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勉強会

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ありがとうございます。


 長めですが、例によって話は進まず……


 アメリアさんが食堂に到着してしばらくして、確かアメリアさんといつも行動している先輩がケイさまを連れて食堂にあらわれる。それを誰からともなく立ち上がり歓迎の拍手で迎える。中には『ケイさま~!』と名前を呼んでる人もいたけど、私は恥ずかしかくてそれはできなかったけど、精一杯の拍手で迎えた。ケイさまも最初は少し驚いていたみたいだけど、すぐに笑顔になってみんなに手を振りながらアメリアさんの下へ向かう。


「みなさん、こんばんは!」


 そのケイさまの第一声に対して、練習もしてないのに全員が声を綺麗に合わせて挨拶を返す。こんなにみんなで一体になる事が今までなかったので少しドキドキした。


「みなさん! 今日は集まってくれてありがとうございます……っとその前に……勉強するにはちょっとこの部屋は暗いのでオリーさん、お願いします」


 アメリアさんと仲が良いあの先輩はオリーさんていうのか……。そんな事を考えているとオリーさんが箱がのったとても小さな荷車を廊下からケイさまの下まで運び、ケイさまがその箱の中身をガサゴソし始める。


「え~と、今から部屋を明るくする魔導具を出しますので、みなさん、目が眩むので直接、見ないようにして下さいね。目を細めておくといいかも! じゃあ、つけますよ」


 ケイさまがそう言った瞬間、魔導具はまばゆい光を放ち、部屋の中を昼間にかえる。


「きゃ~っ! 目がぁ~!」「眩し~っ!」「凄い明るい! 昼間見たい!」「凄~い!」


 言われたそばから直接見ている人がいたみたいだけど、私は目を細めていたので目は眩まずにすんだ。細目で見ているからよくは見えないけど、形は何となくニャンニャンがくれようとしたランタンに似ている気がする。


「だから、直接、見ないでっていったんですけどね……。え~と、これが四つあるんですが…………ちょうど、いい高さに洗濯紐がかかっているので、それに今日は吊るしちゃいましょう。じゃあ、これをアメリアさんとオリーさんで適当な間隔で吊るしてもらえますか? 私はすぐ治るとは思うんですが目が眩んだ人を見てきます」


「ちゃんと話を聞かない者がお手数をお掛けしてしまって、申し訳ありません。どうぞ、よろしくお願いします」


 そう謝罪をした後、アメリアさんとオリーさんは魔導具を受け取り、みんなにも協力してもらいベンチの上に立って魔導具を吊るしていく。


「すごいね~! 部屋に太陽があるみたい!」


 目を細めているコリンが私にしか聞こえない声でそう呟く。


「ホントだね! 昼間見たいに明るいし、これなら夜更かしもし放題だね」


「あはは、でも夜更かししてまでやる事ってある? 仕事ぐらいしか思いつかないんだけど……」


「あはは、そっか……じゃあ、持っててもあれだね」


 そんな話をコリンとしている間に、目が眩んだ人たちもケイさまに治してもらったみたいで、前の方で何度も頭を下げている人たちが目に入った。


「あはは、気にしなくていいですよ! ダメって言われると、余計に見たくなりますもんね」


 そう言ってケイさまが笑って許してあげているのをみて、食堂に笑いが起こる。


「ケイさまって優しいよね」


 そうコリンに小声でつぶやくと、コリンも大きく頷く。


「私、ケイさまのファンになっちゃったかも!」


「えっ! ファン? う~ん……でも、わかるかも……」


 私もニャンニャンのお友達の偉い人としてしか見ていなかったけど、今はちょっと、憧れ始めていると自分でも感じる。


 そこで突然、パンパンと手を叩く音が聞こえ、『はい、おしゃべりを止めて下さい』というアメリアさんの声が部屋に響く。その声に反応して、みんながおしゃべりを止めて前を向くと、アメリアさんが一礼をしてケイさまの後ろに下がる所だった。


