おじさん達が喜ぶもの
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頑張るです。
食事が出来るまで待つ事になったので、付き添ってくれたアメリアさんと部屋で話しながら時間を潰す。あれほど要らないと言ったのにアメリアさんは、オレが滞在する間の世話係の一人になったそうだ。アメリアさんに文句を言っても仕方がないので話を変える事にする。
「あっ! そうそう! 昨日、アメリアさんにはお話したメイド服の見本が届いたみたいなので、後でメイドのみなさんには試着をしてもらって、サイズを確認してもらう事になると思います」
「えっ? もう届いたのですか?」
「偶々、近くを通ったうちの隊商が、目当ての商品を持っていたので届けて貰いました」
という事にした。
「そうなんですね! 昨日、お話をお聞きして楽しみにしていたのですが、まさか、昨日の今日で届くなんて……」
確かに驚くのは無理もない。街道が整備されていないし、相当近くでない限り一ヶ月以上かかる事もざらなのだろう。
「サイズが分かれば、靴以外は直ぐに全員に渡せると思いますよ。靴も革が手に入ればすぐなんですが……」
「えっ! 全員ですか?」
「ええ! メイド服の方はサイズが分かればですが、全員分は直ぐに用意できますよ! みなさんに気に入って貰えると良いのですが……」
「……本当にありがとうございます! 絶対にみんな喜びます。あかぎれの薬の時もそうですが、何よりもケイさまのお心遣いをみんな喜んでいましたから……」
一般メイドのほとんどがお古の服以外の物を貰った事がないので、貰えるだけで嬉しいのだそうだ。というか小さい子は声を掛けられるだけでも喜ぶらしい。何らかの事情で幼い頃に親元を離れて働いているのだから、やっぱり寂しい思いをしている子が多いのだろう。そんな話をしているとドアがノックされる。
「お食事の支度ができましたので、太陽の広間までお願いいたします」
「は~い! 今、行きます!」
『ニャンニャンのお友達の子?』
『違うのです。声も匂いも違うのです』
えっ? 匂いもドア越しでわかるんだ。
『食事にいってくるから、これでも食べて待っててくれる?』
『あの……これロージーと食べてもいいです?』
『えっ! いいけど、お仕事中なんじゃないかな? 聞いてみるね』
「あのアメリアさん! 昨日のロージーって子は今、何をしているかわかりますか?」
「えっ? ロージーですか? …………多分、いつも通りなら仕事を終えて部屋にいるのではないでしょうか? 連れてまいりましょうか?」
「いえ、呼びに来たのが昨日の子と違ったので、どうしたのかなって思って……。元気なら問題ないです」
適当な理由を付けたつもりが、アメリアさんは『おやさしいのですね』と少し目を潤ませていた。こんな事で感激しちゃうなんて純粋なんだろうな……。悪い男にころっと騙されそうで少し心配。
『部屋にいるみたいだし大丈夫そうだね……。そういえば居場所は分かるの?』
『近くまでいけば、匂いでわかるのです!』
『あら、凄い! じゃあ、気を付けてね!』
『あい!』
さてオレは食事に行きますか……。
♦ ♦ ♦ ♦
やはり今日の夕食にも丸焼きが出たのだが、野鳥の丸焼きだったので衛生面を見逃せばどうにか口にする事が出来た。まあ、結局はそれ以外の料理は野菜のスープぐらいしか手が出なかったが……。
「今日、商業ギルドに行ったのですが、そこで領主さまより私に土地と店舗が与えられると聞いたのですが、あれは本当なのでしょうか?」
「ああ、本当だ! どこでも好きな場所に決めると良い! 我が領への貢献に対する礼だと思ってくれ」
パトリシアさまにも視線を送ると頷いている。言うほどたいした事をしていない気もするのだが、裏があるのか? まあ、最悪は逃げればいいか……。一応、お礼を言う為に立ち上がり男爵に頭を下げる。
「身に余るお心遣い、ありがとうございます。このいただいた機会をいかして、この街の発展に貢献できるような商会を築いて行きたいと思います」
「…………はっはっはっはっ! 本当にライリーと同い年とは思えんな! この街の発展に関する考えがあればいつでも提案してくれ! 素晴らしい案であればまた恩賞を与えよう」
またライリーがオレを睨んでいるから、お願いだから比較にライリーを出さないでくれ……。さすがにこの場で街の中が糞尿だらけで不衛生だし、治安も悪いので何とかしましょうとは言えないので、今回は無難に答えておく。
「もう少し街を色々みさせていただいた後、何か思い浮かんだら提案させていただきます」
その後は男爵にうながされ席に座ると、周りに座っていた貴族たちから質問攻めにあう。どうやってその年でその教養を身につけたのか、街の発展に関する知識を持っているのか、婚約者がいるのかなど、利用しようという気持ちが透けて見えるが、概ね好意的とみていいだろう。今のところは……。
「そういえばケイ宛に大量の荷物が届いたと聞いたけれど、何か面白いものは届いたのかしら?」
パトリシアさまにそう尋ねられ、自分の商会の隊商から荷物を届けてもらった事を伝える。パトリシアさまに話したドレスや装飾品もある事を伝え、この後のお茶会で披露する事となった。周りの女性陣は盛り上がっているが、見に来れない男性陣は不満そうだったので、今度は男性陣にも何か作った方が良いかもしれない。
おじさん達が喜ぶもの……? 元の世界のおじさんで考えるとゴルフ、釣り、スポーツ新聞、野球観戦、囲碁将棋、パチンコというかギャンブルとかか……ほとんどこっちの世界にはないな。すぐできそうなのは釣りとか将棋系のボードゲームかな……? ギャンブルは治安が悪くなる可能性が高いから保留にしておこう。
一応、情報収集の為に周りのおじさまの趣味を聞くと、ほとんどの人が狩猟や乗馬と答えるなど意外とアウトドアが多い。室内の趣味という括りで聞くとチェスっぽいボードゲームやサイコロっぽいもの、トランプっぽいカードゲームが人気なようだ。商品にするなら貴族と平民が両方出来るものが一番良いんだけど、分けるのもありかな……。
「それではそろそろ男性陣からケイを返して貰って、ドレスを見せて貰いましょう! 行きますよ! ケイ!」
「はい! それでは皆さん失礼します! またお話を聞かせて下さい」
いつの間にか囲まれていた笑顔のおじさまたちに別れをつげ、オレは女性陣に両腕を掴まれて連行されるようにサロンへと向かった。




