表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/9

第5話 幼女救出と、俺の社食フリーパス

翌朝。

また満員電車に揺られながら、俺は昨日のニュースの続きをスマホで検索していた。

有害物質の記事は更新されていない。

原因不明のまま、調査中。

……本当に俺のせいなのか?

そんなことを考えながら、俺は電車から降りてホームに立つ。

次の瞬間。

小さな女の子が、ホームの端でつまずいた。

スマホをいじりながら歩いていた母親は気づいていない。

女の子はバランスを崩し、線路側へ――。

反射的に、時間停止。

世界が静止する。

俺は走った。

止まった人波をかき分け、ホームの端まで。

落ちそうになっていた女の子を抱き上げ、母親の横に戻す。

女の子の体は軽かった。

そして柔らかかった・・・。いや、待て待て。

これは人道的な救命活動であって、やましい気持ちで幼女に触れたわけじゃない。

誓ってやましい気持ちなどないことを、ここに宣言する。

とはいえ、不可抗力とは言え幼女の体に触ってしまったことに関しては、俺と君たちとの秘密だ。いいね?

そこのロリコン読者、羨まけしからんとか言わない!

時間再開。

女の子は母親に抱きついて、泣き出す。

母親は慌てて娘を抱きしめ、周囲を見回している。

誰も気づいていない。

ダメだぜ?ママさん、子供はしっかり見ておかないとな。

俺は心中で格好をつけながら、平静を装って、改札へ続く階段を降りて行った。

ふぅ、朝一のスプラッタが回避できて本当によかった。

俺、グロいのは苦手なんだよね・・・。



会社に着いてデスクに座ると、

昨日声をかけてきた先輩が近づいてきた。

「あら佐藤くん、今日は平気そうね? 昨日は顔色悪かったけど」

幼女救出のおかげですっかり忘れていたニュースのことを思い出してしまった。

顔が青ざめるのを抑えきれず、

「あ、はい・・・まだちょっと寝不足かな・・・」

と曖昧に返した。

様々な想いが去来する。

有害物質、時間停止能力者複数説、タイムパトロール・・・、いやタイムパトロールに関してはそんなに心配する必要もないか。

何とか気持ちを押し殺して、昼休憩まで仕事をこなす。

昨日とは違う意味で待ちに待った昼休憩、社員食堂は原則スマホ禁止となっているため、今日は職場近くの黄色と赤のハンバーガーショップで、昼⚫︎ックを食べることにした。

チーズバーガーとポテトを頬張りながら、スマホでニュースを検索。

目新しい記事は一つだけ。

『クリーンセンターでは、元々有害物質の検知値が規定値ギリギリだったことが判明。

今回の超過は、日常的な変動の範囲内か――』

……これは、俺以外にも時間を止めて分別してないゴミを投げ込んでる奴がいたのか?

自分に繋がる情報がなさそうだという余裕からか、そんな冗談を考えたけど、すぐに別の気づきが頭をよぎった。

俺の住んでる地域以外は、ゴミ分別がさほど厳格化されてないのでは?

……隣のおばさんの笑顔がフラッシュバックし、強烈に引越ししたい衝動に駆られる。今この瞬間だけは時間停止を悪事に使うことも辞さない程度の暗い感情が芽生えるが鋼の心でそれを抑え込んだ。


よし、一旦落ち着いた。


とりあえずは、目撃者もいない(はず)。自分につながりそうな情報もない、そこまで分かった俺は、安堵して会社に戻り午後からの仕事に取り掛かった。

そんな折、経理部長の君嶋に呼び出された。

部長室に入ると、君嶋部長が真面目な顔で座っている。

「やあ佐藤君、来月社内でレクリエーションがあるんだが、テニス大会に出てくれないか」

……テニス?

経理部は人数が多くない。

そこそこ若くて体力ありそうな人間は、俺と田辺さん、後二人くらいしかいない。

要請というより、半ば命令みたいなものだ。

「優勝賞品として有効期限3ヶ月の社員食堂フリーパスが出るんだが」

……フリーパス?

唐揚げ定食が毎日無料。

出勤日数70日と仮定して、350×70なら24500円。いやいやいやいや、せっかくフリーパスなんだし、普段なら絶対頼まないスペシャルランチ500円だって食べ放題だ。

よっしゃ!俄然やる気が出てきた。

まあ、俺の能力があればテニスぐらい何とでもなるよな。

時間を止めて、ボールを自由に操作。

相手のサーブを止めて、ゆっくり返球。

完璧な無双ができる。とはいえ目立ちすぎるのも良くは無さそうだし、いい具合に調整は必要だろうな。

「わかりました! 喜んで参加します!」

二つ返事で引き受けた俺に、

君嶋部長は少し驚いた顔をした。

……部長は知らない。

俺が、どれだけ本気か。

スコー⚫︎・ドッグの費用捻出のため食費の節約、流石に15万にはまだ届かないが、そこそこいい金額だ。

……いや、待てよ。

これって、能力の不正使用じゃないか?

また罪悪感がチクチクと刺し始めたが、今はそれを振り払った。

まだ時間はある。

受注開始まであと5日。

テニス大会は来月。

それまでに、考えよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