「アメリアさん、オリーさん、ありがとうございました! では、みなさん! 早速、始めたいと思うんですが、まずはこれを見てもらえますか?」


 それは壁に貼られた大きな布で、そこには文字と絵が描かれていた。さっきまでは壁には何も貼られていなかったので、私たちがおしゃべりしている間に貼ったんだと思う。


「この布はパトリシアさまにご許可をいただいたので、しばらくはここに貼っておく予定です。なので、お昼を食べながらとか休憩の時間も勉強をしたい人は、是非、活用して下さい。え~と……それで…………これを小さくした物を今から配ってもらうので、みなさん、受け取って下さい」


 その声に反応してアメリアさんとオリーさんがその布を配っていく。


「もちろん、その布はみなさんに差し上げますので、部屋で見たり食堂に来れない時に使ってください。あっ! それとハンカチとしても使えますよ」


 確かにお貴族さまが持っているハンカチと言ってもおかしくない程の良い生地だけど、これで汗や手を拭くなんて恐れ多くて出来ないよ……。そう思っていると隣の先輩がウフフと笑い出し、『ケイさまはご冗談がお上手ですわ』と言ったのを聞いて、そこで初めて冗談だったと気が付いた。それに周りの人たちも笑っていたので、周りにあわせて笑っておく。


「冗談だったんだ、本気にしちゃってた!」


 小声でそう呟くと、コリンも同じだったようだ。


「私も本気にしてた。でも、そんな事よりこの布の絵とか文字に気が付いた? 最初は刺繍かと思ったら違うし、どうやってるんだろうね? ロージーと私の布の絵、まったく一緒だし、一つ一つに同じ絵を描いたのかな? 凄い腕前だよね」


 確かにそう言われて見てみると、二人の布の絵や文字はどんなに見比べても違いが分からないほど同じに見えた。どうやって作ったのかは分からないけど、とりあえず、高価だという事だけは分かる。


「それで今からやる事なんですが、まずは私がこの棒で指した文字を読むので、その後に続いて皆さんも声を出して読んでみて下さい。じゃあ、いきますよ……『あ』」


 そう言って、ケイさまは布の右上の文字を棒で指し示して読み上げる。それに続いてみんなも声を出す。それを下に進んで行き一列分読み上げると、今度は一列まとめて『あいうえお』と一気に読み上げ、みんなもそれに続く。


「どうです? 簡単ですよね」


 まあ、これだけなら簡単だけど、文字を読めるようになるかと言われれば首を傾げたくなる。みんなも同じだったようで顔を見合わせて首を傾げている。


「皆さん、騙されたと思って、とりあえず、この表は私が指した順番だけおぼえておいて、私の読み上げを丸暗記してみて下さい。なんと、暗記出来た人にはご褒美があります」


 それを聞いて不安はどこへやら、みんなが歓声を上げる。


「まずは最後まで通して読んでいってみましょう。いきますよ!」

 

 みんなも今のご褒美の一言でやる気が出てきたのか、さっきより大きな声でケイさまの読み上げに続いていく。そして、それが最後の文字まで読み上げ終わると、ケイさまが拍手をしながら、みんなを褒めてくれた。


「皆さん、良くできました! 今、読み上げた文字のすべてを最終的には暗記するんですが、やっていく内に出来るようになるんで安心して下さい。あと、分からなくなったら絵がヒントになっていますので……あっ! メナさん、気付いてました? 中々、やりますね! そう! 他のみんなも、もう気付いていると思いますが、文字の下の絵は上の文字を頭文字にした生き物や物になっているので、分からなくなったらそれを見て思い出して下さいね」


 メナさんが小声で隣の人と盛り上がっているが見える。多分、褒められたし、名前も覚えて貰っていたから嬉しかったんだろうな。でも、凄いな! まさか、全員の名前は覚えてないだろうから、何かで気に入られていたのかな?


