苦情→いつも隣に怨嗟の階段があります
第10幕が開かれた──
我が家のYouTuber生活はいわれのない悪評によって炎上、活動中止を余儀なくされた。
平日の朝8時に必ずポストに入れられる「乳首神」と書かれたハガキ、
膝を負傷した私は今や死後の世界をたゆたうクラゲだ。
そんなクラゲにも帰る場所がある。
今日の部屋番は3012号室、つまり3階の一番角の部屋だ。
いつも角部屋なものだから、すぐ隣にある非常階段として作られた「怨嗟の階段」のせいで昼寝すら叶わぬ。
なぜクシャミのでかいおっさんというのはどこにでも居るのだろうか?
だがそれももうすこしの辛抱。
この四角い豆腐建築は1・2階が吹き抜けのロビーになっていて、
部屋は3階まで。
つまり私はもうすぐコールという寸法だ。
──。
おかしい、
何かがおかしい。
部屋に充満した湿気とともに広がるシャンプーの匂い。
シングルベッドの上に無造作に放り出された淡い色のランジェリー。
まるで世界の意思によって踊らされているような感覚。
咄嗟に、尻ポケットに隠し持っていたスイミング帽をかぶる。
今までその色について言及していなかったが、この際はっきりさせておこう、
色は白だ。
ちなみにこれと同じものをあと2枚所持している。
通っていたスイミングスクールの売店で3枚セットだったからだ。
決して友人の分まで買っておいてお揃いにしてみたかったわけでは……ない!
私はヤカンにかけられた火を止め、
やっと、思考という名のナノデバイスを起動する。
流れ始めたユーロビートと共に私は アクション☆