表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/152

死の大地の正体


 オークが腰に巻いていた布を地面に叩きつけて手を浄化していると、ゴブリンが心配そうに近寄って来た。


「ケイ様、どうかなさいましたか?」


 ゴブリンたちに、この布が汚いという感覚はないらしい。一応、布も浄化して拾っておく。


「な、何でもないです! オークの肉をみんなで分けましょう。あと戦利品も!」


「とんでもございません! 私どもは何もしていません! すべてケイ様の物です」


「え~! この量の肉はさすがに多すぎるから、せめて半分ぐらい貰ってもらえないかな? 戦利品も使わなそうだし必要ならどうぞ!」


「我々をオークから救ってくださっただけでなく、このような施しまで…………ケイ様、どうかこの鈴をお持ち下さい」


 かなり凝った装飾で魔石が埋め込まれた金属の鈴をゴブリンから手渡される。


「えっ! いいの? 何か貴重な物なんじゃないの?」


「その鈴を魔力を込めて鳴らして頂ければ私が召喚されます。時間には制限がありますが、どんな些細な事でもお呼びいただければ、この命にかえましてもお役に立てるよう全力を尽くします!」


 この鈴は二つで対をなす物で装飾が豪華な方の鈴に魔力を込めて鳴らすと、もう一方を持った相手の鈴が鳴り召喚の求めが届き、受諾されると召喚できるらしい。 


「ありがとう! ありがたくいただくね! でも命は懸けなくていいよ。どうしても助言や知恵が欲しい時に呼ばせてもらうね! その時はよろしくね!」

 

 ゴブリンたちは何故か驚いた顔をしていた。


「あれ? 何か変な事言っちゃった?」


「い、いえ! これから我々はケイ様のしもべとして、命を懸けてお使いさせていただきます」


「えええ~~~! そういう意味ならこの鈴は受け取れないよ~! しもべとかじゃなくて友達になろうよ!」


 最初のうちはゴブリンたちもケイ様と同等の関係など考えられないと、受け入れてくれなかったが、それなら鈴は受け取らないと言うと渋々ながら承諾してくれた。




 ♦ ♦ ♦ ♦




 当初の目的を思い出し、あの場所で何をしていたのかゴブリンに質問してみる。


「川で肉を洗わされていました」  


「へっ? 肉を洗う?」


 なんでもあの川で肉を洗うと臭みが消えて、肉が柔らかくなるらしい。何、その不思議な川? というか臭みとか気になるんだ……。


「よろしければ、オークの肉も川の水で処理いたしますが、いかがいたしましょう?」


「自分の分は自分でやるからいいよ! でも見に行ってみたいかも」 


「わかりました! では戻りましょう」


 最初に出会ったゴブリンの指示で、ゴブリンたちが荷物を運んで行ってくれた。その後を、二人でついて行く。


「そういえば何て呼べばいいかな? ゴブリンさんだと、みんなゴブリンさんだし……」 


 聞いてみると一人一人に名前はないそうで、稀に人間に雇われた時につけてもらえる事があるそうだ。そう話をするとゴブリンはソワソワし始めた。もしかして名前つけてもらえると期待してる?


「む、無理だよ! ネーミングセンスがないことで有名なんだから!」


 この世の終わりのような顔でがっかりしているのをみて、可哀想になってしまい文句を言わない約束で名前を付けることになった。え~と、ゴブリンだからゴブさん、ゴブちゃん! これだと他のみんなも振り返るな……。ミドリ色だからグリーン! ミドリ! ミドリン! あっ! もうミドリンでいいんじゃないか? 


「ミドリン! ミドリンでどうかな?」


 シーン! と聞こえてくるくらい静まり返ってしまった。気に入らなかったかと思ったが、感動しているだけだったらしい。


「ミドリン! 何と素晴らしい響きなのでしょう! ありがとうございます! ミドリン……」


「き、気に入ってもらえたなら良かったよ! そういえば、布って渡しちゃダメなんだっけ?」


「そ、それはブラウニーです……」


 何かの本で衣類を渡すと妖精の国に帰ってしまうって読んだ事を思い出して、聞いてみると人違い……いや、妖精違いだったらしい。若干不服そうにも見える。


「な、何かごめんね! 妖精とかいない所で育ったから、ほとんど知らないんだよね」


「しかし、ケイ様は妖精の言葉を……」


「それはスキルのおかげで、色々な言語が理解できるから話せただけなんだよね。知らない事が多いから今度機会があったら色々教えてよ」


 そう言うと納得したのか機嫌が直ったようにみえた。その後は妖精について聞きながら最初の場所まで移動した。




 ♦ ♦ ♦ ♦




「近くでよく見ると白ではないんだね。灰色っぽいというか……。じゅ、重曹? この石から作れるの?」


 最初の場所に着き、鑑定してみるとこの一帯の鉱石はトロナ鉱石という名前だった。この鉱石で重曹が作れるらしい。


「これ少し貰っていっていいかな?」


「もちろんです! いくらでもお持ち下さい」


 重曹があればお風呂セットが作れるな。香りをつけるのにハーブか花が必要だけど、村の人に頼んでおいたから今日の風呂前には作れそうだ。あっ! 神父さまたちが心配するからそろそろ帰らないといけないな。


「ミドリン、そろそろ帰らなきゃ」


 他のゴブリンたちが凄い勢いで振り返る。ミドリンはそれを満足そうに見回しこう告げた。


「私はケイ様に名前をいただき、ミドリンとなった。これからは族長もしくは、ミドリンと呼んでくれ!」


「「「おおおお~~」」」 「ミドリンさま~」 「ミドリン族長~」


 ゴブリンたちから歓声が上がる。族長? やっぱりゴブリンのリーダー的存在だったんだ! 


「それでは荷物は私どもがお運びいたします」


「自分で持っていけるからいいよ! 肉を少しもらえたら、あとは全部みんなで分けてよ! でも肉はともかく戦利品はどれもサイズ的に合わないか……。よかったら俺が加工するけど、どうする?」


「加工ですか? ケイ様がする事なら異論はございません」


 そう言われると何か引っ掛かるけど、今回は時間もないし加工してしまおう。


「腕輪は一つしかないし、族長のミドリンでいいよね?」


 そう言うと腕輪のサイズをミドリンの腕に合わせて作りかえた。腕輪は一度球体となり、また腕輪の形になった。ゴブリンたちからはどよめきが起こる。


「あっ! やべっ!」 


 鑑定してみると腕輪のレア度と効果が、何故か変わってしまっていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