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レンドールの街

ブックマーク・コメント・評価・いいね・感想ありがとうございます。

ありがとうニャ。

 

 馬車に揺られウトウトしていると、何やら話し声が聞こえてきた。何事かとぼんやりした意識で窓の外に目をやると、相変わらずの木だけしか見えない代り映えのしない景色で、馬車の中に視線を戻すとセレスさんと目が合った。


「ケイ様、もうじきレンドールの街に到着いたします」


「あっ! そうなんですね!」


 この人たちのもうじき、もうすぐは感覚が違いすぎて当てにならないからな……。そう思っていると窓の外一面に黄金色の小麦畑が広がり始めた。馬車の進行方向にも城壁が見えてきたので、どうやら本当に街に近いらしい。


「かなり立派な城壁ですね! やっぱりこの辺も魔物が多いんですか?」


「城壁周辺の魔物については騎士団や冒険者が、毎日駆除していますので問題ありません。どちらかというと侵略に備えての役割の方が大きいですね」


 ノア様にそう聞かされて、やはり戦争が身近なものだと気づかされる。どうやら魔物よりも他国、蛮族、近隣の領主などを警戒しなくてはいけないらしい。現在は近隣の領主とは友好関係を結んでいるが、過去にはお互いの領地と領地の境界線の場所について意見が対立し、ひと悶着あったそうだ。


「ん? 蛮族も危険なんですか?」


 蛮族って聞いたことはあるけど、実際どんな民族なのかはよくわからない。文明が進んでいない先住民とかか……?


「あいつらは人食い、生贄、その他にも……言葉に出来ないような事を何の躊躇もせず行える奴らです。畑仕事をしていた者が過去に何人も攫われ、戻ってきた者はいません。言葉も通じないので、人間の見た目をした魔物のようなものです」


『どうしたのです?』


『ああ、ごめんごめん。驚いて掴んじゃった』


 蛮族のやばさに無意識にニャンニャンの背中を掴んでいた。謝ってナデナデを再開するとニャンニャンはまた眠りについた。


「救出には行かなかったんですか?」


「奴隷一人の為に騎士団は動かせません」


「な、なるほど……」


 確かにこの世界の価値観ではそうなるか……。城壁の外にある畑は危険だから奴隷にやらせているのだろうか? もしかしたら、今見えている畑で働いている人たちは全員奴隷なのかもしれない。やはり、奴隷と聞くと強い忌避感というか何とも言えないモヤモヤした気持ちになる。それは奴隷のような制度はない方が良いと思っていても、今のオレには何も出来る事がないからなのかもしれない。





 ♦ ♦ ♦ ♦



 


 レンドールの城壁はベールの街とは比べ物にならないほど立派だった。さすがこの領地の家令だけの事はあって、その城壁の門もすんなりと通された。街はというと大通りには店が立ち並び、城壁の中は所狭しと高い建物ひしめき合っていた。『城壁の中の土地には限りがありますから』と笑うノア様の説明によると、人が増えすぎた為、城壁内の土地が足りなくなり住居用に三階、四階と増やす事を繰り返した結果、高い建物が多くなったそうだ。これだけ密集していると火事が怖いけど、石造りだから平気なのだろうか?


『これが人族の街……』

 

 ニャンニャンも座席の上に二本足で立ち上がり、窓のふちに両手をかけて一緒に窓の外を眺めていた。


『後で一緒に街を散策してみようよ』


『楽しみなのです』


 ニャンニャンは尻尾をピーンと立てて、ゴロゴロとのどを鳴らしている。ネコは飼った事がないからわからないけど、これは嬉しい時の仕草なのだろうか? 小動物と一緒にするなと怒るだろうから言わないけど、ネコみたいだね……。


『あっ! ケイ様、人族が檻に入れられているのです』


 確かに檻をのせた荷馬車には多くの人がのせられていて、首から木札を下げていた。


「ノア様、あれはもしかして……?」


「あれですか? 奴隷商人の馬車ですね! 今は奴隷が昔ほど高くないので、ご興味があれば見ていきますか?」


 急いで断ったが興味はあったので色々聞いてみた。路上で売っている奴隷は大抵オークションの売れ残りで、かなり安く買える場合があるらしい。首から下げてる木札にその奴隷の情報が書かれているので、それを参考にして客は奴隷を買うそうだ。しかし、奴隷を買い慣れている人間は、木札の情報を信用しないのだという。詐欺まがいの商人も多く、買う時は裸にして隠れた場所に傷や病気がないかを確認して、奴隷とも話しをするのが失敗しない奴隷の買い方だそうだ。いや、買わないけどね……。


 奴隷の値段の相場は大体百万円から四百万円ぐらいだそうだが、見た目が美しかったり何らかのスキルを持っている奴隷は、値段が大きく跳ね上がり何倍にもなるらしい。そういう奴隷は大きな奴隷商に行くか、オークションに行かない限り滅多に買えないそうだ。


『人族は野蛮なのです』


『確かに……』


 妖精族から見たら人間は同族を売り買いしてるわけだし、野蛮にしか見えないと言われても反論できない。


『でもケイ様は違うのです。ケイ様はあたちの命の恩人で優しいのです』


『ありがとう、でもやっぱり悪い人間もいるのは確かだから気を付けていこうね』


『あい』


 ふと見るとまたセレスさんと目が合ったので微笑んでおく。


「ケイ様はまるでその猫と心が通じているみたいですね」


「あはは、仲良くなりました。そうそう、名前はニャンニャンにしましたので、そう呼んであげて下さい」


「そ、そうなのですね! 私はセレスといいます! よろしくね! ニャンニャン」


 念話がバレたのかと思ったが、そこまで深い意味はなかったらしい。


「あら、言葉が分かるのかしら? 今、頭を下げたましたよね? あなたはお利口さんなのね」


『ちょっとニャンニャン! やりすぎないでよ』


『挨拶をされたら返すのは当たり前なのですよ』


『ん~~っ! まあ、そうか』


 それ以上何も言えず、ニャンニャンの頭をナデナデする。


「あの~私も撫でてもよろしいですか?」


「えっと……彼女が許可するなら構いませんが……」


『あたちは別に構わないのです』


 ニャンニャンはそう言うとセレスさんの膝に飛び乗り、ナデナデを満喫する。それを見ていたノア様がおもむろに口を開く。


「あの~ケイ様……」


「どうかしましたか?」


「…………わ、私も撫でてよろしいでしょうか?」


 まさかのネコ好き? ニャンニャンに視線を向けて確認を取る。


『オスはケイ様以外は嫌なのです』


「ノア様……男性は嫌だそうです……」


 ノア様は笑って納得してくれたが、かなりのダメージを負ったようで、その顔にはショックが隠しきれていない。なぐさめる事も出来ず、その後もしばらく馬車に揺られ大通りを進むと、高い建物が減り始め高台にそびえ立つ城が見えてきた。男爵って一番下の爵位のはずなんだけど、城に住めるものなの?


「お城……?」


「見えてきましたか? その見えた城が領主さまの住まいになります」


 ひょえ~! やっぱり住んでるんだ~。貴族というのはオレの想像以上にお金持ちらしい。



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