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「Prologue」
あのときは、夏でした。
小説の初めでこのフレーズはよくないのですが、これしか言うことはありません。
とにかく、セミの声が耳を貫き、死ぬほど暑い夏でした。確か、家族でキャンプに行っていたんだと思います。私たちの家からだいぶ離れ、人気が少ないキャンプ場。あのとき山の中で私たちだけだったので、楽しいキャンプのはずなのに不安でした。
ですがそこは自然が溢れ、比較的涼しく、川もある、キャンプにちょうどいい場所でした。私は弟と川で遊び、父はBBQの準備をし、母は綺麗な花で栞を作っていました。もう不安なんて、どこかに吹き飛んでいたと思います。
ですが、家族で花火をしていたとき、起こったのです。弟が消えるという自体が_____。
私は必死に探しました。傷だらけ、水浸しになりながらも。しかし、弟は見つからないまま、一夜が過ぎてしまったのでした。
そして次の日。私は朝っぱらから、弟を探しました。やはり、どこを見ても探しても、弟は見つかりません。
あの『館』を見つけたのは山の奥の奥を探していたときでしょうか。
私は、一つの館を見つけたのです_______。