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『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


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第十六話 「“強い人”が壊れる時って、大体“誰にも弱音を吐けない状態が長すぎた”場合なんですよね」

 

 黒い裂け目が軋む。



 魔王城玉座の間。



 重力そのものが濁ったみたいに、

 空気が重い。



 “外側”の顔は、

 歪み続けていた。



『理解不能』


『非合理』


『感情的』



 その声は。



 さっきまでの優しさが嘘みたいに、

 冷たかった。



 ノベェンタは静かに剣へ触れる。



「……はい。そこなんですよね」



 灰色の瞳。


 ゆっくり細まる。



「“外側”って、“孤独”や“絶望”はかなり正確に模倣できるんです。でも、“面倒なのに関係を続ける人類”の挙動理解がまだ浅い。あと人間関係って、効率だけで見るとかなり意味不明なんですよ。“喧嘩したのに翌日普通に飯食う”“文句言いながら助ける”“もう嫌だって言いながら離れない”とか、論理だけだと説明難しいので。ちなみにオオカミ、群れ内で喧嘩しても数十分後には普通に寄り添って寝たりします」



 リゼが眉をひそめる。



「オオカミの仲直り速度だけ妙に参考になるのやめてほしいんだけど……」



 その時。



 ギルゼイドが頭を押さえる。



 黒いヒビ。



 まだ消えていない。



 むしろ。



 “外側”は、

 彼の内部へ深く根を張り始めていた。



『お前は疲れた』


『誰も本当は理解していない』


『強者は孤独だ』



 ギルゼイドの呼吸が乱れる。



 魔力が漏れる。


 床が軋む。



 魔王軍四天王。


 世界最強クラス。



 だからこそ危険だった。



 強すぎる存在は、

 “弱れない”。



 リゼが顔をしかめる。



「ギル!」



「来るな……!」



 声が荒い。



 玉座の間の壁へ、

 黒い亀裂が走る。



 兵士達が震える。



 だが。



 ノベェンタだけは静かだった。



「……なるほど。典型的ですね」



 リゼが横を見る。



「何が?」



「“強い側の孤立”です。人類社会でも、責任ある立場ほど“弱音吐く場所”消えやすいので。管理職とか親とかリーダー職って、“支える側”固定されると急速に壊れ始める。あと“頼られる人ほど助け求めるの下手”現象かなり普遍的なんですよ。“自分が崩れたら終わる”って思考入るので。ちなみにシャチの群れ、年長個体の知識喪失で狩り効率かなり落ちるらしいです」



 ギルゼイドが苦しげな顔のまま呟く。



「シャチの話が頭に残るせいで、絶望に集中できんのだが……」



「認知負荷緩衝材です」



「便利概念みたいに使うな!」



 “外側”が笑う。



 今度は。



 ギルゼイド自身の声で。



『見ろ』


『誰も近づけない』


『誰も本当には支えられない』



 黒い霧。


 侵食。



 玉座の間全体へ、

 “諦め”みたいな空気が広がっていく。



 兵士達の顔から表情が消える。



 危険だった。



 これは。



 “感情伝染型”。



 集団へ広がるタイプ。



 リゼが杖を握り締める。



「最悪……空気ごと折りに来てる……」



 その瞬間。



「ダメ!!」



 リゼが叫んだ。



 全員止まる。



 リゼはギルゼイドを睨む。



「このバカ、昔からこうなのよ!!」



「……何?」



「一人で抱え込んで、“俺が何とかする”って顔して、勝手に限界になるの!!」



 ギルゼイドの目が揺れる。



 リゼは怒りながら続けた。



「この前だって、魔界北部の暴走竜一人で止めに行って三日寝込んだくせに、“問題ない”とか言ってたじゃない!!」



「……あれは職務だ」



「職務なら死にかけていいわけじゃないでしょ!?」



 黒いノイズが少し揺らぐ。



 ノベェンタは静かに観察していた。



 そして。



 小さく息を吐く。



「……やっぱり人類寄りですね」



 ギルゼイドが苦しげに眉を寄せる。



「今その分析いるか……?」



「“本当に危ない時ほど、説教してくる側”です。人類、“完全に見放した相手”には怒らなくなるので。“ちゃんと怒る”って、実際かなり関係維持エネルギー高い行動なんですよ。あと夫婦喧嘩とか、心理学的には“無関心”段階の方が危険視されるケースあります。感情動いてる内は、まだ相手へ期待残ってるので。ちなみにカラス、仲間死ぬと集団で集まる行動あります」



