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副リーダーの威厳


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ありがとうございます。


今回も横道にそれています。


 私たちの余りに大きな声に休憩室内が静寂に包まれ、何事かと職員たちの視線が一斉に私たちに注がれる。急いで二人で謝ると直ぐに興味を失ったのか、またいつもの雑談が飛び交う休憩室の風景へと戻っていく。


「あはは、やっちゃった。ごめん」


「わたしも大きな声だしてたし、わたしも同罪だから謝らなくていいよ! それよりも、その中身が気になるよね。もしかしたら御下賜品っていうぐらいなんだから、すごく高価な物なんじゃない? 開けてみようよ」


「え~っ……でも、余りにも高価な物だったら、開けないでそのまま返したほうがいいんじゃないかな? 死んだおばちゃんから出来るだけお貴族様には関わるな、借りは絶対に作るなってずっと言われてたし……」


「駄目よ! 逆らうなとも言われてたでしょ! 一度、貰ったものを返すのは、相手によっては面子を潰されたと思うかもしれないし、もう覚悟を決めて貰うしかないわよ」


 そう言われ迷いながらも袋の中から木箱を取り出すと、アルセも立ち上がり近くで見ようと隣に移動してきた。


「じゃあ……箱を開けてみるね。あっ! 蓋にフェネック商会って書いてある。この辺りでは聞かないお店だね」


 その箱をみんなからは見えないように座ってるベンチの二人の間に置き、その蓋をこっそりと開ける。


「えっ……こんなの貰っていいの? すごく高そうだけど……」


 その中身はとてもカラフルで、一瞬、アクセサリーのような物に見えたのだが、甘い匂いに頭が混乱していく。


「凄い! それってクッキーじゃない? 私たちが普段食べてるクッキーよりも数段、高そうだけど……。エリン、食べて感想を聞かせてよ」 


 えっ? これ全部、クッキーなの? 食べてみたい! でも、食べるともう返せない! だけど食べたい。心の中の天秤がどんどん食べる方向に傾いていく。結局、『味の感想を言う為にも食べなきゃだね』というアルセの一言がダメ押しとなり、その中の一つを手に取る。


「じゃ、じゃあ、食べるよ! あっ! でも、この真ん中の赤い宝石みたいなのは何なんだろ? 食べられるのかな?」


「軽く噛んでみて食べれそうになかったら、それだけよけて取っておけば?」


「そうだね…………。じゃあ、今度こそ、本当に食べるね!」


 アルセが見守る中、クッキーを半分だけ口に入れる。そして、噛めば噛むほどクッキーの甘さが口の中に広がっていき、幸せな気持ちになっていく。


「…………んっ? 美味し~! すごく甘いよ! 真ん中の赤いのも何かの果物のジャムを固めたものみたい! アルセも食べてみて!」


「えっ! いいの?」


「うん、もちろん、もちろん! いっぱいあるし、好きなの食べて!」


「ありがとう! …………じゃあ、一つだけ貰うね。え~と、え~と…………じゃあ、エリンが食べてたやつと同じのにするね!」


 そう言って、アルセはクッキーを口に入れると目を見開き『なにこれ?』と独り言のように呟くと、残りの半分も一気に食べ切ってしまった。そして食べ終わると何故かとても悲しそうにするのだった。


「えっ? どうしたの? 美味しくなかった?」


「違うの、幸せって儚いなって思って……」


「えっ? 何それ?」


 アルセに話を聞くと単純にクッキーを食べ切った事が悲しかったのだそうだ。確かにその気持ちはよく分かる。貴族でもお金持ちでもない私たちには、こんな美味しい甘味を食べられる機会は滅多にこないのだから……。


「何、言ってるのよ! まだ、こんなにあるんだし、一緒に食べよ」


「えっ? 本当にいいの? エリン、本当にありがとう! エリンは本当に本当に私の最高の親友だわ」

 

