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侍女が初めてみたもの

ブックマーク・評価ありがとうございます。


頑張ります。


 まさか貴族の女性が大笑いするとは思っていなかったので、少し焦ってしまったが周りに合わせて笑っておく。昔、留学から帰って来た友達が現地の人たちと笑いが合わず、作り笑いが上手くなったと言っていたがこういう事だったのか……。そんな元の世界の記憶を思い出しながらレースの三点セットを配って行く。しかし、どちらの色の商品を貰うか迷って取りに来れない人も何人かいるようだ。


「ケイ! いつまでも決められないあの娘たちを待っていては、夜が明けてしまいます! 披露したい物はまだあるのでしょう? あの娘たちは放っておきなさい!」


「よろしいのでしょうか……? それでは本日最後の商品を見て頂こうと思います。決まっていない方たちは、今日の会が終わるまでに決めていただければ、最後にお渡ししますね」


 どちらかというと今日の本題でもあるメイド服を、四体のトルソーに飾り説明を始めていく。


「今回は二種類のデザインでそれぞれ紺色と黒色をご用意しました。あとはエプロンを二種類、帽子と髪飾り、靴下、靴ですね。靴は材料が不足していますので、全員分は少しお時間を頂ければと思います。よろしければ皆さんもお近くに来てご覧下さい」


「これを使用人が……」「そうよね! 高級すぎるんじゃないかしら?」


 女性たちはメイド服やその他の小物を、遠慮なしに見たり触ったりして楽しそうに感想を言い合っている。貴族の人たちにも高級に見えるのか……。


「私の考えでは襟と袖が白いメイド服を一般のメイドの方に着てもらって、もう一方の肩の部分が膨らんでいて、首に沿って襟が立っているメイド服を、役職についている方に着てもらうのが良いのではと思います。エプロンと帽子や髪飾りについては、その日の気分によって好きな方を付けてもらうのが、気分転換にもなって良いのではないでしょうか?」


「確かに白い襟のメイド服の方が若い娘が多い一般メイドには合いそうね……でも、実際に着た所が見たいわ! カミラと……そうね! ジャニスがこちらの色違いを着て、え~と確かアメリアだったわね! あなたとロディナが一般メイド用の方を着てみなさい!」


「「かしこまりました」」「わかりました! パトリシアさま!」「やった~! 着てみたかったんです~」


「ケイ! またあなたが一緒に行って、着方を教えてあげてくれるかしら」


「え~と……はい、かしこまりました」


 荷物をアメリアさんとメイド長のカミラさんに手伝って貰い、パーテーションの裏に持って行き四人に説明を始める。


「それでは皆さん、簡単ですからみて下さい。服の胸の部分と袖に丸い物がありますよね? これはボタンというのですが、皆さんが紐で留めているのと同じ役割をしています。これをこうすると外れます。このボタンのおかげで紐よりも、かなり簡単に脱ぎ着が出来やすくなるはずです。では、皆さんで自分が着る服のボタンを外してみて下さい」


 初めてのせいか少し時間がかかったが、全員が無事にボタンを外し終える。


「そこまで出来たら後はそれを下からかぶって、頭と手を出したらボタンを留めるだけです。簡単ですよね? 私はパトリシアさまに少しお話があるので、皆さん全員がメイド服を着る事が出来たら知らせて下さい」


 本当は話などないのだが貴族の娘の着替えを見る事で、後々トラブルになるのは嫌なのでその場を離れる事にする。


「あら? もう終わったのかしら?」


 パーテーションから出てきたオレに、パトリシアさまがいち早く気付く。


「いえ、皆さんがお着替え中ですので、席を外しました」


「別に見て減るものでもないのだから見れば良いものを……。それとも女性には興味がないのかしら?」


「えっ……? いえいえ……ははは……」


 どういう事? パトリシアさまの真意を測りかねていると、都合よくアメリアさんに呼ばれる。

 

「ケイさま、四人とも着用ができました」


「は~い! 今、行きます! で、では行ってきますね」


 頷くパトリシアさまに頭を下げ、逃げるようにその場を後にする。何が目的なんだ? 揶揄っているだけなら意外と面倒臭いな……。揶揄っている場合は、こっちが恥ずかしがれば恥ずかしがるほど喜ぶから、出来るだけ反応をしないようにしよう。


「大分、皆さん、早く着れましたね! ボタンはどうでしたか?」


「少し慣れが必要ですけど、紐に比べて大分早く着る事が出来そうです」


 メイド長の答えに他の三人も頷いているので、ボタンの便利さを実感してくれたようだ。


「一人で着れるのが良いですわ。寝坊した時に背中の紐を縛ってくれる人を、探さなくて良いもの! あれって仕事の邪魔をしないようにとかって、意外と気を遣うのよね」


「それはジャニスが寝坊しなければ良いだけなんじゃない!」

 

「…………そういう考え方もあるわね! えへへ!」


 侍女たちの話を聞いていたメイド長とアメリアさんは、明らかに渋い顔をしている。多分、相手が貴族の子女だから強くは言えないのだろう。まあ、オレが何か言える立場ではないしな……そう思い試着の続きを進め事にする。

 

「メイド服の方は問題がなさそうですね! それでは靴下と靴を履いてみて下さい」


「あの~ケイさま! 靴下を縛る紐が見当たらないのですが……」


「ああ、その靴下は紐がなくても縮む力でずり落ちないように出来ていますので、試しに履いてみて下さい」


「わ~凄い! 紐で縛らなくても全然ずり落ちてきませんわ!」


「流石に長時間履いていればずり落ちてもきますが、その時は上に引っ張ってもらえば問題ないはずです」


 みんな引っ張ったり離したりして、靴下の性能を思う存分に試して感動している。


「では靴下は履けたようなので靴ですね。メイド服の裾が汚れない為に少しだけ厚底にしました。履き方は足首部分のストラップを外して、履けたらまたストラップを留めて下さい」


「あの~このすとらっぷというのはどうやって外すのでしょうか?」


「金具がついてる方を引っ張ってみて下さい」


「あっ! 外れました! 凄い……!」


「それも形は違いますがボタンと呼ばれていますね! 確かスナップボタンだったかな?」

 

「「へ~~っ!」」「凄い……」


「あれ? ジャニスさんもロディナさんもそれだと逆ですね」


「逆ですか……?」「逆?」


「はい! 左右が逆ですね。金具がついている部分が体の外側にくるのが正解ですね」

 

「えっ! じゃあこれは左足用って事ですか? 私、履く方の足が決まっている靴は初めて見ました」


「…………えっ?」



 

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