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原風景  作者: ひやとい
6/11

原風景6

スマホもない時代に派遣のバイトに行った男がひどい目に遭う話です。

 

 そうしながら、近くの店でコーヒーでも飲みながら読むか家で読むかを少しだけ考え、本屋で金を使ってしまったことでもあるので、よけいな出費は避け、用心して家に帰ることにした。決めると目の前の線が揺らぐのを見ながら、しばらくぼうっとする。

 タバコが半分ほどになったところでもみ消し、駅へ向かった。

 やるべきことをある程度終えたので安心したのか、急に足、とくにふくらはぎあたりが重く感じる。毎日のことだというのに、立ち仕事というものに、一向に慣れる気配はなかった。

 引きずりながら、高架になっている駅の改札に向かう。エスカレータがあるのが救いだった。

 ホームに着くと電車を待つ。

 沿線は、痴漢がよく出没することで有名な路線だ。

 電車が待ってから数分で来ると、どうか今日も誤認されないようにと願いつつ乗り込んだ。

 運よく席が空いているのを見つけたので座り、買って来た本をさっそく広げた。

 乗り過ごさないよう耳に神経を傾けながら内容をむりやり目に入れる。

 数駅乗るだけだから読まなくてもよかったが、他にやり過ごす方法はなかった。

 進めていくと、見覚えのある言葉がみつかる。

 

第二十条(※) 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

○2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

○3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。



 これのことだったのか。

 そう言えば、原田の時も、そして今回もそうだった。

 一ヶ月後に辞めろと。

 確かにそう言った。

 なるほど、これがあったからなのか。

 得心すると、俄然、この部分だけの見開き二頁を食い入るように読んだ。読み逃しがないようにと、ゆっくり読む。自然、顔がこわばるのが感じられた。

 何回目かの読み返しの際、ふと窓の外を見た。

 すっかりと乗り過ごしていた。

 これ以上乗り過ごさないよう、本を閉じて座席から離れ、ドアの前に立った。



続きます。

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