 そう大げさに言うとアルセは私に抱きつく。


「ちょ、ちょっと、アルセ、危ない! クッキーが落ちちゃうよ!」


「あはは、ごめん! 嬉しくて、つい! あっ!」


 アルセが急に青ざめたかと思うと、その視線の先から殺気のようなものを感じて振り返る。


「えっ? クッキー?」「えっ? 私も食べたい!」「私も!」「私も!」「私も!」


 そして直ぐさま、そこにいたみんなに囲まれて、いつの間にかクッキーをここにいる全員で均等に分ける話になっていた。普段、先輩が貰った物は、分けてもらったことは一回もなかったけどね。


「エリン、ごめん!」


「いいよ、いいよ! アルセのせいじゃないし。こんなに美味しいものを二人だけで食べるのは、流石に気が引けたし…………ねっ?」


 確かにショックではあったけど、この職場は先輩に嫌われたらおしまいだし、これで少しでも意地悪な先輩の態度が変わるなら安いものよね。それに元は無料ただなわけだし……。そう思いながらも手元の残った二枚のクッキーを見た途端、先程のアルセの言葉が頭に浮かぶ、確かに幸せって儚いものなのね……。





 ◆ ◆ ◆ ◆





 今日の授業は昨日と同じ内容だった事もあり、自分の成長が実感出来ているのかみんなの表情も明るい。そして、これといった問題もなく昼食の時間となった為、その時間を利用してみんなに午後の予定を説明する。


「それでは食べながらでいいので聞くのです。この後の予定は魔力操作の訓練を少しやって、その後、一角ウサギの依頼分の残り三匹の討伐と太陽草の採取をして終了なのです」


「わぁ~戦闘かぁ~! 一回倒したけど緊張するね~! あれ? そういえば森の奥に入って、昨日の飛んでたやつは大丈夫なの?」


 ジュリアにそう質問され、その事について話すのをすっかり忘れていた事に気がついた。


「…………ん~っ! そ、それについてはもう安心するのです。ケイさまがすでに解決しているのです」


「「「「えっ!」」」」


「どうやって?」


「それは切り落とされた腕を取り返しに戻ってきた所を、格の違いを見せつけてひれ伏せさせ、そして配下にしたのです」


「えっ? 腕を取り返す? どういう事? 取り返してどうするつもりだったの?」


「そうだよね。取り返しても元には戻らないのにね」


「うんうん」「そうだよね」「何でだろ?」


「何を言っているのです。限られた者しか使えないものの、切れた腕を治す魔法は存在するのです。現にケイさまはその腕を治してやっているのです」


 それを聞き、四人は言葉を失う。フッフッフッ! ケイさまの偉大さを今更ながら再確認したようなのです。これからも畏れ敬い、ひれ伏すがいいのです。特にジュリア! 


「ニャンニャンちゃん! もしかして警護してくれているのって……」「あっ! 私も思った!」


 さすがルーナとマヤなのです。察しが良いのです。他の二人にも見習って欲しいものなのです。


「そうなのです。それが一番下の下の配下になったのです」


「あれ? 昨日は自分より強いって言ってなかった? それなのに下なの?」


 む~っ! ジュリアは変なところで察しが良いのです。可愛くないのです。


「そ、それは……みんなに危機感を持たせる為であって……ほ、本当ではないのです」


「ふ~ん……」


 マ、マズいのです。このままだと副リーダーとしての威厳が……。


「ジュリア、止めなよ! 力があるから地位が高くなるってわけじゃないでしょ」


 さすがルーナなのです。あれ? でも何か、暗にあたちの方が力がないと言われているような……。


「違うって! そういう意味じゃなくて何でかなって」


 さらなる救いを求めて察しの良いマヤに視線を向ける。すると、何かを察してマヤが口を開く。


「わ、私はニャンニャンちゃんが……え~と…………あの~~……大好きです」


 …………ありがとなのです! マヤ! でも、そういう事じゃないのです。最後の望みにかけてマルチナを見つめる。


「え~と、副リーダー!」


「な、何なのです?」


 マルチナ、頼むのです! 副リーダーとして威厳を保つ言葉を……。


「あの~残ってるそれをもう一個食べていいですか?」


 ズコーッ!

ベタなオチ……

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