド服がお揃いならギリセーフ……いや、靴もお揃いがいいか……。


「そういえば、午前と午後で着る服の色が違うんですよね?」


「はい、できるだけ午後は黒に近い色で、午前中はそれ以外となっています」


 午前中は白が決まりではなかったのか。まあ、とにかく一人二着は必要って事だな。エプロンと帽子も洗濯した時用に同じ数だけ必要か……。


「なるほど、午前中の服の色は決まっていないと……その帽子はかぶらないといけないんですかね? 髪が邪魔にならなきゃいいだけなら、ホワイトブリムでも良さそうだけど」


 アメリアさんは確かモブキャップだったか、ベレー帽を緩やかにしたようなデザインにフリルをつけた帽子を被っていた。これはこれで可愛いが……。


「ほわいとぶりむ?」


「え~と、カチューシャ……作業の邪魔にならないように、髪の毛を押さえる頭飾りにフリルがついている物です」


「帽子の代わりに頭飾りをつけるとなると、メイド長に聞かないと分からないです」


「そうですか、じゃあ今度パトリシア様とメイド長に相談してみますね。口で言うだけじゃ想像がつかないでしょうから、ちょっと待ってて下さい」


 オレは紙と鉛筆を取り出して、メイド服のデザイン画を描いて行く。ニャンニャンも気になったのか、オレの膝にのぼって何を描いているのか眺めている。


「可愛いネコちゃんですね。随分慣れていますが小さい頃からお育てになられたのですか?」


「いえ、つい最近仲良くなりました」


「まあ! それなのにそんなに仲良しに!」


『ほら、ニャンニャン可愛いって言われてるよ』


『大丈夫なのです。ネコと言われても気にしないのです』

 

『えらい! えらい!』


 左手でニャンニャンを撫でながら、二枚のデザイン画を五分もかけずに仕上げていく。


「出来ました。アメリアさん、ちょっと見てもらっていいですか?」


 アメリアさんはデザイン画を受け取ると目を輝かせて絶賛してくれた。


「今見てる方が、シンプルなワンピースとエプロンドレスの組み合わせですね。頭に付けているのが先ほど話した頭飾りです」


「ケイ様は絵の才能もおありなのですね。このような服が毎日着れたらのなら、仕事も楽しくなりそうですね」


 何か期待値がもの凄く上がってしまった気がする。これって駄目だった時に凄いがっかりさせるのではないだろうか。何としても許しを得なくてはならなくなってしまった。期待だけさせて許可されませんでしたでは、余りにも可哀想だから結果がどうあれ、個人的にアメリアさんにはプレゼントする事にしよう。


「もう一つの方も見てもらえますか? そっちの方はパフスリーブ……え~と肩の部分を膨らませて、少し高級感が出るように仕上げようと思っています」


「わ~素敵です。是非着てみたいです」


「一応、色は揃えたいので許可が下りたら、皆さんの意見をお聞きしたいですね。アメリアさんには、ここまで話しておいてアレなんですが、許可が下りるまではこの事は内緒にしてもらえますか? 期待だけさせて駄目だったら申し訳ないので……」


「……そ、そうですよね。許可が下りるか分かりませんし……わかりました。決して誰にも喋りません」


「ありがとうございます。後はサイズですけど……S、M、Lの三種類を作って試着してもらうのがいいかな……」


「エスエムエル……?」


 この世界はアルファベットは無いんだった。それを説明しようとした瞬間、部屋のドアがノックされ食事の準備が出来た事を告げられる。


「は~い! 今行きます。それでは許可が下りたらアメリアさんにもお話しますね。お話を聞かせていただいて、ありがとうございました。これ少ないですけど受け取って下さい」


「こちらこそ、ありがとうございました。私は特に何もしていませんが、こ、こんなにいただいてしまって、よろしかったのでしょうか?」


 やっぱり大銀貨は多いよね? でもあげたものを返してって言えないし……。早く相場が知りたい……。


「構いません。これからしばらくお世話になるのでほんの気持ちです」


 それを聞き、アメリアさんは深く感謝してくれたようだ。

 

「本当にありがとうございます。何かございましたら、いつでもお声がけして下さい。それでは食堂までご案内致します」


『ニャンニャンの席は多分無いけどどうする?』


『あたちはこの部屋で待っているのです』


『わかった! 大人しく待っててね』


『分かっているのです。子供じゃないのです』


『は、はい、失礼しました。干し肉と果実水を置いておくから、お腹が減ったら食べてね』


『ケイ様の干し肉は美味しいから嬉しいのです。ありがとですニャ』


 アメリアさんは部屋の外で待っていたメイドさんにお茶の片づけを指示すると、手燭の灯りで廊下を照らし『こちらです』と行く方向を教えてくれた。一応、もう一人のメイドさんとも軽く会話を交わして、渡すものを渡しアメリアさんの後に続く。銀貨を渡しただけでもかなり嬉しそうだったので、チップは銀貨でもいいのかもしれない。


