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記憶か夢か二重人格?  作者: 初老喜多
4/5

っ!お仕事ですね?

「アイツ」視点ですね

「・・・というわけだけどな。おいっ、聞いてんのか?」



あぁ、「兄貴」と電話中だったようですね。

「はい、聞こえてます。とりあえず先方に顔出してみますよ。落としどころは、どの辺を考えてます?」

「おぉ、やっと仕事モードになったな。そうさなぁ。100で済めば助かるが、ギリギリ300までは即金で構わんよ。勿論、その場合はお前が法務局まで同行して申請を完了させるんだぞ。」

「了解です。じゃぁ、明日朝いちばんで解除の申請書をもっていってきます。」

「じゃ、頼んだわ。」




スマホを確認。3月31日か。2か月ほど戻ってるわけですか。

ここのところは「御呼び」がなかったのですが。

「彼」は対人スキルに不自由なところがありますからね。

この手の案件では私の出番ということでしょう。

さて書類仕事のまえに手帳のチェックを。



3月31日 土曜日

母を認知症外来に連れていく 来月介護保険の更新があるので、その前に担当医師とすり合わせ

やっぱり要介護2は無理っぽい 診察料金370円 駐車場が100円 その後アヤと晩飯11時前に帰宅

現金58,091円



ふむ。

アヤさんですか。

彼女もリハビリ専門医になったそうですから、有益なアドバイスでももらったのかもしれませんね。

良いことです。



さて、書類仕事は「彼」がやるでしょうから、案件の情報を整理しておきましょう。

今回の仕事は開発予定地内の訳アリ物件の整理ですか。

土地の所有者Aさんは、こちらに売却することを同意しているが、その土地(農地)に「条件付き所有権移転の仮登記」がついているわけですね。

昭和36年にAさんのおじいさんが田んぼを担保に6万円を貸金業者から借り入れ。

担保を設定したまま、返済がされず、やがて所有権移転の仮登記まで設定されていると。

まぁ、よくある話です。無理に取り立てずに年利15%ほどで膨らませていれば雪だるまでドンドン元利金は膨らんでいきますよね。

取り立てなくても適当な時に債権放棄すれば税金対策になるわけです。

税金は利益に対して発生するのに債権放棄で元金の何倍もの税金が帳消しになるのですから、貸金業者の側は全然困りませんよね。

債務者にしてみても、元金どころか利息を取り立てられもせず、もともと無くしたつもりの農地が金になってるわけですからね。

農地が坪当たり30万円で取引されたバブルの時代ならともかく、1反30万円の今ではWINWINの取引ってやつですね。

これなら「兄貴」の言うとおり100万円くらいでOKでしょう。



翌朝「彼」が準備してくれた書類をもって先方の事務所にお邪魔します。

「朝から失礼します。私Aさんの代理人で伺いました。」

何やら古風な事務所ですね。

「う~ん?A?」

こちらの差し出した封筒から書類を出しながら下から睨みつける感じの社長さん。

事務所だけじゃなく社長さんご本人もレトロな方のようです。

「あ~ぁ。この田んぼか。で、あんたンとこは何処の筋なの?」

「筋と仰いますと?」まぁわかってますが、ここは知らないふりで。

「うちにこんなもの持ち込んで来てンだから、どっかの尻持ちがついてんだろ?」

「あぁ、そういう筋ですか?いいえ、私どもは斬新な経営方針を採用しておりますが、すべての法令を遵守しておりますし、コンプライアンスには注意しておりますので、いわゆるそういう筋とは関係ございません。」

「本当かい?」

「はい。ご不審でしたら県警のデータベースでご確認くださってもかまいませんよ。(にっこり)」

「だったら、とりあえず2000万持ってきなよ。話はそれからだな。(にやり)」

「さようでございますか。困りましたねぇ。このお話は「林先生」と「横浜」の方で進めているお話でございまして、ご協力いただけないと、私も報告しなければならなくなるんでございますがねぇ。」

「「林先生」って、あの林先生?」

「はい。県会議員8期、県連会長の林先生でございます。」

「もしかして「横浜」って?」

「はい、「あの」横浜でございまして、本件は本部長決済の案件でございます。」

そっちの業界では「横浜」といえば日本でも3本の指に入る広域指定暴力団の本部を指す隠語です。

「林先生」もそっち業界やゼネコンにコネクションが太く、ついでに「林先生」が所属する派閥の親分は以前、国家公安委員長をやってましたね。

「っ!!あんたねぇ。バリバリ「そっち」案件じゃないの!関係ないとか、なに吹かしてんのよ?!」

「いやいや、私どもはあくまでも真っ当な仲介業者でございまして、いわゆる「反社会勢力」の皆さまとはタマタマ知り合いで会ったり、しょっちゅうお酒の席でご一緒するものの、あくまでタマタマ偶然でございまして。」

「そんなわきゃねえだろ。仕方がねえな。もともとは貸倒引当金のつもりだった債権だし。」

「ありがとうございます。このまま書類に判をいただき、必要書類をいただければ、私この場で100万円ほど「うっかり」落としてまいりますので、そちらさまは債権放棄で税務申告していただければと。」

「おっそりゃあ行き届いてるねえ。おいっ!ハンコ出せ。あと印鑑証明と書類もってこい。」

はい。一仕事終わりましたね。


その後、「うっかり」100万円落としてから失礼しまして、法務局で登記申請書類を提出してから「兄貴」にお電話。

「もしもし、いま法務局終わりました。」

「おっ。そうかい。仕事が早いなぁ。今日はそのまま帰っていいぞ。」

「はい。ありがとうございます。」

「そうだ。市役所の高齢者福祉課の方な。さっき顔出してしっかりお願いしてきたから。」

「っ!ありがとうございます。本当に助かります。」

「なに、おれはお前の名前を話してきただけだ。後のこたぁ、向こうが「忖度」するだろうぜ(笑)」

「ありがとうございます。」

「じゃあな」



はぁ。「兄貴」はこういうところが敵わないですね。

「うちの人は口のきけるド―ベルマンみたいなもんよ。連れて歩いてると勝手に向こうが道開けてくれたり、何かしてくれるの。いいから便利に使っちゃいなさい(笑)。」

奥さんが言ってましたが、その通りですね。

そのうえに、こうやって先回りしてくれるんですから。

「彼」も頭が上がらないわけですよ。


さて、帰ったら直ぐ手帳に今日の出来事を書いておかないと。

早く済ませないと私が両親の晩御飯を作る羽目になりますからね。

料理や洗濯の手際だけは「彼」に勝てそうもありませんからね(笑)





もう少し続きそうです。宜しくお願いします。

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