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彼女の隣で

作者: 稲神蘭

第一章 出会い


春の風が柔らかく校庭を吹き抜ける4月、新学期が始まったばかりの高校2年生、川村翔太は、新しいクラスの教室に一歩踏み入れた瞬間、不安と期待が入り混じった気持ちを抱えていた。翔太は勉強が得意でもなく、特別目立つ存在でもなかったが、友達とのおしゃべりや部活に励む、普通の高校生だった。


クラス替えで友達と別れた翔太は、周囲に知っている顔が少ないことに少し緊張していた。だが、その緊張を一瞬で吹き飛ばす出来事が起こる。


「おはよう、川村くんだよね?今年も同じクラスだね!」


そう話しかけてきたのは、クラスの中で誰もが認める人気者、中谷春香だった。彼女は明るく活発で、男女問わず多くの友人がいた。翔太とは去年も同じクラスだったが、特に深く話したことはなく、彼女が話しかけてくるとは思ってもみなかった。


「お、おはよう、中谷さん…。今年もよろしく。」


不意に話しかけられた翔太は少し照れながら返事をした。春香はにっこりと笑って、翔太の前の席に座った。


「ねぇ、今年も楽しくなるといいね。クラス行事とか、みんなで盛り上げよう!」


彼女の明るさに、翔太の緊張は次第に和らいでいった。そして、その日を境に、彼と春香の関係は少しずつ変わり始めることになる。



第二章 少しずつ近づく距離


春香と翔太は、クラスの委員会活動を通じて一緒に過ごす時間が増えた。二人はお互いに補い合う性格で、翔太は冷静で物事をじっくり考えるタイプ、春香は行動力があり、思ったことをすぐに実行に移すタイプだった。


ある日、クラスの文化祭準備で遅くまで学校に残っていた二人。教室にはもう誰もおらず、夕焼けが窓から差し込んでいた。


「川村くんって、いつも静かだけど、いろいろ考えてるよね。私なんて、つい勢いで行動しちゃうから、あなたみたいに冷静になれたらなって思うことがあるんだ。」


春香がふとそんなことを言いながら、窓の外を眺めた。翔太は驚いた。いつも元気で完璧に見える春香にも、そんな悩みがあることを初めて知ったのだ。


「いや、春香はすごいよ。俺にはないところを持ってる。だから、こうやって一緒にいると、なんかバランスが取れてる気がする。」


自分でも驚くほど自然にその言葉が口をついて出た。春香は少し驚いたような顔をしたが、すぐに微笑んだ。


「そっか、ありがとう。なんだか安心するな、川村くんがそう言ってくれると。」


それから二人は、お互いの距離を少しずつ縮めていった。放課後、委員会の仕事がない日でも、帰り道が一緒になることが増え、自然と会話が続くようになった。翔太は次第に春香に特別な感情を抱くようになり、その気持ちが日に日に強くなっていくのを感じていた。



第三章 初めての葛藤


しかし、順風満帆な日々が続くわけではなかった。文化祭の準備が進む中で、春香に対して翔太だけでなく、クラスの他の男子も少しずつ特別な感情を抱いていることに気づく。特に、スポーツ万能で人気のある山口大輔が、春香に積極的にアプローチをかけていた。


翔太は、春香が山口と一緒に話しているのを目にするたびに、胸の奥に小さな嫉妬心が芽生えるのを感じていた。自分とは違い、明るく社交的で、何でもそつなくこなす山口の存在が、次第に翔太を不安にさせた。


「俺なんかが春香と一緒にいても、どうせ釣り合わないんじゃないか…」


そんな思いが翔太の心の中に渦巻くようになった。


ある日の放課後、山口と春香が二人で文化祭の打ち合わせをしている姿を遠くから見つめる翔太。胸が苦しくなるその瞬間、彼は自分の気持ちに正直になる決心をした。


「今のままじゃダメだ。ちゃんと春香に、自分の気持ちを伝えよう。」



第四章 告白と決断


文化祭が無事に終わった翌日、翔太は放課後の屋上に春香を呼び出した。秋の風が心地よく吹く中、翔太は緊張で手が震えるのを感じていた。


「どうしたの?急にこんなところに呼び出して…」


春香が不思議そうに問いかけるが、翔太は一呼吸おいて、真剣な表情で彼女を見つめた。


「中谷、俺、ずっと言いたかったことがあるんだ。」


春香が目を大きくして翔太を見つめる。翔太は息を整え、覚悟を決めて口を開いた。


「俺、中谷のことが好きなんだ。ずっと前から、君といると心が落ち着いて、でも同時にドキドキして…。こんな気持ちになったのは初めてで、自分でも戸惑ってた。でも、もう嘘をつきたくないんだ。」


翔太の告白に、春香は驚きと戸惑いの表情を浮かべた。翔太の気持ちに応えるのか、それとも…。



第五章新たな関係の始まり


翔太の告白に対し、春香はしばらく沈黙していた。屋上を吹き抜ける風の音だけが二人の間に流れる。


「ありがとう、翔太くん。」


そう言った春香の声は、少し震えていた。


「実は、私もずっと君のこと、気になってた。でも、自分でもどうしたらいいのか分からなくて…。山口くんのことも、友達としては好きだけど、翔太くんといるときの安心感は、誰とも違うんだよね。」


その言葉を聞いた瞬間、翔太は胸の中にあった不安が一気に消え去った。


「これからも、隣にいてくれる?」


春香は恥ずかしそうに笑いながらそう言い、翔太にそっと手を差し出した。翔太はその手をしっかりと握りしめ、彼女の隣で歩き続けることを誓った。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

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