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asmi『恋』に関する考察

asmi『恋』に関する考察

作者: 非成城速記部

「なあ、そろそろいいだろう?」

 この言葉の意味がわからないほど、私も子供ではない。

 というか、この言葉を言わせないように、この言葉を聞かずに済むように、はぐらかしてきたのだから、むしろこの言葉をいつ言われるか、いつ言われるかと、そのことばかり考えていた。

 そろそろいい、ってどういう意味だ。我慢してきたということか。それを私が拒んできたということか。…拒んできたけど。

 それがなければ、私といる意味などないということなのか。こんな私の考え方が、堅過ぎるのはわかっている。そんなにとんでもないことじゃない、別に恐ろしいことじゃない、わかってはいても、一度そうなったら、もう、それがなかったころには戻れない。

「愛してるよ」

 この言葉を聞くのは、いつも、それの最中か、それの直前だ。愛という言葉は、それのための免罪符なのか。いや、別にそれが罪だと思っているわけじゃない。でも、愛しているのだから、それをするのは当然だ、という論法を押しつけられている気がする。

 本当だろうか。それがなければ、愛していないのだろうか。愛していたら、それがなければならないのだろうか。だとしたら、愛なんて要らない。私は愛なんて持っていない。

 恋とは、請うことだ。必要なものを欲しがることだ。その人の存在が、自分にとって必要で、その人の存在を欲しがることが恋だ。自分の存在が、その人にとって必要で、その人に欲しがってもらえたら一番いい。しかし、そんなありがたいことにはならないかもしれない。でも、それでいい。その人がそこにいることを私が欲しているだけで、私は私でいられるのだ。私がただ、その人を欲している、こんな恋が、純度が高い恋だ。

 それをするために私が必要なのだとしたら、それは、私の存在が必要とされているのではない。私は私として必要とされているのではない。

「いいよ、今度ね」

 私は答えた。こんなに喜んでくれるなら、もっと早くこたえてあげてもよかったかもしれない。でも、それと高純度の恋は両立しないのだ。

 地下鉄のホームで終電を待つ。この駅でお互い反対方向の電車に乗って、次に会うときには、それがうやむやになっていてくれたら…。でも、それは無理だろう。私も、何事もなかったようには振る舞えない。

 私の電車の方が少し早く来た。少し風が吹いた。

「じゃあね、バイバイ」

 私は走った。逃げるように。たった五歩だけど。

 私の後ろで扉が閉まったとき、抱きしめられた。なるほど。もう逃げられないバックハグ。

 月明かりに照らされて、窓の格子が、ベッドに影を落とす。もうすぐ私の恋は終わる。このまま死んでしまえれば、何もなかったことにできるのに。私の大切な恋は、高純度の恋のままでいられるのに。永遠の恋になるのに。ずっとっずっと好きなままでいられるのに。

 私からキスしてあげる。私を見ていいよ。きょうだけのとびきりの私を。一番輝いている私を。




ゆっくり溶けてく私からあなたへの想い

・・・・・・・私からあなたへの思いは届かないの

言葉は何より危うい鋭く純粋な氷みたいだ

・・・・・・・・・・言葉にすると互いに傷つくの

最終電車の逃し方は覚えてしまっている

・・・・あなたを帰らせない方法は知っているけど

でもこんな夜を前にしては役に立たないな

・・・今夜でお別れするつもり、その手は使えない


涼しい風が吹いて私の迎えが先に来る

・・・・・・・・・ここは地下鉄の島式のホーム上

じゃあねバイバイのリズムで駆け出す

足音がドアをくぐった

・・・・・・・あなたが私と同じ電車に乗ってきた


愛なんて持っていない あるのは高純度の恋

・・・・・・・・あなたと寝たいとは思わないけど

心が悲鳴を上げてもそれすら笑っていたい

・・・・・・・・・・・・・気丈に笑って別れたい

愛なしでどこまで行けるか試したい恋で

・・・・・・・・・体を許さないつもりだったけど

今が一番若いの私いつまでも光っていたい

・・・・・・・・・別れる記念?私、きれいでしょ


たどり着いた先や未来がね ここにはない

・・・・・・・・・・・別れのときが近づいてくる

好きという気持ちだけでは

長く続かないことを知っているからこそ

・・・・・・・・・・・・・・・本当にお別れだね

毒を帯びた魔物 下がらないでいて体温

・・・・・・・・・心の傷になりそう、

         でも気持ちが冷めてしまったの

もしも今夜月がきれいなら二人共犯者になろう

・・・・・・・・・・どっちが誘ったとかじゃなく


横顔にキスをした

いつもずるいのは私でごめんね

・・・・・・・・・・私がスイッチを入れてあげる

刺さって抜けないまま

痛いくらいがいいでしょう

・・・・・・・・・・・・・どうせならこのまま…

好きですあなたが

・・・・・・・・・・・・・・・もう別れるのにね


牢屋の中で二人は永遠を夢に見て愛に向かった

・・・・月明かりが窓の格子の影をベッドに落とす

息はできているんだろうかできないでいてくれ

・・・・・・・・・・・このまま死んでしまえたら

ずっとずっと恋をしてる

・・・・・・・・・・この恋が永遠になったのにね



※本考察では、asmi作詞の『恋』の歌詞の意味について、独自の説を唱えるため、著作権法第三十二条に規定する研究の範囲内において合法的に引用している。


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