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短編集

猫と彼氏

作者: 潮風迷子

猫はかわいい。


わたしがかわいいと感じるから、猫はかわいいのだ。そうなのだ。それでいいのだ。それなのに、


心理学的見地カラ言ワセテモラウト目ノ大キナ猫ハ人間ノ保護本能ヲ刺激スル外見ヲシテオリ


うるせーよ。そんな理由付けを誰が頼んだ。猫はかわいい。それでいいじゃないか。まったく興醒めだ。かわいいと思う理由なんか知りたくもない。それ以上蘊蓄を垂らし続こうものならわたしはお前を許さない。肉球で殴られて死にたいか?


ああ、猫はかわいい。でも彼氏はかわいくない。


典型的な理系男子を彼氏に選んでしまったこの過ち。悔やんでも悔やみきれないし、まあ悔やんでも仕方ないけれど、それでもつい悔やんでしまう。彼氏と違って、この猫は何も言わない。ただ黙ってわたしに撫で回される。うん、猫様は素晴らしい。あっ、欠伸した。呑気なやつだ。その気になればわたしはいつでもお前をカッターナイフでビチビチと滅多刺しにできるのに。安心しきりやがって。かわいい。超かわいいよ。


彼氏がトイレから戻ってきても、わたしはあからさまに彼のほうを見ようともせずにただ猫をいじくり回し続ける。すると突然、わたしの膝にモサッとしたなにかが乗り上げた。下を見れば、そこには下唇が斜めに突き出た表情。あーもう、かわいくない。まったくお前は顔はいいくせにかわいくないよ。すぐ無条件降伏して甘えやがって。そういうところ、かわいくないぞ。気の利いた言葉なんてついぞ言ったこともない癖に、そういう手段に出るのは得意なんだから。あーもう、犬みたいに仰向けになりやがって。わたし猫派なんだけど。おいおい、泣きそうな顔すんなよ、笑っちまうじゃねーか。せっかく久しぶりに会えたのに生理中でごめんな。本当に。


わたしは猫を放り投げた。


窓の外から射し込むあたたかな斜陽が、膝の上の茶髪と四角い眼鏡のフレームをオレンジ色に塗り替えている。そろそろお皿を洗おうかな、それにしても今日のハンバーグは美味しかったな、料理の上手な彼氏を捕まえて妾は幸せ者じゃな、なんて考えながらわたしは彼氏の耳を掘り続けた。

@q@「後書きです」

*w*「なんだろうねこの緩い話」

@q@「特にオチもない妄想話だね」

*w*「何故そんなものを書いたし」

@q@「うーんとね、僕のリア充に対する妬み嫉みを話の流れに滲ませたかったんだけど、失敗した。めんどくさい主人公ちゃんにめんどくさい結末を用意してあげるのが幸せかなと思って、ハッピーエンドっぽくしたよ。これが精一杯の僕の悪意」

*w*「何言ってるかよく分かんないや。一度精神科行ってみることをお勧めするよ。ちなみに猫派?犬派?」

@q@「僕は断然犬派です」

*w*「あっ…そう…」


-


言わずもがなですが、本文中に出てくる「蘊蓄を垂れる」は誤用であります。

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