始まり
「続いてのニュースです。今朝未明、都内で十数名が巻き込まれる通り魔事件が発生した模様です。事件が起きたのは東京都世田谷区の繁華街、目撃者によりますと男がいきなり刃物を振りかざしーーー」
「あっち〜〜〜・・・」
やばい。死ぬ。なんで8月のど真ん中なんかにクーラーぶっ壊れてんだよ。バカじゃねぇの。
「アイスかなんか・・・うわ、何もないじゃん。水すらないってどうなってんだよ・・・あぁもう・・・」
(外出たくないなぁ・・・いやでも水もないんじゃなぁ・・・このままだと半日でミイラになっちまうーーー)
仕方なくシャツを羽織る。この暑さの中外出するのなんか嫌だが、ミイラになるのはごめんだ。
「ーーー専門家によりますと、1900年代後半の凶悪犯罪者の還り人である可能性が高いとのことです。なお、犯人は現在も逃走を続けておりーーー」
外に出るとセミがうるさいくらい存在を主張していて非常に鬱陶しい。
(さっさと水買って帰ろう)
子どもたちが虫取り網片手に走り回る様子を横目に見ながら咲人は最寄りのスーパーへ向かう。
この暑さだと言うのに人でごった返している通りを見て、今が世間で言う夏休みであることを認識する。
(夏休みかぁ・・・いいなぁお子様は。って、俺も毎日夏休みみたいなもんか・・・)
自分の思考に呆れ笑いをしながら、子供達を横目に歩く。
つい先月、3年間勤めた会社をクビになった咲人は、次の勤め先を探すでもなく無気力に過ごしていた。
「何が勤務態度に著しい問題があり〜だよ・・・毎日毎日何かにつけて飲み会だの宴会だの連れまわしやがって・・・そりゃ仕事にも影響あるに決まってるだろが・・・」
誰に言うでもなく独りごちながらうだるような暑さの街を歩く。
そろそろスーパーが見える通りまで差し掛かろうかという頃だった。
なんだか妙に騒がしい。ここら辺はいつも活気に満ちてはいるのだが今日は何だか異様な雰囲気の騒々しさが立ち込めていた。
(なんだ?有名人でも来てるのか?)
野次馬根性が芽生えかけるもこの暑さに一瞬で打ちのめされる。
「やめやめ。近道しよ。」
人混みを避け適当な裏道に入る。
少し裏道を進むと表の騒々しさが嘘のように静まり返る。歩いているのは咲人と前を歩いている浮浪者の2人くらいだ。
(ちょっと横失礼しますよーっと)
フラフラ歩いていた浮浪者の横を追い抜たその時ーーー
咲人の胸からナイフが飛び出していた。
(・・・・・は?)
(え、は・・・これ・・ナイフ・・・?あ、熱っ!?えっ、痛ってぇ!?)
「あぁ・・・あは・・・血・・・肉・・・」
(ちょっと待て・・・ふざけんな・・・誰・・・か・・・)
個人的に作中で作者本人の性格とか考えを主張してきたり透けて見えたりする作品が苦手なのでそうならないように頑張る