「じゃあ、ここからが本番なんですが、声を出すので喉も渇くと思います。ですので果実水を用意しました! コップは持ってきてますよね?」


 その声にみんながコップを掲げて大きな返事をする。でも、アメリアさんに言わず、勝手に来た人たちは、もちろん、そんな話も聞いていないで持ってこなかったみたい。ちょっと可哀そう……。


「う~ん、コップが無い人は……ここは食堂なんだし、厨房から借りてくればいいじゃないですか?」


 ケイさまの提案に急いで厨房に何人かが走っていく。そして、その間に前の席の人たちから順番に果実水をもらいにケイさまの用意したテーブルに並んでいく。


「もうこの時点ですでに、ご褒美だと思うんだけど……。なら、暗記のご褒美は何なんだろうね」


 コリンにそう言われ、確かにと思い笑ってしまう。私たちには果実水がすでにご褒美だし、弥が上にも次のご褒美に期待が高まる。そして、自分も順番になり果実水をいただき、それに加えて二枚の重なった紙を貰い席へと戻る。そして、しばらくコリンとお喋りをしているとケイさまが立ち上がったので、お喋りをやめて聞く態勢を整える。


「ありゃ? みんな、飲んでないんですか? 自分が飲みたい時にいつでも飲んでいいですからね! あと、おかわりも自由なので、自分で取りに来て下さい」


 さすがの太っ腹ぶりにみんなから驚きの声が漏れ聞こえる。


「そうだ! じゃあ、まずは乾杯で一口、いっときましょう! みなさん、コップを持って~」


 その声に自然とみんなが笑顔になり、コップを掲げる。


「じゃあ、良い勉強会になりますように~乾杯~」


 そして、ケイさまの乾杯の声に続き、声をあげると果実水を一口いただく。実はニャンニャンに貰って果実水は飲んだことあったんだけど、これは別の味だ! これも美味しい! 


「これ、すっご~い! ちょっと、すっぱいけど甘~い! ロージーこれ美味しいね」


 周りからも同じような感想が聞こえ、飲み干してしまった人もいたようだ。


「ちょっ! 一気飲みは流石に……大丈夫?」


「はい、ケイさま! 大丈夫です! 凄く美味しかったので、つい!」


 また、食堂が笑いに包まれる。


「あははっ! あっ! そうだ、お花摘みも各自、好きな時に我慢しないで行ってくださいね。……一応、勉強会なので行く事だけ伝えてもらおうかな……。それに我慢すると膀胱炎になりますので、恥ずかしがらないでこっそりでいいから私の所に来てください」


 えっ! 病気? おしっこって我慢すると病気になるの?


「あの~ケイさま、お話し中、すみません」


「はい、大丈夫ですよ! なんでしょう?」


「あの……そのぼうこ何とかいうものは重い病気なのでしょうか? ここにいる全員が皆、仕事中は我慢する事が多いのですが……」


 アメリアさんがみんなが気になる事を聞いてくれたようだ。


「そうですね! 重くはないと思いますが、確かおしっこを我慢しすぎると、おしっこする時に痛みが出たりする病気だったかな……? 多分……。仕事中は大変だとは思いますが女性は割と多いらしいので、みんなで上手くフォローし合って行った方がいいですね! これはパトリシア様にも改善案として伝えておきますね」


 アメリアさんがお礼を言うと、一気に話し始めた周りの先輩たちから『私なった事あるかも! おしっこする時に痛かった時あるもん』『私もあるかも、あれって病気だったんだ』と言う声がチラホラ聞こえてきた。割とかかりやすい病気なのかもしれない。そして、前の方で一人の女性が手をあげ、質問をする。


「あの…………大きい方を我慢するのも良くないんでしょうか? 大きい病気になったりするんでしょうか?」


 周りからは『やだ~っ』とか、笑い声が聞こえるが本人は真剣なようだ。


「そうですね……私もそこまで詳しくはないんですが、便秘とか痔になりやすくなるとかは聞いた事がありますね……。何はともあれ、我慢しないでちゃんと出すものは出しましょうって事ですね。それに漏らしたら恥ずかしいですしね!」


 それを聞いて食堂内は笑いの渦に包まれた。



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