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私が聖女? いいえ、そもそも男です。  作者: 東雲うるま


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昼食


 畑仕事も一段落したのでみんなで教会に向かう。


「魔術師さま、家令のノア様が来るので、昼は一旦、家に帰りたいのですが……」


 そうロイに言われたので、今日はもう手伝ってもらう事がないので来なくて大丈夫です! と遠回しに来るなと伝えたつもりが、残念ながら伝わらなかったようだ。父親に叱られるの一点張りに、結局こちらが折れ午後からも来ることに決まった。急いで走って帰るロイの後姿をみて溜息を吐く。ノーと言えない日本人が出てしまった。


 一部始終を見ていた神父さまが話し出す。


「ケイ様、レンドール男爵との面会や客人としての滞在などの依頼があると思います。望まないのであれば、私どもが対処いたしますが……」


 神父様の話では、この後、ここの領主のレンドール男爵の家令が依頼をしに訪れるらしい。貴族か…………。面倒臭いけれど教会に間に入られても、揉めるのが目に見えているので丁重に断る。しかし神父さまは、まだ何か言いたそうにこちらを見ている。 えっ? まだ何かあるの? というか領主に意見できるほど偉いの? 疑問は残るが、一応、平気だと念を押して話題を変える。


「本当に会うくらいなら別に私は構わないですよ。そんな事よりもお昼は何にしましょうね?」

 

 そう聞くと、シスターが口ごもりながら答える。


「本来なら私が作らなければならないのは重々承知していますが、私ではケイ様の満足する料理が作れるとは到底思えません。せめてお手伝いをしたいと思ったのですが……」


 朝ごはんを食べてそう思ったようだ。お手伝いを提案しようと思っても、秘伝だとか言われて厨房に入れてくれないし、どうしたらいいか分からなくなってしまったのだろう。そんな事より満足できなかったら、ちゃぶ台をひっくり返すような人間に見られているのか……。もてなそうとしてくれる人の料理に、ケチ付けるような真似は絶対にしないんだが、そう見えているのならちょっと悲しい。大抵のものは残さず食べるよ! ……ゲテモノじゃなければね。


「じゃあ! お昼は私が作りますよ。シスターにはお手伝いをお願いしていいですか?」


「よろしいのですか?」


「ええ、今から作ろうと思っている料理は、材料と調味料に私が作った物を一部使うので、それらがなければ作れないものなので見られても特に問題はないです」


 それを聞いてシスターは少しホッとしたように見えた。この村ならではの料理を食べてみたかったが、硬いパンと塩が少し入った野菜のスープが主な食事らしい。多分、食文化自体が発展していないので、名物料理といえるものはないのだろう。そう考えるとここの人たちは何が楽しみなんだろう? とふと思う。娯楽も特になさそうだし。少し気になったので二人に村人の楽しみや、行事などについて聞きながら教会に戻った。




 ♦ ♦ ♦ ♦




 教会に戻ると材料だけ【秘密の部屋】から取ってきて、教会の厨房でシスターと一緒に料理を始める。まず囲炉裏でお米を炊いてもらう。炊いてる間に野菜などの切り方の見本を見せて、シスターにもやってもらう。


「貴族は自分で料理などしないものだと思い込んでいましたが、ケイ様にお会いして認識を改めさせられました」


 一応、貴族ではないと伝えたのだが、そうですね! そういう事にしておきましょうと笑っていた。話が通じないです……。誤解を解くのも面倒なので諦めて料理の手順を教えていく。シスターは終始、関心して一生懸命に覚えようとしていたが、調味料がないこの村では再現が難しいだろう。別にこの村を離れる時に分けてあげてもいいけど、それはそれでどうなんだろう? 結局自分で調味料を作る技術自体はないから、調味料がなくなったらそれで終わりなんだよね。う~ん! ないよりはいいのかな……。わからん。


「……ケイ様? 次はどうすれば?」 


 オレは一旦、考え事を終わりにしてシスターに答える。


「あっ、すいません! 後はご飯とスープが出来るのを待つだけですね」


 そこから休憩がてら二人でお喋りをしながら、料理の完成をのんびり待つことにした。




 ♦ ♦ ♦ ♦




「お待たせしました。昼食の用意が出来ました」 


 やはり【秘密の部屋】で作るよりは、時間がかかってしまったが無事に作る事が出来た。長い食前の祈りを終え食べ始める。


「一応、また料理の説明をしますね。食べながら聞いて下さい」


 二人はそう言っても遠慮して食べないので説明を始める。


「今回のおかずは豆腐ハンバーグといいまして、今朝のスープに入っていた白い食材を主に使って作ってあります。その上にのっているのが大葉とすりおろした大根です。それにポン酢という調味料がかかっています。一応、パンもありますが、できればご飯と一緒に食べてみて下さい」


 シスターにはさっき説明してあったので頷いている。神父さまは一口食べまた祈り始めてしまった。それをみてシスターも食べ始めたようだ。神父さまが祈っているのは、シスターと同様にスルーして他の料理も説明する。


「スープはたくさんの野菜とハーブを入れて、醤油という調味料を少し入れてあります。あと小皿は気に入ってもらったようなので野菜の塩漬けですね」


 二人は料理番組並みのコメントで大絶賛してくれた。オレとしては、胡椒や肉が欲しかったな……。





 



 


 


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