「ありがとうございました」


 大きな声に振り返ると大分離れていたので、廊下に浮かぶロウソクの光だけしか見えなかった。





 ♦ ♦ ♦ ♦





 今回のお客さまは、とてもお金持ちの女性だとみんなが噂をしていました。新人の私はお使いを頼まれて街に行っていたので貰えなかったのですが、みんなはあかぎれに効く塗り薬をお土産として貰ったようです。そう私はいつも運が悪いのです。そのお客さまは使用人の悩みである手の荒れやひび割れを気遣ってくれた所から、メイドの経験があるとも噂されていました。もちろん、私たちとは違って生きていく為にメイドになったわけではなく、大貴族さまの社会勉強の為にですが……。


 そのお客さまの部屋の外で控えているアメリアさんに、食事の準備が整った事を知らせに行けと言われて行ってみると、そこにはアメリアさんの姿はありませんでした。椅子は置いてあったので部屋は間違いないようです。私は色々とこの部屋で間違いないか確認をした後、一度大きく深呼吸をしてドアをノックし、声を掛けてみました。


「お客さま~! お食事のご用意が出来ました~」


「は~い! 今行きます」 


 とても優しそうな声に少しホッとします。でも相手はお貴族さまなので、失礼がないように気を引き締めなくてはなりません。


「ご苦労様、私は今からケイ様を食堂にご案内するから、お茶を片付けてちょうだい」


「はい、分かりました」


 しばらく待っていると部屋から出てきたのはアメリアさんでした。その後ろに黒い塊を撫でている黒髪の綺麗な女の子がみえます。あれがお客さま? 部屋には他に誰もいないので多分そうなのでしょう。部屋からその女の子を出るのを頭を下げて待ちます。


「あれ? さっき来ていなかったですよね。ケイ・フェネックと申します。しばらくお世話になる事になりましたので、よろしくお願いします。あと部屋に小さなお友達がいるんですが、意地悪しなければ優しい子なので怖がらないであげて下さい」


「ひゃい! おね、おね、お願いいたします」


 話しかけられるなんて夢にも思っていなかったし、更には丁寧に挨拶をされ塗り薬と銀貨を渡されるとも思っていなかった。混乱してしまい自己紹介とお礼を言い忘れてしまいました。ボーっと遠ざかる二人の背中を眺め見送っていたが、ふと我に返り大きな声でお礼を言う。振り返って手を振ってくれたように見えたが、暗くて良く分からなかった。





 ♦ ♦ ♦ ♦





「まさかお声を掛けてくれるなんて思わないじゃない! 挨拶もちゃんとできなかったし不興を買っていたらどうしよう……とても優しそうな方だったけど、お貴族さまだし……」


 クビになってしまったらどうしよう……。そんな事を考えているとベッドの上の黒い塊が動き出した。


「ひっ!」


 そういえば部屋に何かいるといっていた気がする。息を殺してその生き物を凝視していると、こちらにその生き物が顔を向け、興味がないと言わんばかりに大きな欠伸をする。何の事は無い、変わった毛色のネコだった。ネコなら昔に住んでいた村でよく見た事があった。人懐っこくてそれほど怖くなかったはず。 


「なんだネコか! あなたは良いわね! 素敵なご主人様の下で暮らせるんだから、変わってもらえないかしら?」


 それまでこちらに興味なさそうに寝ていたネコが、顔を上げてこちらに顔を向ける。


「何よ! あなた言葉が分かるの? まさかね……」


 こんな事してる場合じゃなかったと、急いでお茶の片づけを始める。


「あっ! 残ってる。もったいない」


 残っていたカップのお茶を飲み干す。するとそのネコがギョッとして体を起こす。


「何よ! どうせ捨てるんだから飲んでも一緒でしょ。あら? これは何かしら? 女性の絵? それに干し肉と……この匂いは果実水?」


 それらを触ろうとした瞬間ネコがテーブルに飛び乗り、私の手をピシッと払いのける。


「痛っ! 何するのよ! 片付けられないでしょ」


「嘘なのです。どうせ食べるつもりなのです! これはあたちのだから触らないで欲しいのです」


「えっ?」


 どうやら私は夢を見ていたようです。そもそも運が悪い私が銀貨を貰ったり、塗り薬を貰えたりするはずがなかったのです。


 






〇お金

銅貨  10円

大銅貨 100円

銀貨  1000円

大銀貨 10000円

金貨  100000円

大金貨 1000000円

白金貨 10000000円


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