知ったかな姉と女神さま アリス・ブレンジャーSide(3)
2人の対決は続いていた。
「あのね、何度も何度も私は未来に行ったのよ。何度行ったのか分からないくらいよ。事故のことを私が予見できないとでも貴女は思っているのかしら?予見して、未来では私が女王になる戴冠式を何度も何度も経験したのよ。あなた、一度も未来に行ったことも過去に戻ったことがないくせに、罠にはめられようとしているのがわからないのかしら?」
姉は呆然として、穴が開くほど美しい皇太子妃を見つめた。
――お姉様ったら実に間抜けな顔をしているわ……。
「魔力に打ち勝つのは『魔力』じゃない。フローラ嬢のような人が悪の魔力に勝てるのよ」
「ガトバンの娘にはあなたと違って魔力のかけらもないわ。『魔力』を買って供給を受けているのよ!」
姉はムッとして反論した。
――あぁ、お姉様ったら氷の貴公子の新恋人が気に入らないのねぇ……実に分かりやすいわ。
「だから何?あなたを追い詰めたのは、魔力を持たないフローラ嬢よ?とっくに本物の魔力がどこにあるのかバレているわよ。バカねぇ……知力が結局勝つの」
私はドキッとした。私は本物の魔力のありかまではまだ謎が解けていなかったから。
――さすがフローラ嬢だわ。謎が解けたのね!
「何度未来に行っても、私がエイトレンスの王座につくの。そこにあなたはいなかったわよ。あなたが死んで?そこにいないのはぜっんぜん私は気にならないわ。貴女って男を見る目がないから自業自得じゃない?でも、1つだけ絶対に気に入らないことがあるのよ。私の元婚約者が陰謀で死ぬのは気分が悪いのよ。623人もの人が死ぬのを分かっていて、私が止めないのはおかしいでしょう!?そんなことを思いつきもしないでしょうね。貴女は自信過剰過ぎて、誰を相手にしているのかまるで分かってないから」
厳しい声でザックリードハルトの皇太子妃は姉に詰め寄った。
「ほら、今日の新聞を見たかしら?元婚約者にもやっと可愛いい恋人ができたわ……素敵なことじゃない?貴女、これ以上は私の元婚約者の邪魔をしないで。彼を殺そうとしないで。私が気分が悪くなるようなことをしないでよ!貴女がしでかす事には、人として気分が悪くなることばかりよ」
美しいワイン色の髪が風になびいた。真っ直ぐに立つディアーナ皇太子妃は燃えるような髪と煌めく瞳から魔力を放出した。
姉は立ち尽くすしかないようだ。
――私もアルベルト王太子が陰謀に巻き込まれてひっそりと死ぬなんて嫌だな……。
――でも、どうやって亡くなるのかしら?632人もの人が死ぬってなんなのかしら?
私が知らない事がまだあるようだ。
ザックリードハルトの皇太子妃になった「女神」様の追求は続いていた。彼女は容赦しない。おそらく、アルベルト王太子の浮気が発覚してエイトレンスを泣く泣く飛び出して行ってから、初めて姉とブランドン公爵令嬢は相対したことになる。
――あれ以来の初めてのタイマンかぁ……どのみちお姉様に勝ち目はないわ。元親友として騙されて溜まりに溜まった怒りがあるでしょうから!
「貴女クリスと寝るだけが目的なんでしょう?クリスは貴女が目的を達するまでは寝てくれないのでしょう?何せ彼はソフィアというメイドに入れ込んでいたからね。貴女たち、本当に吐き気がするほどおぞましいわ。王座をなんだと思っているの!資格のないものが不正に入手できるような代物じゃないわ」
私は手元の魔力に似た偽物を作る方法について書かれたものを見た。
――あれ?発火性のある鉱物がある……。
オズボーン公爵家の鉱山開発は、悪い噂しかいなかった。
――有毒ガスが発生して、開発がいっこうに進まず……見つけたものがこの鉱物なの?
「しばらくの間、貴女がクリスを牢から出せないようにするのが私の精一杯できることよ。歴史を直接変えられないの。でも本人の選択肢を変えることはできる……だから、ジャック!?そこにいるのでしょう?」
「女神」様は私たちが隠れて見ている馬車乗り場を振り向いた。
「お久しぶりです!ディアーナ様!」
ジャックは実に嬉しそうだ。キビキビした様子で走って車道を渡り、「女神」様に駆け寄った。
「分かっているわね?ジャック、貴方のやるべきことは、フローラ嬢に合流してそこにいる優秀な私の後輩であるアリス嬢の知力とフローラ嬢の知力で事態を解決することよ」
「アリス?久しぶりね!貴女はもう気づいた?愚かなエミリーが気づいていないことを貴女なら気づけるはずよ」
急に私に振られて、私はドキマギしたが、事態の深刻さが分かった。
「オズボーン公爵所領の鉱物が問題ですね?」
私の質問に笑顔で「女神」さまはうなずいた。
「解決できたらブレンジャー子爵家はアリスが立ち直せるわ。「天才」策士の貴女なら、見破ることができるかもしれないわ。急いでちょうだい!」
私とジャックは力強くうなずき、馬車に飛び乗った。
「どういうことだ?」
ジャックが馬車の中で私が持ってきた研究記録を読み始めた。
「これが問題よ」
私がさし示した材料の鉱物にジャックは眉を顰めた。
夕暮れの時間が間も無く終わりに近づき、夜になるところだった。
――今晩が山だわ……愚かなお姉様のせいでブレンジャー子爵家は完全に破滅寸前だわ。この私が絶対にそんなことはさせないわ!
――「天才」策士とはどういうものか、クズのクリスにもお姉様にも分からせてやるわ。見破ったと思うけれど、間に合うか分からない!




