月と円舞曲 2
これ書いていたころめちゃくちゃ某作品に影響されていたのが手に取るようにわかりますね。そんな感じの第二話です。
「貴方たちは初めましてね。私はルナ、ルナ・ガーディアノよ。
そしてここに来たということは私と利害の一致を認めて、私の駒となってくれるのよね」
ガーディアノさんは僕たちを見回す。僕たちは首を縦に動かした。それを確認した彼女は話を続けた。
「それじゃぁ確認するわね。まず、貴方たちにはこれから、対戦相手が創った世界を舞台にした推理ゲームに参加してもらうの。そして、そこで出される謎を六人で協力して正解を導く。無事正解にたどり着けたなら、報酬として貴方たち――特に杏珠、翼、唯、水藍は私の力、運命干渉によって一番幸せな世界でやり直すことができる」
「ちょっと待てよ!」
リーヴルさんと来た茶髪の男子がガーディアノさんの話を遮った。
「それじゃぁ俺たち何にも得しないじゃないか。俺たちは元の場所に戻るためにここに来たんだぜ?」
「それは分かっているわよ。それでも私は冬馬の力が必要なの。それに、冬馬だって一度は願ったこと無い? 人生をやり直したいって」
その言葉を聞いて彼は黙った。恐らく図星なのだろう。
「さて、話を戻すわね。これから私たちが対戦する敵、スフィアの創った世界である孤島が舞台よ。詳しくは向こうに行く間に情報を直接記憶に組み込むから安心して。なにか質問が無ければ三十分後にゲームを始めるわよ」
みんなあっけにとられていた。
そりゃそうだ。僕だって最初にガーディアノさんから話を聞いたときは、何度も話を止めて説明をしてもらってようやく少しだけ理解できた。初めて聞いて理解できる人はいないに決まっている。
そう思っていると、白髪の女の子が小さな身体一杯に飛び跳ねて自身を主張した。
「とどのつまり見ず知らずのボクたちは協力しあう必要があるのですよね? でしたら自己紹介の一つでもするべきだと思いますです。仮にボクと冬馬が無害を主張したところで、誰も信じてくれないのでしょう?」
彼女に言われてようやく気が付いた。僕たちはお互いをまったく知らないということを。確かに名前も素性も知らない人間と協力しろと言われたって無理な話だ。
「……そうね、じゃぁ初めは華華。言いだしっぺなんだし」
ガーディアノさんに促され、白髪の少女は元気よく返事をした。
「はい! ボクは華華と申しますです。冬馬の住んでいる町で祀られている縁の神様なのですよ。お次は冬馬なのです」
「えっ、あっ、えーと春野冬馬、中学三年生、です」
華華さんは得意げに自己紹介を済ませた。それにしても、こんな幼い子が自ら神を自称するなんて、なんというか……変わっている子だな。喋り方も特徴的だし。
一方春野冬馬――春野くんは華華さんと違って落ち着いている印象を受けた。彼ならある程度頼りにしても良さそうだな。
「次は俺か? 十文字翼だ。十七で高校二年生」
「……久留里杏珠、十三歳よ」
続いてシュシュと共に来た二人がそっけなく自己紹介を済ませる。
顔つきや髪の色から推測するに、二人は兄妹の様だけれど妹であろう久留里さんは名字が違うのは、きっと何か事情があるのだろう。
この二人も頼りにすべきだろうけれどそれ以上に取っつきにくい。僕が人と話すのが苦手だと云うことを差し引いても、近寄りがたい雰囲気が二人にはあった。
「水藍です、一応十六ということになっています。よろしくお願いします」
水藍も丁寧に自己紹介をした。へぇ、水藍って設定上は十六なんだ。
「っと、あ、僕かな? ぼ、僕は葉月唯。えっと、僕も十六歳…です。その、よろしく、お願いします」
殆ど人生初と言っても良い自己紹介を終え、一息つく。
春野冬馬くん、華華さん、十文字翼さん、久留里杏珠さん、水藍と、それから僕、葉月唯の六人。
これで一応全員の顔と名前、それから華華さん以外の年齢が公開されたことになる。
そういえば偶然なのか、はたまたガーディアノさんの意図なのかわからないけれど、華華さんを除いて全員学生なんだ。
「終わった? なら少し早いけれど出発しましょ。それじゃぁ頑張ってね」
そう言ってガーディアノさんが指を鳴らすと、僕らの足場がぽっかり無くなり、支えを失った僕らは重力に従って穴の中へと落ちた。
◆
春野冬馬
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」
重力に従って下へと急降下を続ける俺たちは、真っ暗な底へとひたすら落ちて行った。これ、終わりあるのか?
