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3章


3時限目は体育だ。


普段は能力を使わない彼だが体育では能力を使う事が多い。


彼の能力は体育の授業においては無類の強さを発揮出来る。


例えば、野球で時間の進む速度を遅くすれば、どんな豪速球だとしても比喩ではなく止まって見える。


また、50m走でも時間の進む速度を遅くすれば、世界記録を狙える程に速く走る事が出来る。


しかし実際には、平均を多少上回る程度になるように調整する事で違和感をなくしている。


なぜなら、体育の授業でヒーローになるよりも平穏な暮らしを守る事こそが彼にとって大切だからだ。


そのため、時間の進む速度を遅くしていると言っても本来の93%程度の速度だ。この比率が彼の経験から導き出した誰もが違和感を感じない比率なのだ。


ちょうど良い機会なので、ここで彼の能力を少し説明しておこう。


彼の能力を数的に表現するのであれば、普段の時間の進む速度を100とした時、時間の進む速度を0以上の任意の実数の値に変更出来るという能力だ。


そして、変更された時の流れの中で彼だけは普段通りの行動が出来るのである。


故に、時間の進む速度を遅くするという事は相対的に彼の動きは速くなるという事であり、時間の進む速度を速くするという事は相対的に彼の動きは遅くなるという事である。


彼の能力使用に時間的に制限はない。時を止めようと思えば理論上いつまでだって止められるだろう。


しかし、先程も説明したように彼はその止まった時間の中で普段通りの時の流れを体感する。


すなわち、止まった時の中で彼は普通に歳をとるのだ。


そのため、時を止めたり、進む速度を遅くしたりし過ぎると相対的に寿命は短くなってしまう。逆に時の進む速度を速くすると相対的に寿命は長くなるのだ。


さて、能力の説明はこの辺りで終わっておこう。


そんな能力を持つ彼が参加する今日の体育の内容は1500m走、彼の苦手な競技の1つだ。


なぜ彼は1500m走が苦手なのか。


タイムで見れば他の競技と同様に能力を使う事で向上させられる。


だが、この1500mを走るという行動自体は、時の進む速度を変化させたとしても必ず体験しなければならないのである。


つまり、あれ程までに優秀な能力を持っていながら、1500mを走る疲労は他の全員と同様なのである。


従って、彼は能力を使っても(ほとん)ど得をしないこの競技が苦手なのだ。



【彼に特別な能力があろうと、事は都合良く運ばない】

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