最近のテレビは、ここまでやらかしてくれるのか!
テレビが壊れた。
ふざけんな。と思ったが、仕方がないので買い替える事にした。
俺は割とテレビを見る方なので、ボーナスを吹っ飛ばす覚悟で高性能テレビを購入。
安物買いの銭失いは御免だった。
高い買い物だったが、まあ、仕方ないと割り切っている。
「最新式AI搭載のテレビだったか……」
AIが色々とサポートしてくれるらしい。
購入から一週間程経っているが、仕事が忙しかったので、真面にテレビを見るのは今日が初めてだ。
朝のニュースくらいは見ていたが、AIがいかされる場面は無かった。
『視聴予約をしていた番組が始まります』
AIの案内が聞こえてきた。
視聴予約をしておけば、音声で案内してくれる様だ。
「久しぶりにゆっくり見られるな……」
楽しみにしていた番組だ。
『成り行き学生探偵』という推理もの。
普通の学生が事件に巻き込まれ、成り行きで犯人を突き止めるという内容だったはずだ。
確か、元は映画で、地上波での放送は初になる。
『番組の概要をお教えしますか?』
そんな機能もあるのか。
せっかくだ。ちょっと聞いてみよう。
「概要を教えてくれ」
『はい。お任せください』
主演俳優とか、監督とかを教えてくれるのだろうか?
少し楽しみだ。
ワクワクとした気持ちでAIの言葉を待つ。
そして、AIの概要説明が放たれた。
『犯人はヤスです』
「ちょっと待てぇぇぇぇぇっ!」
腹の底から声が出た。
しかし、俺は決して悪くない。
「推理もので、いきなりネタバレする奴があるか!」
『承知しました。ネタバレ機能をオフにします』
「最初からオフにしとけ! デフォルトでオンにするな!」
何を思って出荷状態でこの機能をオンにしているか。
メーカーの意図が理解できない。
ある意味、テロ行為に近かった。
「クソッ……。もう、見る気にならねぇ……」
思わず声が漏れる。
ネタバレを喰らった推理ものを見るテンションではなかった。
『それでしたら、ハードディスクを整理したらいかがでしょう?』
「は?」
また、声が漏れた。
ハードディスクの整理も何も、このテレビを購入してから録画などしていない。
強いて言うなら、これから始まるネタバレを喰らった推理ものの録画予約を一応入れているだけだ。
『AIによる、自動録画機能でハードディスクがいっぱいです』
「勝手に録画したの⁉」
便利な機能なのかもしれない。
しかし、ハードディスクがいっぱいになる程に勝手に録画するのはどうかと思う。
そもそも、何を根拠に勝手に録画をしたのか?
それが疑問だった。
『録画一覧を表示します』
「………………」
思わず突っ伏した。
ハードディスクいっぱいの録画。
そこに表示されていたのは……
「ニュース番組ばっかじゃねぇか!」
何? 俺は、AIにニュース番組好きと認識されているか?
確かに、このテレビを購入してから、朝のニュース番組くらいしか見てなかったけどよ!
『女子アナがお好きなのではないのですか?』
「女子アナ目当てにニュースを見てねぇよ! ニュースを見てるんだよ!」
ニュース番組イコール女子アナ目当てという認識はどうかしていると思う。
このAI、俺を何だと思っているか?
『占いでもしましょうか?』
「何で急に占い!? 脈絡が無さすぎるだろ!」
『朝の占いを欠かさず見ていますよね?』
「占いを目安に出勤してんだよ! 占いが好きな訳じゃねぇよ!」
偏見が過ぎるだろ。
購入から大して時間が経ってないから仕方が無いのかもしれないが、AIの分析がいい加減にも程がある。
「………………」
正直、このAIの相手をするのに疲れた。
何で高い金を払ってこんな思いをしなければならないのか?
そうも思うが、愚痴っても仕方がない。
「……とりあえず、ニュース番組の録画は消してくれ」
『承知しました』
「……あと、せっかくだ。占いもしてくれ」
この際、使える機能は使い倒してみよう。
AIに色々と学習させないと使い物になりそうにないしな。
『承知しました。今日の運勢をお教えします』
「ああ……」
『顕微鏡座の貴方の運勢は……』
「顕微鏡座!? 俺、顕微鏡座なの⁉」
『今日は斜め後ろです』
「どんな占いだよ⁉ 何も分からねぇだろ!」
『避けるべきものはAI』
「知ってる! 思い知らされてるよ! 現在進行形でな!」
『ラッキーポイントは占いに如きに惑わされない心です』
「お前が始めたんだろ! お前が始めた占いだよ!」
喧嘩売ってんのか?
何で勧められて始めた占いで、占い如きに惑わされるなとか言われなきゃいけないんだ。
『お役に立ちましたか?』
「立つか! 立ったのは腹だけだよ!」
もう嫌だ。このAI。
正直、AIをオフにしたいが、そうすると高い金を払った意味がなくなる。
どうするべきか?
そう思案していたら、ふと、思い出した事があった。
「そういえば……、ネットに接続してたよな……?」
『はい。動画サイトなどで、貴方に合った動画をお勧めできます』
思わず出た呟きに、AIが律儀に返してくる。
この際、動画サイトで動画を見て、俺の趣味などを学習させた方が良いかもしれない。
多分、テレビ番組で無くとも学習してくれるだろう。
「……よし。動画サイトを表示してくれ」
『はい。動画サイトを開きます』
その言葉通りに動画サイトが表示される。
普段はパソコンやタブレットで使用する事が多いが、テレビで使用する事に抵抗がある訳じゃない。
ここで、俺好みの動画を見れば良いだけだ。
「とりあえず、お勧めの動画を表示して」
『はい。任せてください』
すぐに動画の検索が始まる。
今現在のAIの認識を確認するためにも一度は見ておきたい。
『こちらがお勧めの動画です』
AIがそう言って、動画を表示する。
そして、表示された動画を見て、俺は思わず崩れ落ちた。
そんな俺の気持ちなど考えずにAIが言う。
『『AIとの上手な付き合い方』を再生しますか?』
その言葉を聞いて俺は……
「お前が歩み寄れぇぇぇぇぇっ!」
全力で怒号を上げた。




