4章
平凡な1日もあっという間に昼を迎え、彼は弁当を出して自分の席で食べる。
忘れてはいないと思うが、彼は親しい友達が少ないので当然1人だ。
まあ、誰かに誘われさえすれば、誰かと一緒に食べる事もあるのだが、そんなのは1人で食べる回数に比べれば本当に少ないので、誰かと一緒に食べるという事がイレギュラーであり、1人で食べる方が彼にとっては日常である。
今の説明だと孤独な彼を庇っているように聞こえるが、別にそんなつもりはない。本当に稀に彼は誰かに誘われるのだ。
「春人、1人?なら一緒に食べようよ」
そう、こんな感じで。
「良いけど、いつも一緒に食べてる人達はどうしたんだ?」
「あー、ユイ達は今日は学食で食べるらしくて。だから、誰かいないかなーって思って」
「なるほどな」
「うん。てか、春人の前の席って誰だっけ?」
「ゴトウ」
「あー、トモヤ君かー。席借りても良いかな?」
「良いんじゃねぇか?」
「じゃあ、借りちゃおう。てか、春人のお弁当、スゴい美味しそうじゃん!お母さんが作ったの?」
「いや、姉ちゃん。自分の分作るついでに俺のも作ってくれるんだよ」
「あれ?春人ってお姉さんいたんだっけ?」
「ああ、1つ上に1人な」
「3年ってことなら、会いにいけるじゃん!」
「あ、いや、学校は違うんだ」
「なんだぁ。あ!じゃあさ、今日 春人の家に行っても良い?」
「は!?なんでそうなる?」
「だって、家に行けばお姉さんに会えるでしょ」
「確かに会えるとは思うけど。そこまでして俺の姉ちゃん会いたいのか…。だいたい俺の家なんか今まで来たことないだろ。なんで今日なんだよ」
「なら、今日が初めてって事で良いじゃん!」
「…。…!そうだよ!部活は、バスケ部はどうすんだよ!?俺は部活入ってないから関係ないけど、染井は部活あんだろ?」
「この間 試合あったから今日は休みだよ。そんなに私を家に入れたくないの?」
「いや、そういう訳ではないけど」
「なら、決定ね。じゃあ、今日は一緒に帰るから、勝手に帰らないでよね」
「え!?」
「だって私、春人の家知らないもん」
まともな友達すらいない彼にとって女子と一緒に下校する事は非常にハードルの高いものであったが、少し強引に話を進める彼女に言い返す言葉は見つからず下校を共にする事となった。
【彼に特別な能力があるからか、今日の日常は非日常に変わった】