用途の分からない生地
副ギルド長・アイーダさんの視点です
ブックマーク・評価ありがとうございます。
頑張るます。
商品の説明や今後の商売についてのかなり長い話し合いが終わり、お帰りになるケイさまをお見送りする為に正面玄関まで一緒に向かう。
「ケイさま! 本日はお越しいただき、誠にありがとうございました。例の商品も手に入り次第、ご連絡させていただきます。それと何かございましたら、いつでもお越し下さい」
「こちらこそお忙しい中、お時間を頂きありがとうございました。それでは失礼いたします」
別れの挨拶を終え、帰るケイさまをギルド長と一緒に頭を下げて見送る。
「何事だ?」「相手は何者だ?」「どこかの御令嬢か?」
偶々この光景を見ていた商人や通行人が、足を止めて噂話をはじめていた。また、明日には大げさな噂が飛び交うのだろう。
「よし、アイーダ君、戻りましょう」
「はい」
何か聞きたそうな商人たちに、気付かないふりをしてギルドの中へと戻った。
♦ ♦ ♦ ♦
「お疲れさまでした。商品は保管所に運んで貰ってます。こちらが一覧表と説明書になります」
部屋に戻ると何人かの職員が、クララの指示で商品を運び出している所だった。
「ご苦労様! 運び終わったらケイさまからお願いされたものの手配と、次回いらした時に回る物件の順番とルートの確認をお願いね」
「はい! わかりました……。あの~これを本当に頂いてよろしいのでしょうか?」
次々にされる商品の説明を理解する事に精一杯で忘れていたのだが、対応をした私たち三人にケイさまがお試し商品を下さった事を思い出す。
「それはケイさまがあなたにと下さった物ですから、有難く貰っておきなさい。良いですよね? ギルド長!」
「……ああ、うん! 貰っておきなさい!」
何事か考え込んでいたギルド長が我に返り頷く。
「は、はい! ありがとうございます! では手配の方を進めてきますね! 失礼します」
クララは満面の笑顔を隠そうともせず、大事そうに袋を胸に抱えて部屋を出て行った。
「でも残念でしたね! ほとんどが商品の登録だけで製造方法の登録はして頂けませんでした」
「ケイさまの話では複雑な工程の商品は、ある程度の専門的な知識がないと難しいという事だったからね。サンダルなどの比較的作るのが簡単なものの製造方法を、登録してくれただけでも有難いと思おう」
「……そうですね。封印札などの運送に使えそうな知識の登録はしてくれましたし、贅沢を言っては罰が当たってしまいますね……」
「封印札についてですが、早急に運送ギルドと連絡を取りましょう。もしも上手くいけば莫大な金額の手数料が商業ギルドにも入りますから、是非とも契約させられるように話を持ち掛けましょう」
確かに全部の運送業者や商人が使い始めたとしたら、莫大な金額が動くことになるだろう。それにこの国だけでなく帝国などまで浸透し始めたら……想像もつかない。
「それでは私も自室に戻りますね。職員に面会依頼の手紙を持たせて、運送ギルドに向かわせようと思います」
「わかりました。よろしく頼みます」
「それでは、失礼します」
ドアを閉めた瞬間、ケイさまからの頂きものを忘れた事に気付き、急いでもう一度ドアを開ける。
「すみません。頂きものを忘れてしまって! あっ!」
その時、私がみたものは今まで見た事のないような笑顔で、袋に手を入れているギルド長の姿であった。
♦ ♦ ♦ ♦
職員を運送ギルドに向かわせ一息ついた後、お目当てのものを自分の膝の上にのせる。ケイさまからの頂きものは、全ての仕事を済ませてから見ようと我慢していたのだ。期待に胸を膨らませ袋に手を入れ、つかんだ布を引き出す。
「えっ! なにこれ? 凄いふわふわ!!」
広げてみると体を覆える程の生地だった。シーツ? それにしては小さすぎる……。用途は分からないが、ふわふわの理由は表面に糸の輪がびっしり並んでいるからのようだ……。何と手間のかかる織り方なのだろう。この生地については今回は登録されていなかったはずだ。一体、どれだけの知識を持っているのだろうか……。
服飾ギルドがこの生地の製造方法を欲しがった場合、計算するまでもなくまた大金が動く。もう驚きを通り越して呆れてしまう。不思議とお金が集まる人間がいると聞いたことがあったが、ケイさまのような人の事なのだろう。それに比べて……何も才能のない自分に少し悲しくなる。
「……自分とケイさまを比べるのが間違いよね」
そう思い、気を取り直して残りの中身を机の上に置いて行く。残りの中身はというと、先程の生地以外は登録していただいた商品だったので用途がわかる物だった。確か、これがリップクリームでこっちがハンドクリーム、そしてこれがケイさまも使ってるという石鹸とこの瓶が髪用の多分、シャンプーだったと思う。
全部取り出したと思うが一応、袋を覗き込むと一枚の紙が入っていることに気付く。どうやら見逃していたようだ。その紙には袋の中身の説明が書かれてあり、用途が分からなかった生地はタオルという物のようだ。続きを読んで自分の目を疑う。しかし、何回か読み直したが、読み間違いではなかったようだ。
「えっ! 本当に? こんな綺麗な生地で体を拭くの……?」




