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世界を救いにいこう。

『福音』の一本目を注入。


 普通に考えれば、このままレアとの記憶を保持したままの方がいいのだろう。

 自分がしようとしている事が、無駄なものだと、無謀なものだというのは分かっている。

 それでも行かなきゃいけないんだ。

 ここで黙ってレアを見送るだけなんてまっぴらごめんだ。


『福音』の二本目を注入。


 俺は両親の記憶など何も残っていない。

 それでも、昔父親とバイクに乗っていたから、バイクに乗ると不思議な安心感に包まれるんだ。

 記憶は失くしても、気持ちは残る。

 そこに誰がいたのか、何をしていたのか忘れても、楽しかったという気持ちは残るんだ。


 レアとの記憶を失った未来の俺でも、きっとレアとの約束は守ってくれるはずだ。夏祭りに行くのも、チェスをするのも、きっと。

 だって俺は『悪魔を倒して世界を救う』という約束を覚えていた。記憶が失くなっても、どこかで覚えていた。


『福音』の三本目を注入。


 レアは今、自身の記憶を代償に悪魔を倒している。

 マクスウェルの庭にいる悪魔を全て倒し終わる頃。レアは回帰するかしないかの瀬戸際をさまようという。

 回帰してしまったらきっと、何も残らない。魂に刻み込まれているような想い、気持ちも消えてしまう。そんな予感がする。


 そんなのは、嫌だ。あんまりじゃないか。

 レアがレアであるためのモノを守りたい。

 僅かでも、ほんの少しの欠片でもいい。

 そのために一体でも多くの悪魔を倒す。


 それが、『悪魔を倒して世界を救う』という約束を守れなかった俺の償いだ。

 レアが最後に見せた笑顔。その笑顔が背中を押してくれる。

 レアは何度も記憶を奪われたせいで感情の起伏が極端に少なくなってしまった。これ以上、それこそ回帰間際までいってしまったら、次はいつ笑えるというのだ。一生かかっても取り戻せないのではないだろうか。


 レアがもう一度笑えるように。

 そのためにも俺は。

 身体中に『福音』三本分がまわる。


 血と記憶を捧げる時が来た。

 三本分だ。どれだけの記憶をもっていかれるか想像がつかない。

 大神楽石を破壊したため捧げた記憶が悪魔になる事は無い。それが唯一の救いだ。


 深呼吸。

 さあ、約束を果たしにいこう。

 世界を救いにいこう。

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