殺傷事件
(知らない天じょ・・・病院かな)
目が覚めると白い天井が見える。シミだらけで焦げ茶色くなっている我が家の天井ではないことだけははっきり分かる。
「あっ、良かった。目が覚めたんですね。少々お待ちください」
通りかかった看護婦さんがすぐに男性を3人連れてくる。
(病院だよなここ・・・医者とーーー誰だ?警察?)
医者は簡単に診察をするとすぐに病室から出ていってしまい、刑事さん(?)と3人で取り残される。
「こんにちは。刑事部捜査第一課の井上です。」
「田中です」
「はぁ・・・あ、吉山です・・・」
「病み上がりのところすみません。現在凶悪な還り人が都内に潜伏している可能性がありまして・・・」
その瞬間、記憶がフラッシュバックする。胸が熱い、痛い痛い痛い痛い、苦しいーーー。
「あっすみません!大丈夫ですか!?医者を呼びます、落ち着いて・・・」
胸を触る。落ち着け。大丈夫だ。何ともない。ふぅ・・・落ち着いて深呼吸だ。大丈夫。俺は生きてる。
「だ、大丈夫です・・・あの・・・あの後犯人は・・・?」
そう尋ねると2人の刑事は何やら意味ありげに目配せをする。
「そのことで吉山さんにお尋ねしたいことがあるのですが・・・」
そう言って一枚の写真を見せてくる。
「こちらの男性に見覚えはありますか?」
「うっ・・・」
吐き気を堪える。間違いない。あの時俺を刺してきた男だ。
「この方についてお話をお伺いしたいのですが・・・面識はおありですか?」
「いえ・・・ただ・・・」
「ただ?」
「多分・・・俺を刺してきた人だと・・・」
「ふむ・・・詳しくお伺いしてもいいですか?」
俺はおそらくこの男性にいきなり刃物か何かで刺されたことを伝えた。
「なるほど・・・この男性と以前にどこかでお会いしたことは?」
「ない・・・と思います・・・」
「分かりました。ありがとうございます。」
「あの・・・犯人ってもう捕まったんですかね・・・?まだ・・・?」
すると2人の刑事はまたも意味ありげな視線を交わし、俺に向き直る。
「吉山さんとトラブルになったと思われるこちらの男性ですが・・・事件現場で死亡が確認されました。」
は?死んだ・・・?
「え・・・自殺か何か・・・?心中・・・とかってことですか・・・?」
頭が痛い。のどがひりつく。
「いえ・・・おそらく何者かに襲われ、殺害された可能性が高いかと。」