そんな不安がこみ上げた頃、それを払拭してくれる地面が眼下に迫ってきた。
ってこれ、落ちたら死ぬんじゃね? いや、絶対死ぬだろ!畜生ルナの奴め、戻ったら絶対一発殴ってやる。いや、戻るときは幽霊か。
「うげっ!」「いたっ!」「うわっ!」
お世辞にもきれいとは言えない男子による三重奏。俺の上に唯さんと翼さんが落ちてきたらしい。良かった、生きている。というか女子たちはどこだ? 確認しようにも、上が重たくて仕方がない。とりあえずどいてもらいたいかな。
「あ、あの……、お、りてくれ、ま…せん、か……」
「あっ、悪い」
「わっ、あっ、ご、ごめんなさい!」
それぞれ謝辞の言葉を口にしながら順番に俺の上からどいてくれた。死ぬかと思った……。
圧力から解放された俺は、土埃を払いながら改めて周囲を見回した。
久留里と水藍さんは何事もなかったように立っており、華華はちょうど着地をしたところだった。そう言えば華華は飛べるんだったな。でも、二人はどうしたんだ? まさかこいつらも飛べるわけ……ないよな。
なんて実に失礼でバカバカしいことを考えながら気づく。ここがどこか俺の知らない場所だということに。
どうやらここはどこかの海岸の様だけれど、海は大荒れで直ぐにでも一雨きそうな天気だ。
「ここがその舞台ってやつか」
「そうだと思うのですよ。そして、きっとゲームマスターが来ると思うのです」
「ゲームマスター?」
聞きなれない単語が華華の口から零れた。
「はい、ゲームがシナリオ通りに進行するためにプレイヤーを誘導する人物であったり、ゲームの管理人だったりと少しずつニュアンスは変わりますが、共通している部分としてゲームの製作者であることが挙げられるのです」
華華の説明を受けてなんとなくだけれど理解した。他の五人も同じらしい。
「失礼します。ガーディアノ家のお使いの方々でよろしいでしょうか?」
背後から声がして振り返る。そこには少し年上のような女性の姿があった。いつの間にここに来たんだ? 話をしていたとはいえ、ここまで気配に気づかないなんて。少し寒気がしたのは天気のせいだろうか。
「はい、ボクたちはルナ側のプレイヤーなのですよ。貴方がゲームマスターなのですか?」
華華が俺たちを代表して答える。
「いえ、私は親方様――貴方方の言うゲームマスターにお使いしている瑠璃と申します。以後お見知りおきを。さて、親方様がお待ちです。此方へどうぞ」
瑠璃と名乗る彼女を先頭に内陸の方へと進んでいく。
たいして手入れのされていない森を抜けると、そこには豪華な庭園と館があった。
「綺麗……」
唯さんがため息をついた。確かにここは今まで見たそれらよりも遥かに凄かった。
「お気に召していただけましたか? この庭園はこの館の名物でもあるんですよ」
「とても素敵なのです」
華華が感想を述べると、瑠璃さんは有難うございますと返した。
「あちらに見えますのが親方様である弓散伊喜利様のお屋敷です。もう他の参加者様はご到着なさっていますよ」
他の参加者……。ルナ以外にも俺らみたいなのをゲームの世界に送り込んだ奴がいるってことか。
再び瑠璃さんを先頭に歩き始め、館の中に通された。
館の中は豪華な外見同様、豪華な装飾品で着飾られていて中世の館を彷彿とさせた。
大広間を抜け、瑠璃さんが重たげなドアを開けるとそこは食堂だった。テーブルクロスを掛けられた長机にずらりと並んだ椅子は、左右に六脚ずつと、所謂誕生席に一脚。左側と真ん中の席には既に人が座っていた。彼らが他の参加者だろうか。
瑠璃さんに促されて俺たちも右側の席に並んで着く。全員が席に着くと、真ん中の人――どういう訳だか布で顔覆い隠している――が話し始めた。
「ようこそわが館へ。私は頭首の弓散伊喜利だ。さて、君たちにはこれからゲームを行ってもらいたい」
「ゲームって具体的になんなんだい」
俺の目の前に座ってトランプで遊んでいた男性が質問を投げかける。
そして弓散氏はそう来ると解っていたのか、すぐに答えた。
「それは部屋に入ったらわかる」
あくまで公言を避けるつもりらしい。何故そんなに隠したがるんだ?
「さて、それでは各々部屋に案内させよう」
誰も異論を唱えることはなかった。大方、展開が急すぎて何が分からないのか分からない状態に陥っているのだろう。少なくとも俺がそうだ。
その後、瑠璃さんに連れられて俺たちは男女で分けて大部屋に案内された。子どもはなるべく同じ部屋にという弓散氏の意向らしい。
「何か不自由がございましたら何なりとお申し付けください。召使は私の他に六人ございますので」
「あ、あの、他の参加者の事聞いてもいいですか?」
「……申し訳ございません。ご主人様の御意向により、その手の情報は全て皆様がご自分で手に入れるようになっております。私どもの口からお教えすることのできるのはお客様方のお名前のみとなっております。ご了承くださいませ」
葉月さんの問いに瑠璃さんは申し訳なさそうに答えた。
自らの手で情報を手に入れる。これも『ゲーム』の一環なのか……?




