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私が聖女? いいえ、そもそも男です。  作者: 東雲うるま


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神を表す文字

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ありがとうございます。




 ホルト邸の調査を終えて領主の居城に戻り、早速、パトリシア様のもとへ向かう。警備の人間が一応は増えてはいたものの、何の検査もなくオレはすんなり部屋に通される。(オレが変身したレッドキャップだったら一巻の終わりだな……)この辺がこの男爵領の警備の限界なのかもしれない。


 オレは部屋に入ると使用人の男性に持ち帰った箱を床に置いてもらい、調査結果の報告を始める。


「そう、地下室で…………問題はいつから本人と入れ替わっていたかね……」


 調査結果を聞き終わると、パトリシア様は立ち上がり箱の中を覗き込む。


「……確かにこの書物は帝国の文字で書かれているわね。私も一般的によく使う会話程度の言葉なら、多少の読み書きはできるのだけど……早速、サイラス語の教師に調べてさせましょう」


「あの~それについてなんですが、グレゴール団長とも話しをしたのですが、内容も内容でしたので私が目を通して、分かった事を報告書にして提出しようかと思っていたのですが……」


「…………そ、そうしてくれるなら助かるのだけれど……という事はケイは少なくとも自国の言語の他に王国と帝国の言語も習得しているという事よね? それはあなたの国では普通の事なのかしら?」 


「え~と、多言語を話す人は稀だったとは思いますが、そこまで珍しくもなかったかと思います」


 (オレの周りではだけど……)


「そ、そうなのね……じゃあ、この件についてはお願いするわね」


「かしこまりました」


 (そういえば師匠の翻訳もあったんだったな。あれもやらなきゃ……)


「本当にケイには感謝しかありません。あなたがいなければ私や子供たち、そして多くの臣下たちの命が犠牲になっていたことでしょう。これに対する褒賞については主人が戻り次第――」


「――いえいえ、色々とお世話になっていますし、褒賞だなんて――」


 確かに何らかのお礼は欲しかったけど、土地を貰ったり店を準備してもらってる手前、『はい、楽しみにしてま~す』とは言えずに一応、遠慮をしてみたのだが、かぶせ気味に却下される。


「――いけません、これはレンドール男爵家の貴族としての面子にもかかわることなのです」


 そう言ってパトリシア様はオレのもとに来ると跪き、オレの手の甲に自分の額を当て、喋り始める。(こ、これは……)


「母親として子供たちを救ってくれて本当に感謝しています。この先、ケイが困難におちいった時には必ずかけつけると誓います」


「お、おやめください。感謝のお気持ちは十分に伝わりましたから」


 すぐにパトリシア様の手を取って立ち上がってもらったのだが、その目には沢山の涙が溢れていた。それは普段、気丈に振る舞っている貴族女性も、実際は普通の女性と変わらないのだと気づかされた瞬間でもあった。





 ♦ ♦ ♦ ♦





 オレとリオスさんがパトリシア様の執務室から出てくると、それと入れ替りに侍女と警備の人間が中に入っていく。もしかしたら人払いをしたのは、さっきの姿を見せないためだったのかもしれない。


「ケイさま、今あったことは出来ればご内密にしていただけると……」


「も、もちろん、誰にも言う気はないです」


 それを聞くとリオスさんは安堵の表情を浮かべる。やっぱり貴族的には、跪くような自分が低くみられかねない行為は、普通は簡単にしないのだろう。それを考えるとパトリシア様が相当、感謝してくれていることが分かる。


「ありがとうございます。それで話は変わりますが、ケイさまが戻られる少し前にフェネック商会の方々がいらっしゃいましたので、荷物を受け取っておきました。こちらが荷物の一覧になります。まさか、使用人の服が昨日の今日で届くとは思いませんでした」


「ああ、届きましたか……私はこれから色々と調べなければいけないので、配っておいてもらってもよろしいでしょうか? え~と……渡す手順はメイド長とアメリアさんに伝えてあるので、私がいなくても問題ないと思います。さすがにお二人だけでは大変なので文字の読み書きができる人が、お手伝いとして何人かいた方が良いとは思いますが……」


「かしこまりました。読み書きができる者を手配して、メイド長には配っておくように伝えておきます。あとの残りの荷物は、ケイさまのお部屋にお運びするという事でよろしいですか?」


「そ、そうですね、それでお願いします。私はこの後、少し休憩をしてから書物について調べ始めたいと思います。ですので今日の夕食はいらないとお伝え下さい。では失礼します」


 こうしてリオスさんと別れた後、早くニャンニャンに会いたくなり、癒しを求めて歩みを速めるケイであった。





 ♦ ♦ ♦ ♦





 部屋に戻り、使用人の男性に書物の入った箱を置いてもらうと、心付けを渡しさっさと部屋から出っていってもらう。扉が閉まったのを確認すると、ベッドの上にいるニャンニャンをすぐさま抱っこして疲れた心を癒してもらう。


「ケイさま、どうしたのです? とっても甘えん坊さんなのです」


「あっ! 前にオレが言ったの言い返された……」


「ふふふ、なのです。それよりもケイさまはそんなに疲れて、いったい何があったのか聞かせて欲しいのです」


 ニャンニャンを抱っこしたまま、今日あった出来事を一部始終を話して聞かせる。


「なるほどなのです。あの人族にしては異常に高かかった魔力の理由が、レッドキャップだったという事なら納得出来るのです。人族ごときが……あっ、ケイさまの事じゃないのです。…………ほとんどの者は自分より魔力の低い者に呼ばれても、召喚には応じないのが普通なのです。でも稀に自分より低い魔力の者の召喚に応じる者がいるのです」


「なんか嫌な予感がするんだけど……」


「そうなのです。余り良い相手ではないのです。邪悪な者が自分より弱い者を利用して悪事をはたらくために、わざと召喚に応じて現れたりすることがあるそうなのです」


「え~なら召喚なんてしない方がいいじゃん」 


「ちゃんとした召喚は邪悪な者に襲われない為に、神を表す文字を魔法円に刻むので安全なのです。その状態で自分が困らない程度の契約や取引をするか、脅して従わせたりするのです。最悪は話がまとまらなかったら、そのまま送還することも可能なのです。素材は無駄になるのですが危険はないのです」

 

「ん? という事はその神を表す文字をちゃんと刻めば、普通は安全っていうこと?」


「ん~~そうとも言い切れないのです。邪悪な者は言葉巧みに騙そうとしてくるのです。それを見抜けてやっと安全と言えるのかもしれないのです」


 何か詐欺師みたいで怖いな。まだ、オレには召喚は早いかもしれない。

 

 

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