 リゼが遠い目をした。



「なんで毎回、鳥類の情緒で人類理解が深まるのよ……」



 だが。



 ギルゼイドの呼吸が少し変わる。



 黒いヒビ。



 微かに。


 揺らぐ。



 “外側”が低く唸った。



『理解不能』


『何故そこまで干渉する』


『非効率』



 リゼが即答した。



「好きだからに決まってるでしょ!!」



 沈黙。



 空間停止。



 ギルゼイドが完全停止した。



「……え」



 リゼも止まる。



「……あ」



 数秒。



 完全沈黙。



 玉座の間の兵士達まで静止した。



 そして。



 リゼの顔が真っ赤になる。



「い、いや違っ、そういう意味じゃなくて!!」



「リゼ」



「仲間として!! 仲間としてだから!!」



 ギルゼイドが小声で呟く。



「……その補足で余計意識するやつだろ……」



 ギルゼイドの黒い侵食が、

 一瞬止まった。



 “外側”が揺れる。



 理解できない。



 そんな風に。



『……矛盾』



 ノベェンタは静かに笑った。



「はい。そこなんですよ」



 黒い剣を抜く。



 カチ。



 空間が震える。



「人類、“合理的説明できない関係性”で世界維持してるので。“家族だから”“好きだから”“なんか放っておけないから”で動く個体、文明維持にかなり重要なんですよ。あと歴史上の英雄とか革命家も、“損得だけなら絶対やらない行動”結構してるので。人間、論理だけならここまで社会形成できてない可能性あります。ちなみに犬、人間の感情同期しすぎて、飼い主落ち込むと一緒に元気なくなる個体います」



 リゼが肩を落とす。



「犬だけ毎回ちょっと泣きそうになるからズルいのよ……」



 ノベェンタは裂け目を見据える。



 灰色の瞳。



 静かな声。



「“外側”へ、人類の一番厄介な部分見せます」



『厄介』



「はい」



 ノベェンタは、

 少しだけ笑った。



「“面倒臭いのに他人を見捨てきれない習性”です」

ちなみにWeb小説文化における「ブックマーク」と「評価」、あれ単なる数字だと思われがちなんですが、創作者側から見ると実際には“遠隔地から飛んでくる救援物資”にかなり近いんですよね。


 人類、基本的に「誰にも読まれてないかもしれない状態」だと精神がじわじわ乾燥するので。


 特に連載形式。


 これかなり特殊文化です。


 一話ごとに感情を切り売りし、

 伏線を管理し、

 設定を忘れないよう脳内サーバーを常時稼働させ、

 しかも「前回より面白くしなきゃ……」という自己圧力まで発生する。


 創作者、だいたい途中で“締切竜”とか“PV亡霊”とか“この展開滑ったかもしれない魔王”と戦い始めるんですよ。


 あとWeb小説作者、“感想欄で好きなシーン褒められる”と異常回復します。MMORPGで言うと、「産廃だと思ってたビルドを上位勢に褒められた瞬間」くらい脳汁出る。逆に「誰も触れてくれない伏線」、深夜に布団の中で静かに刺さり続ける。


 人類、承認欲求というより、“存在確認”で生きてる節あります。


 なので。


 ブックマーク。


 評価。


 感想。


 レビュー。


 これ全部、“読んだよ”という現代型の焚き火信号なんですよね。


 特にブクマ、「未来の自分がまた読むかもしれない」って意思表示なので、創作者側から見るとかなり嬉しい。“この物語、ブラウザ閉じた後も少し残ったんだ……”ってなるので。


 あと評価ポイント上がると、作者わりと静かにニヤけてます。


 表面上は真顔でも、

 内心「ウオオオオオ!!」ってなってる。


 人類、意外とチョロい。


 ちなみにWeb小説文化、“好きな作品へ石を積む文化”にかなり近いです。ランキング、レビュー、拡散、二次創作。この辺全部、「この作品まだ続いてくれ」の集合祈祷なんですよ。


 なので。


 もしこの物語が、

 あなたの現実HPを少しでも回復できたなら。


 ブックマークや評価など頂けると、

 作者のMP・継続率・情緒安定性・次話生成速度がかなり上昇します。


 たまに“今日もう書くの無理か……”状態から、

 ブクマ一件で復活するので。


 創作者という生物、

 想像以上に単純な燃料で動いています。

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