終章
あの日から2週間が経った。
あの日、彼女の無事を確認した彼が警察に連絡をして、事件は警察が引き継いだ。
警察の調べによると被害者は全部で16人。その中に彼女は入っていない。その時 既に傷の無い彼女が刺された事を知るのは通り魔と彼だけで、警察に証明できなかったからだ。
彼女を含めると17人の被害者がいたわけだが、彼女を除いた全員が亡くなった。それも全員損傷は1箇所だけだそうだ。被害者の中には彼の学校の男子生徒も1人いて、学校ではその男子生徒の追悼が行われた。
件の通り魔は今も捕まっておらず、この2週間で同一人物の犯行と思われる事件がさらに3件起きている。
それらの事件がその通り魔の犯行だとするならば、通り魔は西に向かうように犯行場所を変えていると言うのが警察の見解だ。
一方、彼は と言うと能力をなくしていた。
そして、能力をなくした事で彼の日常は変化していった。
例えば、人と関わる事が以前より増えた。特に彼女とは、あの日以来 毎日一緒に帰るようになった。
もちろん今日もだ。
校門を出ようとする彼らを、何もないはずの空中に座って見下ろす双子の子供がいた。
『今回の彼はつまらなかったね、お姉ちゃん』
『そうだね、お兄ちゃん。私達はもっと能力に依存した姿が見たかったのにね』
『まあ良いんじゃない。あの能力をくだらないと吐き捨てた人間は彼が初めてだよ。これはこれで面白いんじゃない』
双子の視線を感じ、彼は空を見上げる。
しかし、彼の目には何も映らなかった。
「春人!何してんの!行くよ!」
「ごめん、卯月。今行くよ」
彼女に名前を呼ばれて、彼は彼女の下に駆け寄る。
きっと彼らの物語はこれからも続くだろう。
そして、彼女と共にいる彼の表情は、この世の全ての幸せがその手にあると言わんばかりの最高の笑顔だった。
完