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助けられる力

ブックマーク・評価ありがとうございます。


頑張るっす!


 フリッツ商会を出ると辺りは暗くなり始めていた。本来あるべきものを探して周りを見渡してもそれは見当たない。どうやらこの街にはまだ街灯という物がないらしい。まあ、街灯よりこの通りの悪臭を何とかするのが先だとは思うが……。


『暗くなってきたし、そろそろ城に戻ろうか? 武器屋とか防具屋もみたかったけど、また今度かな……』


『分かったのです』


 しかし、またあの不衛生な食事が待っていると思うと、足取りは重くなる。どうにか食べない方向に持ていけないものか……? オレが毎日作るのも違うだろうし……。


「やあ! 一人かい? 今はまだ明るいが直ぐに暗くなるぞ! 宿までで大銅貨五枚でどうだい?」


 今日の夕食に絶望していると、ランタンを持った青年に声を掛けられる。話を聞くと道先案内人というれっきとした仕事らしい。夜道をランタンで照らし、お客を安全に目的地まで送り届ける事で稼いでいるそうだ。


「え~と……」


 別に一人で帰れるしな……。


「じゃ、じゃあ、大銅貨三枚ならどうだい? いや、大銅貨二枚で良い! 夜の女の一人歩きは危険だぞ」


 何て断るかを考えていると、迷っているとでも思ったのか一気に半額以下まで値下げされる。


「ん~……」


「分った! 分かったよ! 大銅貨一枚ならどうだ? それに俺はアイアンの冒険者だから、護衛にもなるぞ!」


 冒険者? 副業って事? っていうか普段は一体、幾ら取ってるんだよ? 大銅貨だから百円か……これって元が取れるのかな? 


「……すぐそこなんで大丈夫です」


 結局、断ると青年は『そうか、それじゃ仕方ないな!』とあっさり次のターゲットに声を掛けに去って行った。一つ上のランクでも副業が必要とは、冒険者だけで暮らすのは案外大変なのかもしれない。


『どうしたのです?』


『いや、冒険者って儲からないんだなと思って』


『大丈夫なのです! ケイさまとあたちなら直ぐに稼げるようになるのです……でも、ケイ様は商人になるのではないのです?』


『オレじゃなくて、一般的に冒険者は儲からないんじゃないのかなって……ほら今の人も副業してるって言ってたでしょ』


『魔物討伐の依頼以外は大した報酬じゃなかったのです。魔物を倒せる力がないと稼ぐのは難しいのです』


『ああ、そうか! 稼げないから装備が買えない。装備が買えないから魔物が倒せない。魔物が倒せないから稼げない。この悪循環でいつまでも魔物が倒せないし稼げないって事か……』


『でも装備を用意するだけでは駄目なのです! 戦い方を知らなければ意味がないのです』


『確かに……』


 冒険者ギルドでは、そういった訓練や指導はしてなさそうだったけどあるのかな? 今度聞いてみよう。なかったら訓練学校みたいなものを作るのも面白いかもしれない。引退した騎士や冒険者に講師をお願いするのも良いかも。


『――さま、ケイさま!』


『ああ、ごめんごめん! どうした?』


 考え事をして気付かなかったが、ニャンニャンが必死に話しかけていたらしい。


『向こうで誰かがいじめられているのです』


『えっ?』


 ニャンニャンの指す方向をみると、一人の男性が若者たちに暴行されていた。昔のオレなら警察に通報はしても助けはしなかっただろう。今もどこかに厄介事に巻き込まれたくないという気持ちがあったのも確かだったが、折角、助けられる力を授かったんだからと、自分を鼓舞して急いで男性を助けに走り出した。

 




 ♦ ♦ ♦ ♦





「衛兵さん! こっちです!」


「おい! まずいぞ!」「衛兵だ! 逃げろ」「くそっ!」


 三人組はこういう状況に慣れているのか、別々の方向に逃げて行った。

 

「大丈夫ですか?」


 そう声を掛けると男性は顔をしかめながら答える。結構なお年に見えるが運悪く? 被害にあってしまったようだ。おやじ狩りってやつ? 


「ああ、大丈夫だ! 助かったよ! ん? 衛兵……?」


「最初はボコボコにしようかとも思ったんですが、どっちが本当に悪いか分からなかったので衛兵を呼んできたふりをしてみました」


「お嬢さんがあいつらをボコボコに? はははっ! ……あたたたたっ! でも助かったよ! 本当にありがとう」


 三人組にやられる前からボロボロであったろう服の脇腹部分を押さえて、痛みをこらえながらお礼を言われる。鑑定してみると打撲と肋骨のひびなどが見て取れた。神聖魔法を見せていい相手かは、まだ分からないしどうしたものか……。


「あっ! ポーションありますけど飲みます?」


「……気持ちは有難いんだが、あいつらに有り金を全部取られてしまったんだ。まあ、最初からそんな高価な代物に支払える程の金は持ってはいなかったがね」


「お金? そんなのいいですよ! はい! みんなが心配しちゃうから帰りますね。それじゃ、お大事に~! 行くよ! ニャンニャン!」


 大分、辺りが暗くもなって来たし領主さまに心配されても困るので、ポーションを押し付けてその場から逃げるように立ち去った。





 ♦ ♦ ♦ ♦





「ケイさま! おかえりなさいませ! 街は楽しまれましたか?」


 執事のリオスさんにそう聞かれて無難に答える。

 

「只今、戻りました! ん~そうですね! 初めての街は新鮮で楽しかったです!」

 

「そうですか、それなら良かった! それでご報告がありまして、本日フェネック商会のリンさまがいらっしゃいまして、ケイさま宛ての荷物を預かっております。そしてこちらが荷物の一覧表になります」


 まあ、持ってきたのは変身したオレなんだけどね……。誰に変身するか迷ったが、なんとなく妹の凛の姿をかりたのだ。


「なるほど、お手数をおかけしました。予想より大分、早く届いたみたいです」


「荷物は倉庫に保管してありますが、いかが致しましょう? 必要であればお運びしますが……」


 う~ん……パトリシア様への荷物と試着用のメイド服はいつ渡せばいいだろう?

 

「え~と、パトリシアさまへの荷物もあるので、それ以外は私の部屋に運んで貰えますか? それとパトリシアさまへの荷物は…………どうしましょうかね?」


「まもなくお食事の時間になりますので、その時にパトリシアさまに直接お聞きするのが良いかもしれません」


 まもなくお食事の時間……本来なら嬉しいはずのこの言葉に、こんなにも絶望するとは……。


「……な、なるほど、そうしますね。じゃあ、私の荷物だけ部屋にお願いします」


「かしこまりました。それでは私は男性使用人を集めてまいります。ケイさまは食事の準備が出来るまでお部屋で少々お待ちください」


「わかりました。それでは部屋にいますね」


 さて、今日は何の丸焼きが出るのか……? 覚悟だけはしておこう……。


 


 


 

 






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