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生き残ったのは誰?(3)

氷の貴公子は胸を押さえて赤面し、ブルーの瞳を真剣に見開いて私を見つめていて、なんだかとても苦しそうだった。彼の煌めく瞳の美しさに私の息も止まりそうだった。


私の体が熱い。


――今、私のことが好きと言いました……?

――ディアーナより私が好きだ、とあなたは言ったのですか……?

 

――ブランドン公爵令嬢より私が好き……?アルベルト様が? 


――嘘よ。きっと聞き間違えたのよ。

聞き間違いかと思った私はつぶやいた。


「もう一度お願いできますか?」

 

氷の貴公子は彫刻のような美貌を誇る顔を真っ赤に上気させた。私の顔を見つめる彼は人間らしさに溢れていて、クラクラするような色香を漂わせていた。

彼の胸に飛び込みたい衝動に駆られて、私はため息をついた。


――お願い……聞き間違いかもしれないから……もう一度言ってちょうだい……。


馬車は静かに蹄の音を響かせて進んで行っていた。

 

私の隣にアルベルト王太子は座っていたが、彼の震える手が私が手に持っている紙をそっと取り、前の座席に置いた。


そして泣きそうな顔で天を仰ぐと、私の目の前にひざまずいた。ドレスの足元に氷の貴公子がひざまずいている。


――えっ?



「君のことがディアーナよりも好きなんだ……その……信じてもらえないかもしれないが……君とずっと一緒にいたい。君をずっと守りたいんだ」


私の心臓は破裂しそうだ。胸の高鳴りが聞こえてしまいそうだ。


――私を騙す気ですか?本気なの……?


アルベルト王太子は胸元から繊細な彫刻が施された箱を取り出した。


「えっ!?」


それが一流の宝石商の指輪箱だと私は知っていた。アルベルト王太子は指輪箱を開けて私に見せた。ブルーサファイアとダイヤモンドのクロスオーバーリングが中に見えた。カシミール産のブルーサファイアで、非常に美しい宝石だと分かる。


――嘘よ。嘘よ。これは本気の時の宝石だわ……。


私は息をのんだ。

何かよくわからないことが起きているという感覚で、涙が溢れてきた。嬉しいのか悲しいのか、驚きのあまりに自分の感情がよく分からない。


「結婚の誓約の証と、恋人である証の指輪をフローラに贈りたい」


そう言いながら、真っ赤な顔をしたアルベルト王太子の手は小刻みに震えていた。


「結婚……の誓約の証ですか?」


――とんでもない話になってきた……。



「君が俺を信用できないのは分かる。だが、俺は真剣に、生涯君のことを裏切らずに大切にしたいと思っている。フローラ、こんな気持ちは初めてなんだ。君になら、包み隠さずなんでも話せると思うんだ。君に見つめられるとどうにかなってしまいそうなんだ」


アルベルト王太子のブルーの瞳はキラキラしていて、切迫したような感情をはらんでいるように見えた。口元は少し震えている。


馬車の中の空間は、時が止まっているかのように特別な熱を帯びた空間になった。お互いの息遣いがよく聞こえて、氷の貴公子が真剣に私に集中してくれているのが分かった。


「ダメな俺だけど、君には誠実でいたい。どうしても君と一緒にいたいんだ。左手を出してくれる……?」


泣きそうな氷の貴公子のブルーの瞳から、私は目を離せなくなった。


――アルベルト様は本気なのね……?

――どうしよう……。


身体中が熱くてほてって、どう振舞っていいのか分からなかった。胸が痛い程にアルベルト王太子に惹かれている自分に気づいて苦しかったのに、アルベルト王太子は私を好きだとおっしゃってくれた。


私はおずおずと左手をアルベルト王太子に差し出した。私の手もひどく震えていた。


氷の貴公子は頬を上気させて、信じられないといった喜びに溢れる表情になった。私の左手は彼の温かい手に委ねられた。


――あっ!


アルベルト王太子に手を握られただけで体がぴくりとし、私は体を震わせた。


氷の貴公子はゆっくりとそのブルーサファイアとダイヤモンドのクロスオーバーリングを私の左手にはめた。


「君が車椅子になっても、やっぱり君を愛していたと思う。俺のそばにいてくれて、本当にありがとう」


ひざまずいていた氷の貴公子の顔がそっと私の顔に近づいてきて、私の唇にふわりと口づけをした。温かくて柔らかい唇が、私の唇に重なり、私は熱く蕩けるような気持ちを生まれて初めて知った。体がますます熱くなり、時が止まったかのようだった。


――あんっ……。

――なっんで……こうなっているの……?

 

それはあまりに自然な口づけで、私は氷の貴公子の大人の魅力にすっかり絡め取られ、翻弄された。アルベルト王太子の透き通るようなブルーの瞳が私の目をじっと見つめて、熱烈な思いを帯びた言葉が彼の唇から私に囁かれた。


「フローラ、俺の思いを……君は受け取ってくれるの……?」

「はい」


私は半泣きで震えながらうなずいた。

アルベルト王太子のさらに優しい口づけが、私の唇を奪った。ぎゅっと抱きしめられた。くらっとくるような感覚に陥り、私は温かい彼の胸の中でときめきに溢れて胸がいっぱいで、おかしくなりそうなほど嬉しかった。



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