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嫉妬したの?(2)

私はアルベルト王太子に手を引かれて馬車に乗った。シャーロットは結局、ジャックと一緒に別の馬車に乗り込む様子が見えた。


――惨めだ……。

――私はアルベルト様のそばにいれるほど、力もないし、心も強くない……。

 

――そんなことを気にして、今一番集中しないといけないことに集中できないなんて……。


「しまったな……もっと早く気づくべきことだった。まずいな……」


青ざめたアルベルト王太子は小さくうめくと、ふと私の顔を見つめて固まった。


「どうしたの?あ……ガトバン伯爵夫人の推薦で、資格のない館長が職位を得たことが気になっているの……?フローラのせいじゃないよ。大丈夫」


アルベルト王太子は慌てて慰めようとしてくれた。


「あの……そのハンカチはずっと持っていらしたのですか……?」

「ハンカチ……」


「……ヴァランシエンヌ・レースのハンカチのことです……」


私は切なくて涙がこぼれた。

――みっともないわ……泣くなんてどうかしている……!


氷の貴公子は顔をみるみる上気させた。


「これ……ごめん……母上に渡すように言われていたんだけど、その……さっき指輪を渡したから……忘れていて……ごめん、これは今朝、指輪商を王宮に呼んだ時に、父上と母上もその……一緒に指輪を見てくれて……ほら……俺にとっては一世一代の勝負だから……あっ!男にとってはその……本気の恋は……その……もしも、君が嫌がって泣いたら、このハンカチをフローラにあげて慰めなさいと母上が渡してくれていたのを……その……君が受け取ってくれて、俺は舞い上がってしまって……本当にごめん……渡すのを忘れていたんだ……ごめん」


私はあまりのことに泣き出した。


――嬉しい……。


泣きながら、私はそのハンカチを受け取り、そのまま氷の貴公子に飛びついて自分から口づけをした。


馬車に揺れながら、アルベルト王太子は私をしっかりと抱きしめて、口づけを返してくれた。


温かい唇が私の唇に重なって熱烈なキスに変わった。初めての経験で私は頭がぼーっとしてきた。体がなんとも表現し難い熱さを感じてとろけてしまうようだ。



馬車は急いでエイトレンスの首都テールの半分の集配をコントロールするセントラル中規模魔術博物館に向かっていた。


「どうしてだか分からないけれど、フローラからキスをしてくれて、信じられないくらいに嬉しい」


氷の貴公子のブルーの瞳は期待に輝き、私の顔を嬉しそうに見つめた。


私は体が蕩けるようなキスで体中の力が抜けたようになっていたが、氷の貴公子の心臓がドキドキと早鐘のように打っているのがわかり、さらに赤面した。

 

「君が好きだ……フローラ」

「私もです、アルベルト様」


私は事態が急転したのを自覚していたが、初めての感覚に翻弄されていた。


キスで体がこれほど熱くなるなんて、知らなかった。


「あっ!もしかして嫉妬したの……っ?」


アルベルト王太子がハッとした顔で私を見つめた。


次の瞬間、ぎゅっとさらに抱きしめられた。

「嬉しい……」


耳元で氷の貴公子が囁き、私は大人の色香と可愛い行動に、どうしたら良いのかわからないほど心を奪われてしまった。



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